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悪役令嬢は魔王と婚約して世界を救います!  作者: 水神 水雲
第9章 聖光誕祭(10歳)
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79-1 幻影の手を取る

タイトルを現在のものに変更致しました。


 只でさえ、アルヴィンから色んな信じがたい話を聞かされて、初代聖女の生まれ変わりだとか、過去と現在と未来がどうとか、難しい話で頭がパンク寸前だったのに!

 ロストエデンマイハート(超かっこいい)と名乗る四人組の怪盗達に花人形を盗まれてしまった!! あれはゲーム内でもメティスがこの街を破壊してしまうトリガーでもあるから、絶対に奪い返して一生メティスの目の届かない所に隠さなくちゃいけない!


 とかなんとか心の中で状況を整理しつつ、建物の屋根の上を走って飛び回り逃げて行くロストエデンマイハート達を追い掛ける!


「待ちなさーーい!!」

「待ちませ~~ん!」


 前を行くアリスの馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる!

 花人形は帽子屋と呼ばれた大人の人が魔法で浮かせながら運んでいるようだ。なんとかあの人を攻撃して動きを止められれば!


「よし! 水魔法で足を狙えば!」

「手伝おうか?」

「びゃっ?!」


 一人で追って来ていた筈なのに、突然横からアルヴィンが私の顔を覗きこんできたものだから心底驚いた。


「な、なんでここにいるの?!」

「ウィズが追い掛けていったから、危ないと思って追ってきたんだ」


 キョトン顔で言われても全然ありがたくない、正直いまの私の中ではあの怪盗達よりもアルヴィンの方が危険人物だ。


「私一人でいいの! ついて来ないで!」


 アルヴィンに追いつかれまいとさっきよりも速い速度で走り、屋根の上を飛び越えて怪盗達を追い掛ける!


「一人は危ないだろ」

「付いてこないでってばーーっ!!」


 全力で走っているのに涼しい顔をしてあとを追ってくる! 足には自身があるのに、屈辱である!


「相手は四人組だし、盗みを働くような奴等だろ? 危険だよ」

「アルヴィンの方が危険だよ! 私はアルヴィンと仲良くするつもりはないんだよ!!」

「え? なんで?」


 くっ! 声を聞いただけで凄く悲しい顔をしている事が分かる! 絶対振り向いちゃ駄目だ!


「魔王様やアイビーを消滅させてやるって言ってたじゃない! それなら貴方は私にとって敵だよ!」

「大丈夫、俺は君の味方だよ」

「私の味方でも魔王様の敵は私にとって敵なの!」

「魔王は消滅させるけど、俺は君の味方だよ!」

「だからーーっ!!」


 ちゃんと話を聞いていますかーーっ?! それにアルヴィンはこう言っているのは初代聖女の生まれ変わりが私かもしれないと思っているせいでしょう! 私は魔王様なメティスの味方であり、倒しちゃう聖女な訳ないんだから人違いだ! ルティシアちゃんがきっと初代聖女の生まれ変わりだ!


「そうだよ! 私なんかを追ってこないでルティシアちゃんの所にいて守ってあげてよ! 一人は危ないでしょう?!」

「ルティシアの所には精霊を置いてきたから平気だよ」


 精霊を置いてきた? あれかな、自分と契約している精霊をボディーガード代わりに置いてきたってこと? アルヴィンは風魔法を使っているから、風の精霊かな?

