エーリス砂漠の調査その2
長門です。不定期更新してるつもりが仕事の合間や暇なしにこの七星転生を書いてるので、ペースが上がってしまってます。
では本編をお楽しみください
エーリス砂漠に船を出して4日目の正午近く、ネーナ達5人は乾海船のデッキにて比較的穏やかな風を浴びていた。
「ったく…飲みやすい酒も考え物だなこりゃ。まだ少し上がって来そうだぜ…アレノアの持ってた五良薬のおかげで助かったけどな。」
「あれは、あまり持ち合わせがないから、次からは何も出来ないから。」
「わーってるよ、ありがとな」
五良薬とは、スフィア世界における風邪薬に該当する薬であり名前の通り、頭痛、吐き気、熱、喉の痛み、鼻炎の五つを緩和する薬であり、中でもアレノアが所持している物は、高価な代物である。
そんな二人の会話を聞き流しつつネーナは、合流してくる乾海船を見つめていた。
スフィア世界において、薬と治癒魔法は切っても切り離せない関係である。
スフィア世界の国際魔法規定において、下級から最高位まで細分化されており、級と位の2に等級分けがなされている。
紛らわしいが上級の上が下位という位置づけである。その中でも治癒魔法は、等級が上がれば上がる程強力になるがその分副反応も大きい。そのため上級以上の上位治癒魔法の習得者は、副反応を緩和するための丸薬を持ち歩かなくてはならない。
ネーナやアレノアも例に漏れず習得者の為、丸薬を持ち歩いている。
「何か、巨大な魔力の波動を感じる…」
ネーナは、二人の会話を聞かず地平線を眺めていた。
すると、警告を知らせる銅鑼が鳴り響いた。そして、拡声器より船長クワバラの怒号が辺りに広がった。
「ブルバン連邦方面からの、乾海船郡との定期連絡が途絶えた!そしてマジカルレーダーより、巨大な反応!見張りに出れる奴は甲板にでろ!」
その直後、ネーナは飛行魔法を使い空へ舞い上がると、杖をかざし5つの魔法石を五芒星を描く様に並べ魔法を使った。
「わからないわ……何か黒い波動がこちらに……3時?いや1時?わからない………なに!?」
ネーナが、魔力の波動の位置と距離を図っていると突然空から、見慣れない鳥のような物が攻撃を仕掛けてきた。
ネーナに続いて、何人かの魔法使いが空に上がっていたが、空から襲い来る鳥のような物の奇襲を受けて、次々と墜死していく。すると一人が叫んだ。
「まさか!単葉機!こっちの世界でも見る事になるとは!」
どうやら、異世界の物らしいがこの世界の航空戦力であるワイバーンよりも制動性は低いものの攻撃力と、速度に関しては遥かに上を行っていた。
「くっ……!速い!」
ワイバーンより一回り小さいが、その攻撃力はワイバーン並かそれ以上で、ネーナが良く魔法障壁を破る際に使う魔法によく似ていた。
「この威力!私の障壁破壊よりも高い!?」
杖から腰の袋の中の魔法石へと魔力を流し、辺りに魔法石を巻きさらに強固にし闘気を流し更に強化したが、それでも何時まで保つか分からない。
ネーナに1騎のワイバーンもどきが高速の岩石魔法をコレでもかと放ちながら近づいてきた時、下方から紅白の閃光が、ワイバーンモドキを貫いた。
貫かれた、ワイバーンモドキはネーナの側で爆発したが障壁は壊れてはいなかった。
「ネーナ!大丈夫!」
コウモリの羽をはためかせながら、黒煙の中にいるネーナに近づいた少女は、声をかたが返答はネーナのビンタであった。
「良く見なさいよ!ユリン!全くもぉ!」
ネーナの数少ない友人のユリン・グラディウスだった。ユリンは、この調査に招集された悪魔将軍の旗下だった為今まで動けなかったが、遥か格上の悪魔の命令に逆らってでもネーナを助けたかったのだ。
「何匹いそう?」
「ざっと見積もって、30騎ぐらいかしら?」
敵数把握に失敗したネーナだったが、ユリンは遅れて来た分しっかりと、おおよその数を教えた。
と言うのも、ブルバン連邦国方面から続々と飛んで来ているので、まだ数は増えると過程したからだ。
「ユリン……アレをやるわよ……」
「えぇ……いいわよ…」
「「|D4CF《デュオ・フォース・コンバットフォーメーション》」」
二人は、武器を構えると迫って来ていた、ワイバーンモドキの編隊にユリンが単身で突撃していった。
雷系の魔法を得意とするユリンは自身の体に雷の幕を張り高速移動を可能としている。突き抜ける瞬間のワイバーンモドキの騎手の顔を見たが、目を丸くして驚いていた。
あっという間に、ワイバーンモドキの後方に抜けるとユリンは、ネーナに目掛けて直ぐ槍に雷の力を溜め込み、放った。
ユリンの持つ槍は、雷を纏易い性質を持っており所持者と相性がとても良く更に、帯電する事も可能な為それを利用した攻撃は凄まじい。
そして、ネーナ自身は火と水を得意とするためユリンとの属性連携は抜群に良いのだ。
「ネーナ!行くわよ!エル!」
「トォォォォル!」
放たれた強力な雷槍は、引かれた水の糸を伝いネーナへ飛んでいく、ワイバーンモドキ達は散開しようとしたが、すでに凹凸のある水のレンズは雷を伝えており逃げ場がない。
