エンドロールに名前は無い 以下ネタバレ注意:名も無いザコキャラに転生した俺は女勇者に求婚されているけれど世界を守るために今日も瓦礫の下で成功フラグを唱える
活動報告のコメント返信を確認し忘れる、とある方にドンドン返していた会話劇。
※つまるところ、ただの嫌がらせのために書いていた。
原稿が出てきたので、今になって投稿してみる。
俺はこの世界に、ザコキャラとして転生してきた。
前世の記憶を持っている十把一絡げの兵士その他。
名はオマエ。
いや、元々は名前だってキチンと設定されていたのかもしれない。周囲より退屈そうで、それが一際目立っているとき、「おい、そこのお前!」と呼ばれるのだ。一般兵なんだから名前なんて意味無い、もう忘れた。
ど が ぁ あ ん !!
ネタに詰まったラノベ書きが「あ!これいいかも」と思い付いたテンプレ外し、精々その程度の存在なんだろうと自己分析している。
ど ご ぉ お ん !!
現在、自軍の砦は大ピンチ。
近くに勇者パーティが駐留中なのは事前に確認済。
壁を崩して、自分の足を瓦礫に埋めたところです。
「急げ、退避だ!この砦、もう長くはもたないぞ!」
やれやれ、やっときたか。
こいつは兵士A。
兵士にしては細身な体格、朴訥とした顔立ち。
妹は村一番の別嬪さんだったのに十人並みだ。
俺達は同じ年に同じ村に産まれ、共に育った。
俺は苦悶の表情を浮かべつつ、左足を指差す。
「どの道、終わりだ。俺はここに独りで残る」
「お前、その足ッ!!」
「なぁに。 ……時間稼ぎぐらいしてみせる」
そうは言っても転生者なのだ。
俺は俺なりのやりかたで世界を幾度となく救った。
全ての状況を丸ごと引っ繰り返してしまう、魔法。
俺の唱える『 成 功 フ ラ グ 発 言 』によって!!
「お前、また?また、そっちの足を怪我したのか?」
「いいから!深い詮索はいいから! もう行って?」
「なんてオッチョコチョイだよ……」
兵士Aが立ち去ろうとしている。
こ れ は マ ズ イ な ?
「おおぉ――ぉい!!」
「ん?なんだ、ったく」
「なぁ、こっち! ……すぐに戻ってきて?」
「なんだ?行けと言ったり、戻れと言ったり」
「今の流れは失敗だったの。それとなくココに俺がいるって誰かに伝えておいて?できれば心配性な人だったらモアベターなんだけど」
「なんだそりゃ?」
「さっきのセリフだよ!俺達みたいなザコがああいうことを言う、お前はそこで、すまん! ……とか言ってさ、苦渋の決断をするだろ?そしたら俺が危機一髪ってタイミングで勇者様御一行が颯爽と現れる、そういう仕組みになってるんだよ」
「自分で自分をザコとか言うなよ」
「どっからどう見たってザコだろ」
「それに俺は幼馴染を見捨てる薄情者じゃないさ」
「嘘つけよ!今さっきサラッと立ち去っただろ!」
「お前と結婚したいって妹にも相談されてるんだ」
「 こ の 非 常 時 に な に 言 っ て ん の ?! 」
「ビックリさせようと思ってさ」
「そういう意味じゃなくって!」
「ん?これ以前にも」
「そう!それだよ!」
「もしや、アレか?」
「そうだ、俺が前世で蓄えた知識、運命改変をやっていたんだ」
「それならそうと言ってくれなくっちゃ。カッコつけて損した」
「事前に種明かしをしたら運命改変は起きない、教えただろ?」
どっ が ぁ あ ん !! ガラガラッ パラパラ パラ...
敵軍の砲撃だろう。
大きな衝撃、続く轟音、朦々と巻き上がった砂埃。
しばらくして視界が晴れ、目の前の光景に兵士Aは絶句した。
俺は見えないように小さなガッツポーズをした。
「唯一の出入り口が塞がっちまったな……俺達は、ここで死ぬのか」
「それも運命改変か?これは……ただの大ピンチじゃねぇのか?!」
「だめだめ、メタ発言は厳禁だ」
「なになに……めたはつげん?」
「しめしめ、ここなら奴等に気付かれることもないぜ。なにしろ唯一の出入り口が塞がっちまった、つまり奴等も入ってこれないって寸法か。すわ大ピンチと思ったが、こいつぁしめたもんだ!」
「 「 どっから湧いて出た――?! 」 」
「おや、先客がいなすった。うまい隠れ場所を見付けたもんだな?」
知らない兵士、さしづめB。
なにしろ兵士は山ほどいる。
「とにかく迂闊な発言は控えてくれ兵士B」
「そうだそうだ、運命改変の真っ最中だぞ」
「兵士Aは、メタ発言を控えるように」
「しまった、メタ発言、これのことか」
「なぁに心配御無用。見てみろ、コツコツ貯めた金貨。これを差し出して命乞いをすれば、奴等も見逃してくれるって寸法なんだぜ」
「よせ――っ!!真っ先に殺されるだろ!」
「なんて小金持ち、何故この状況で持ち歩いてるんだ」
「今週末に休みが取れるんだ、プロポーズして籍だけでもと思ってヨ、肌身離さず持ち歩いてたんだな。そらよ、ロケットペンダントを開いて中の写真を見てみろ、この娘は幼馴染なんだ。どうだ!田舎娘にしちゃあ、なかなかの美人だろ?」
「どれどれ?」
「まっ……待て、待ってね?!それ以上はヤメテ!!」
ど ご ぉ お ん !!
「あぁー!! ここにいた? ん、もー!」
「 「 このひと 一体 誰――?! 」 」
「これが当代の女勇者様だよ」
「またコソコソなんかやってるぅ。頼むから一緒に来てって昨夜も言ったよねぇ?どうしてウチのパーティに合流してくれないの、なにか御不満?」
「ザコキャラが勇者パーティなんて無理だって」
「お前さ、こんな美人に毎晩誘われてんのか?」
「スミに置けないねぇ?イヨッ!この色男ッ!」
「誤解だよ、その証拠に<R15>って看板無いだろ?」
「攻撃力とか求めてない。ほら見て?ビキニアーマーにわざとダメージ受けたら、またポロリ寸前だよ、ちょっと見えそう?回復魔法が使えないなら傷薬塗ってよ。こんな調子でサッサと魔王を倒しちゃうと思うから、いつもの死んだフリは見える範囲でやっててよ」
「失敬な、死んだフリとか言うな!」
「けどさ~、死んだら元も子もないでしょ。死んだかどうだかウワサにもならない一般兵なんだから。だから今のうちに結婚してって頼んでるのよ?ただそれだけなのに~っ!!」
「結婚なんてしたら、どっちか片方か両方死ぬだろ。巻き込むなって言ってんの。まぁ傷薬ぐらい持ってるから塗ってもいいけど。どこ塗ればいいんだ、おっぱい?ビキニアーマーかな?」
「 「 リ ア 充 実 展 開 ―― ?! 」 」
『ヨウヤク見ツケタゾ……クックックッ』
「貴様は魔王、何故ここに?!」
「あぁ、この方が魔王様なんだ」
「こんな序盤で最前線にいちゃ駄目だよ」
「こいつぁいけねぇ、くわばらくわばら」
『スミマセン、マモノハ、ドコデショウ』
「まったく。また迷子になってるのね?」
「僕ら一般兵なんで敵の配置知らなくて」
「 「 お 仲 間 と は ぐ れ ち ゃ っ て る の ―― ?! 」 」