 それに、追っているのは花人形を盗まれたせいもあるのかな? アルヴィン大事そうにしていたもんね。


「花人形を取り戻したいんなら私に構わなくていいから個別行動して!」

「あれはもういいんだ」

「へ?」


 アルヴィンは私の走る速度に合わせて走り、にっこり笑う。


「言ったろ? あれは抜け殻だって、今の僕には初代聖女の生まれ変わりであろう君達がいるからもういいんだ!」


 どうやらアルヴィンはもうあの花人形への執着はないらしい。いや、それなら早くルティシアちゃんの所へ戻ってほしい、私は違うから。


「私は貴方とは仲良く出来ないからお帰り下さい!」

「足手まといにはならないよ」

「そうじゃないの! しつこい人は嫌われるよ!」

「え……」


 私の後ろを追って来ていたアルヴィンの足がピタリと止まった。

 無視をして走り去ってしまおうと思ったけど、つられるように私も足を止めてしまった。何故か通り過ぎることが出来なかった……。


「どうしよう」

「ど、どうしようって何?」

「君に嫌われたら……」

「いやあのだから私は人違いだから別に嫌われても貴方は大丈夫……」

「謝るから、嫌わないで……」

「泣かないでーーーーっっ!!」


 綺麗な金色の瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちる。

 嫌われるよと言っただけで何故そんな泣いちゃうの?! 私達は相容れない存在だというのに、罪悪感が凄いよ!!


「ごめんね!! 私も大人げなく言いすぎたね!!」

「俺のこと、嫌いじゃない?」

「魔王様に危害を加えなければ嫌わないよ!」

「じゃあ嫌いじゃないか……」

「なんで魔王様を消滅させる事を諦めてくれないの?!」


 ぶんぶんと首を振って仕切り直す!


「とにかく、今はそんな話をしてる場合じゃなくて! ああ! 怪盗達がもうあんなに小さく!」


 足を止めていたせいで、随分先へ走り去ってしまった! このままじゃ見失ってしまう!


「じゃあ、ウィズの役に立つよ」

「なに?」

「追いつけば良いんだろ?」


 アルヴィンは突然私を抱き上げると、足下に風の魔法を出現させ、それを操って目にも止まらぬ速さで駆けだした!


「ひゃあああああっっ?!」

「振り落とされないように捕まってて!」

「わ、わわ私一人でも追い掛けられるから降ろしてーーっ!!」


 風が駆け抜けるが如く、アルヴィンは怪盗達との距離を一気に詰めて、その距離は真後ろまで迫った。


「アリス! 奴等追ってきたわよ」

「わーってるよ、帽子屋はそのまま魔法を維持して花人形を奪われないようにしてくれ、チェシャは帽子屋が攻撃を受けないように守っとけ」


 追いついた私とアルヴィンの前に、アリスとハートの女王と名乗る少年少女が立ちはだかる。


「追ってきたのがお前で良かったよ」


 アリスは手のひらを見せてから私を指さした。


「たくさん、あっそぼうぜ」


 足下でパキッと、何かが割れる音が聞こえた。

 なんの音かと下を見れば、屋根の上に沢山の種が落ちている事に気がついた。

 もしかして、アリスは走って逃げている時に種を零しながら逃げていた?


「ショータ~イム☆」


 アリスが魔力を開放すると、足下の種が一気に発芽し木に育ち、その枝が私とアルヴィン目掛けて襲い掛かってきた!


