43-2 脱出作戦
「グハハ……! おいたが過ぎたようだな小娘」
「く……っ、魔法で眠らせればっ」
「駄目だ、この人数を眠らせようとしたら魔力が枯渇して倒れてしまうよ」
「でもっ」
ぞろぞろと現れた傭兵達は子どもだと馬鹿にしたように笑いながら、私達の周囲を取り囲んだ。そして、私達の前にジョネスが近づいてくる。
「どうやらここまでのようだな、どれ、質だけは良いようだから物好きな常連の奴等の相手をさせてもいいな、可愛がってもらうといいグハハ!」
目に痛い程の煌びやかな宝石がついた指輪をはめた指が私にヌッと伸びてくる。
その気味の悪さにゾッと鳥肌がたち、逃げるか戦うかの選択を選びかねていた時だった。
私にその汚い手が触れる直前に、メティスがジョネスの手を鷲掴みにして、ボキンッと音をたててその指を握り潰してしまった。
「ふぎゃああああああっっ?!!?」
聞くに堪えない叫び声を上げながらジョネスは床に転がった。メティスに握り潰された指先は有り得ない方向に曲がってしまっている。
「め、メティス……?」
「触るな……」
バキンバキンッと金属が弾け飛ぶ音と共に、メティスの魔力を封じていた腕輪が二つ砕け散った。
メティスの瞳が赤く光り輝き、憤怒に満ちた目の瞳孔が開かれた。
「貴様のような人間風情が穢せる花だと思うな……」
残された魔法封じの三つの腕輪がカタカタと震えていて今にも破壊されそうだ。それが破壊されるという事は、魔王の力が解放されるという事だ。
「殺してやる」
「だ、駄目だよメティス?!」
憎悪に駆られたままに、人を殺したらそれは魔王復活のトリガーになってしまうんだよ!
メティスに抱きついて、なんとか暴走を納めようとした時……私達の目の前に大きな影が降り立った。
「え」
フード付の紫色の外套で全身を覆い隠して身を包み、顔は日本でいう黒子のようなものをつけていて見えない。どこが腕で体なのか判別が難しいのは、この人物の身長がとても高いから。
その人は、目にも止まらぬスピードで小刀を取りだし取り囲む傭兵達の体目掛けて次々と放った。
「ぐあっ?!」
「ぎゃあっ?!」
「テメェなにもんだ!!」
「ぶっ殺すぞ!!」
傭兵達が一斉にその人目掛けて飛びかかる。
「危ない!!」
その人は動揺する事も無く、瞬時にしゃがむと地面に手をついて魔法を唱えた。
「彼の者達を捕らえよ」
とても低くてノイズがかったような男の人の声。
瞬間、ドドンッと地面が揺れ動き、木のツタが床を突き破って生えてきて、傭兵達に襲いかかった。
「うぎゃあああああっ?!」
傭兵達の足や体に絡みついたツタは、その体を縛り付けて動きを封じた。
「あ、あの……?」
私の声に立ち上がり振り向いたその人はやっぱり顔はわざと隠していて見えないし、背丈は二メートルを優に超える程大きかった。
小刀を使っていた事といい、この人が鎖に囚われた私や子ども達を助けてくれたんじゃないだろうか?
「ありがとうございます!」
何者かは分からないけどお礼は言わねばと背筋を伸ばしてハッキリと口にすると。その人は手招きして私を呼んだ。
「?」
「あっ、ウィズ!」
メティスから近づいちゃ危険だという声が上がったけど、不思議と危機感を感じないその人に近づいてしまった。
頭に乗せられた手からじわわっと暖かい魔力が流れてくる。
「魔力を回復させた」
「へ」
「魔力の使い方が、下手です……無駄に多く使いすぎている、このままでは倒れる」
「そっかぁ」
やっぱりまだまだ修行が必要という事だね。私の魔力切れを心配して魔力を分けてくれたのだろう、優しい人だ。
「貴方のお名前は?」
「……え? なんですかそれ」
「はい?」
「あ、いや……その、チェシャと、言います」
チェシャさんね! 名前を聞かれたせいなのか、動揺をみせるチェシャさんにありがとうと手を差し出した。
「助けてくれてありがとうございます! でも、どうして助けてくれ……」
「貴様等まとめて殺してやるゥウウウ!!」
目を血走らせてジョネスが叫ぶ。翳して手の指輪が魔力を放った。
途端、縦に揺れ出す地面。
「え、あれ? 今度はなんの揺れ」
「危ないウィズ!!」
メティスが私に飛びかかってきて、二人一緒に地面に倒れ込んだ。
そして、さっきまで私が立っていた場所から地面が盛り上がり、巨大な土の壁が現れて、行く手を塞がれてしまった。
壁を挟んで向こう側にはさっきの人と子ども達がいる、私とメティスだけ分断されてしまった形になってしまった。
「大丈夫ですか!?」
土壁の穴から黒フードの人が声を掛けてくれた。
「私はメティスが助けてくれたから大丈夫です! メティスは?」
「僕も平気だよ、ジョネスとか言う奴が土の魔法を使ったようだね」
「それで土壁が……」
手で土壁をぺたぺたと触ってみたけど、とても固くて崩れそうにない。
「殺せ!! 生きて返すな!!」
土壁の隙間からジョネスが怒り任せに叫んでいる姿が見える。
先程ジョネスが出てきた扉からまた別の増援がわらわらとやって来た。一体何人いるというのだろうっ。
チェシャさんは子ども達を庇いながら増援の傭兵と戦うのに手一杯でこちらに構っていられる暇などない。
「ウィズ、僕達は別の扉から逃げよう、このままここに居ても袋の鼠にされてしまって逃げられなくなるよ」
「う、ん」
メティスの言うとおりだと頷いて、土壁の穴越しに大声で叫んだ。
「私達は向こうから逃げます! 助けてくれてありがとうございました! 子ども達の事をよろしくおねがいします!」
「待ちなさい! 貴方達だけでは危険っ」
チェシャさんの言葉を遮るように傭兵の人達が襲いかかり、チェシャさんはその攻撃を魔法でいなしたり、小刀を使ったりして応戦している。
見た感じ強そうだから、時間が掛かったとしても勝てそうだという感じはある。
「行こうウィズ、急いで」
「うん!」
メティスと手を繋いで走り出す。部屋を土壁で分断されたとなると、他の出入り口はこの組織のボスの人と、トゥルーペが出て行った扉だけだ。
私とメティスはその扉に駆け寄り、この忌まわしい部屋から飛び出した。
◇◇◇◇◇
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