詳しくない人が信じてしまいそうなジョーク ――電子書籍化拒否を考える
「『はじめの一歩』だけど、いま書籍版週刊少年マガジンっていうマイナー誌で『そのごの一歩』ってタイトルで引退後の話やってんの知ってた?」
超信じそう。
というか上手な嘘は、真実に少しの虚偽を混ぜるとかなんとか!?
で、これに効果的な返しがこれ。
「ここだけの話なんだけど、週刊ヤングマガジンで『はじめの一歩2』が始まるんだぜ!」
名作の後日談や次世代を扱う続編は多いですし、成功例がなくも?
そしてカウンターを食らいそうになっても御安心!
カウンターへカウンターを――クリスクロスを狙いましょう!
「いやいや! あれは打ち切られちゃっただろ? それよりモーニングで『真・はじめの一歩』が始まるんだって! 色々あったけど一歩がカムバックすんだ!」
……もしかしたら『はじめの一歩』は、掲載紙を変えずに後日談から焼き直しへと続く、史上稀にみる作品になるのかも!?
それこそ一歩カムバックに反対するようなファンは、根こそぎ淘汰されちゃっただろうし?
あとは信者というか――何が起きても受け止める覚悟を決めた読者だけでしょう。
一歩がトラックで轢かれて異世界転生しても、それはそれで読むと思います、個人的には。
ありとあらゆる意味で伝説化が約束されて!?
――
『はじめの一歩』の森川ジョージ先生というと電子書籍化拒否で有名だったりも。
色々と思うことあって、ながらく事の是非を考えていたのですが――
どう考えても森川ジョージ先生の損得に終始で、好きにすりゃいい
以外の結論にはならず(苦笑)
個人的には少し前まで『はじめの一歩』の為だけにマガジンを立ち読みしたり、単行本が出るたびに漫画喫茶へ行ったりしなきゃならず……つまりは不便でした。
しかし、媒体は提供側が決めることでしょう。
これに注文を付けるのは出前のやってない店へ、出前しろとクレームつけるようなものです。
そして著者の権利である前提だけど、それでも――
一つの意見として尊重するべきだったが、趨勢がはっきりした今、もう取り下げるべき
とも思います。
特に雑誌での電子版掲載を拒否しているのなら猶更で。
(単行本拒否は個人の収入や個人的なファンとの関係なので、なんら批判される余地はない。好きにすればいい)
論拠は野球なんかで例えると分かり易いと思います。
まず――
本来、野球というのは球場で観戦するべきだ
という意見があります。
これそのものは反対意見も少ないでしょう。
しかし、だからといって四番やエースが――
なので俺は、テレビやラジオで中継される試合に出ない
とか言い出したらチームは困ります。
競合相手が、そのような行動を許していなければ凄く!
漫画は団体競技ではありませんが、漫画雑誌は総力戦です。
そして非力な新人作家は、看板作品のおこぼれでファン層を広げていくことになります。
なのに四番やエースが、参戦拒否したら?
しかも、結果的に主戦場かつ激戦区となった電子版で?
一般的には「いまは四番やエースなお前だって、新人の頃は雑誌を支える大先輩のおこぼれで紙面を貰えた」といえます。
なのに四番やエースの責任を回避しちゃうのは、褒められた選択ではないでしょう。
(限られた天才達はデビューの時から四番やエースで、この例には当てはまりませんが)
……まあ結局のところチーム事情に終始でしょうか?
ただ電子書籍時代へ突入した頃から少年マガジンの凋落は顕著ですが、全く影響ないとはいえないでしょう。
どこも電子版の発行部数を公表してませんが、おそらく紙版の同数以下と思われます。
ジャンプ系は景気の良い話が多いようで、そろそろ超える?
マガジン以上にサンデーは発行部数が落ちてますが、この電子版という隠れた数字で、マガジンは相当に不利!
分かり易く『はじめの一歩』を知らない若者向きに例えると――
『鬼滅の刃』は電子版少年ジャンプに掲載されません
ですからね。
なら電子版は買わないとなるよ、そりゃ。
結果的に少年マガジンは、電子化で大きく躓いたといえます。
(どころか電子版少年ジャンプは、連載陣からフャーチャーした一作品がカラーのオマケつき! 念の為にいうと過去作じゃなく、その週に載る最新話がフルカラー! 『鬼滅の刃』とか第一四〇~二〇五話と最終回まで電子版はフルカラー配信でした! そりゃ電子版購入層が増えるってもんです)
――
それでも『電子書籍化拒否』の表明は間違ってないし、問題提起はするべきでした。
いま電子化を推奨できるのは――
どうやら電子化しても、業界は死滅しないで済みそう
と判断できるから。
同時期に海賊版問題が最盛期で――
このままでは作家業が成立しなくなってしまうのでは?
という危機感があったのも事実の様です。
また『電子書籍化拒否』のメンツを見るに、ブックオフとかの新古書店問題からの流れを引いて?
……電子化が仇敵だった新古書店を根絶しそうなのは、大いなる皮肉?
この手の問題提起で大正解だった例が、レンタルビデオでしょうか? ……皮肉な意味で。
やはり映画は映画館で観るべき、レンタルなんて駄目だという意見があったそうです。
結果は皆さんもご存じな通り。
あっという間にレンタルビデオは映画館を駆逐してしまいました。
そして映画館が限られてきたので――
大作以外の映画は、上演する場所すら失いました
上演できなくなったので、大作以外の映画は撮影すらされなくなりました
撮影されなくなったので、スタッフの職場すらなくなりました
新規のスタッフを雇用できないので、若い才能が供給されなくなりました
結果、大作ですら枯渇した資源を基に、年老いた人達で作ることに
最終的に「邦画はつまらない」と廃れてしまいます。
終わってみればレンタルビデオは、全員にとって不利益をもたらしました。
確かに安く映画やアニメを観れましたけど、新作の供給が止まってしまいましたから。
(このレンタルで苦々しい思いのある層が、動画配信に否定的な気も? 北野映画が好きなんですけど、有料ですら配信してません。……逆説的に違法アップロードやレンタル頼りになるのは皮肉?)
つまり、問題提起が正しいこともあるのです。
というよりも、ほぼ全ての問題提起には一理あります。
――
しかし、その時点では正しく見えても、後々に変わるのはよくある話。
ですが意見を取り下げでもしたら――
もの凄く叩かれるのはどういう訳!?
(似たようなので『勘違い』や『不勉強』、『新解釈が提示される』なども許されざる大罪扱い。個人的には、多少なら流せよと思わなくもないです)
例えばですよ?
ある日に森川ジョージ先生が――
「色々と考えて電子版少年マガジンへの掲載を開始します。電子版単行本に関しては、今回は保留ということで」
とか表明したら、大炎上するでしょう。
いや、それで誰か困る?
また同じ様に――
一歩「色々あったけどカムバックします!」
とかなっても、批判や非難の嵐でしょう!
個人的にはボクサー一歩が読みたいんだけどなぁ!?
一歩「もしかしたらパンチドランカーかもしれないと思ったけど、そんなこと無かったぜ」
で許すよ、ここまできたら!
それこそ伝説化の予約された漫画に相応しいような!?
〇〆として提案かつ努力目標
・誰かの問題提起には耳を傾けよう
・意見や見解の変更は、あって当たり前と考えよう
・自説を取り下げる勇気を養おう