「何あれぇっ?!」

「魔力はたいした事なさそうなんだけどな」


 アルヴィンは私を抱きかかえたまま風を操り襲い掛かる木の枝を避ける。


「これだけの種をばらまかれたら少し面倒だ!」

「もしかして相手は木属性の魔力持ちなの?!」


 そして別の気配に気がつく。

 襲い来る木の枝達に紛れて、ハートの女王が私達に襲い掛かってきた事に。


「危ない!」


 アルヴィンの腕から飛び降り、瞬時に大剣を出現させて、斬りかかってきたハートの女王の攻撃を受け止めた。


「アハッ、よく私の攻撃に気がついたねぇ、偉い偉いっ♡」


 暗闇で桃色の髪がフワリと飛ぶ。ハートの女王は間近で見るとやはり幼く、私と同じ歳位の少女のようだった。

 不思議な点と言えば、彼女の右手が刃物の様に尖り、それで私を斬り捨てようと襲いかかって来た事ぐらいだ。


「体がっ、刃物にっ?!」

「珍しい魔法でしょ? 金属性持ちは少ないもんねぇ、そんなことよりぃ、私達の仕事を邪魔するなんてぇ」


 ハートの女王が私を蹴り上げようとする素振りを見せたことに気がつき、受け止めた大剣で腕を押し返し、慌てて剣を突き立ててガードをする。

 瞬間、鋼のように固くなった足で蹴り上げられ、なんとかそれを防げた。

 しかし、ビリビリと振動が伝わる、それぐらいの破壊力で蹴り上げてきたのだ。


「めっ、だぞぉ」

「くっ! 最初に花人形を盗んだのは貴方達じゃない!」


 大剣を引き抜いて斬りかかると、ハートの女王はバク転して避け、追撃しようとしたけど、木の枝が再び襲い掛かり私の邪魔をする。


「アリスの望みなんだもーんっ、だから私達がもらっちゃうのぉ!」


 ハートの女王はアリスの腕に抱きついて甘えている。


「そこの兄さんも別にいらないって言ってるんだから、大人しく俺達を見送ってくれんかね?」

「だ、駄目に決まってるでしょ!」


 かく言う私も花人形を盗もうとしていた身であるから、あまり正論な事は言えない。


「その花人形は怪盗マッチョメンが貰い受けるんだからね!」

「怪盗……」

「マッチョメンって?」


 ハートの女王とアリスにポカン顔をされたので、私だよ!! と自分を指さした。


「私が! 怪盗マッチョメンです!!」


 どうですか、かっこいいでしょう! と、どや顔をしてふんぞり返る!

 恐れ入ったかと思ったのに、少しの静寂の後でアリスは私を指さしてお腹を抱えで笑い出した。


「あっははははは!! かっ、怪盗マッチョメン!! あはははははっ!! ま、まっちょ、ぶほぁっ、まちょめ、おんなっ、まっちょのおんなでまっちょめんっっ、ひぃっひぃいっ!!」

「なんでそんなに笑うのーーっ!!」

「そーよそーよ! アリスのツボを押さないでよ! アリスを喜ばせるなんて許さないわよ貴女!!」

「そこ羨ましがるところなの?!」

「ウィズは魔力的にマッチョ無理だからそろそろ諦めような」

「アルヴィン?!」


 ここは一つ私は絶対マッチョになってやるんだと叫んでやろうかと思った、のに。ガクンと体勢が崩れた。

 足が、木のツタに絡め取られてしまっている。


「あははははっ、は……あれ? やべ」


 なにが「やべ」なのか、アリスに問いただす暇も与えられず、私の体はそのまま空高くぶん投げられてしまった。


「あーーっ?! 笑いすぎて制御出来んかった!」

「大丈夫! そんなアリスも可愛い!」

「んな訳あるか!! なにしてんすかちょっと!!」

「ウィズどこいくの?!」

「ウィズ!!」


 もう誰が何を喋っているのか聞き取れず、私はぴゅーんと飛ばされてから建物の上から路地裏へと落ちていく。


「きゃあああああっっ?!」


 受け身取れるかなぁ?! 大丈夫やる! 私はやれば出来る子! でも人の体って頭が重いから落ちる時頭からになるって本当なんだなーーっ?! 不意打ち盗られたら空中で体勢を変えるのむずかしっ。



「水よ! 彼の者を守れ!」



 聞き慣れた声が響き、私の体を水のクッション衝撃から守ってくれた、そして弾力あるそれにぽよんと体が跳ねて、誰かの腕の中に私の体は受け止められた。

 恐る恐る目を開けると、ここに絶対いない筈の人物がいて心底驚く。


「ウィズ?!」

「め……めてぃひゅ?」


 心底驚いた顔のメティスと目が合う。

 メティスは今宿のお部屋で寝ている筈だよね? なんでこんな所に……あれ? この状況まずくない?


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