どうやら、ワイバーンモドキは金属を使っている為が雷を通しやすいらしく、30騎はあっという間に火に包まれ墜落するもの、もしくは爆発するものと、様々な形で最期を迎えていた。
「やったぁぁぁ!」
ネーナが喜んだが、ユリンは遥か地平線をじっと見ていると砂埃が舞い始めた。
「ネーナ!逃げるわよ!」
ユリンが急いで、ネーナを連れて近くの乾海船に戻り船内に駆け込むのと同時に、砂嵐を知らせる鐘がそこらじゅうから鳴り響いた。
付近を飛行していた魔法使い達や甲板上にいた傭兵達は、皆船内に避難できたが上空にいた者達は、吹き荒ぶ砂嵐に巻き込まれてしまった。
「ユリン……ありがと……はぁ…死ぬかと思った。」
「そう言うところほんっと!変わらないわね!連携終わってからも気を抜かないでってアレだけ言ったでしょ!?」
「うっ……ごめん」
ユリンが注意をしていると突然重圧が襲いかかりその場にうつ伏せで、倒れると魔将が転移をしてきた。
「通常悪魔の小娘……私の命令を無視したな?何故無視した指令を出すまで動くなと言ったよな?」
「も……もうし……わけ……ございません……がぁぁ!」
ユリンが謝罪した途端強力な真空波の小さい刃が体を刻み込んだ。
「言い訳は聞かん……次同じ事をしたらただでは済まさん……」
魔将がユリンに対して命令違反について罰を与えていると、突然流れていた魔力をカットされ眉をひそめた。
「私の友人をこれ以上傷つけるな……」
ネーナである、ドスの聞いた少女とは思えない声のトーンで言葉を放ったため、魔将は「友人を助ける為か……今回は見逃す…それに貴様には名があるな?」
ユリンに流していた雷を止めて、聞いてきたのでユリンは「はい…私はユリン・グラディウスという名前がございます。」と名乗り1礼した。
それを聞いた魔将は「良い名だ……下位以下の階級でそれ以上の実力を持つ奴は少なくない……しかしお前は若いまだまだ伸びるだろうな……ワシを使う日を待っておるぞ……」
そう言うと魔将は、再び転移魔法を使い何処かへと消えて行った。しばし無言の後ユリンはネーナに抱きつき、怖かったよぉぉぉと泣きながら言った。
電撃の束縛は問題ではなく魔将に逆らい、存在を消されるかと恐怖で動かなかったそうだ。
さらに、魔将直々に昇格確定申告までされたようなものなので、嬉し涙も含まれてるようだ。
確かにユリンの実力は上位悪魔より劣るが並の下位悪魔よりも強いく、ネーナをライバル視してるだけあり、ネーナが最も得意とする属性火と水に、対抗し土と雷をユリンは得意としている。
しかし近接戦闘では、ネーナよりも槍術にたけており、引き分けている。そもそも悪魔と人間とでは体の構造が違う為しょうがない部分もある。
もっとも、悪魔は魔法が得意なはずがユリンは魔法の方面で、ネーナに黒星続きであるが、人間が悪魔に対抗する為に使う体術では、悪魔側のユリンが白星続きという逆転してるのが面白い。
「でも、ユリンあのフォーメーション成功したわね!」
「D4CFね?むしろあそこまで効果絶大だった事の方が驚きよ。ネーナも腕を上げてるのね!私も負けないように精進しないと!」
周囲の人々をよそに、二人はおお喜びしたそんな中ネーナは杖を立てて、マジックビジョンでアレノア達と連絡を取るため魔力を込めた。徐々に、アレノアの姿が浮かび上がりノイズ混じりではあるが、声が聞こえ始めた。
「ネーナ!出なさい!お話がございます!」
アレノアの怒鳴り声が聞こえた為「私ですどうぞ!」と返答をすると「ユリンとあのフォーメーションをやったのですね!?アレは危険だと何度お話したら気が済むのですか!」
あのフォーメーションとは、ネーナの支援を受けて、ユリンが水飛沫を散らし高速で敵の群れを突破し後方から雷槍を投げ、水飛沫により放電拡散させ制圧するコンビネーションアタックだ。
「しっかり成功させたから、いいじゃんか!」
「あなたねぇ!過去にそれ失敗して腹部に大穴開けてるのよ!?」
そう、このD4CFはユリンとネーナが大群を相手に二人で戦うためのコンビネーション技なのだが、ユリンが雷槍をネーナに向けて打つため、しっかり放電させきらなければ雷を纏った槍が、ネーナに炸裂するのだ。
2年前に、このコンビネーションアタックを編み出し使用した時は、雷を拡散させきれずネーナを障壁ごと貫いたのだ。
ユリンは直ぐに治癒魔法をかけ、様子を見に来たアレノアは応急処置を施し、王宮病棟へ緊急搬送し3日間の昏睡の後、リハビリを2ヶ月間続け、やっと完治した程の重症を追ったのだ
そんな経緯もあってか、コンビネーション技は禁止されていた。
「無事に成功させたのよ!?むしろ褒めてほしいのですが!?」
ネーナの返答を無視しアレノアは、「兎に角!今そちらへ赴きます!いいですね?」
それを聞いたネーナは逃げようとしたが、なんの前触れも無く現れたアレノアに肩を捕まれ、「はぁぁなぁぁしてぇぇぇ!」と叫びながらそのまま消えた。
「ネーナ……相変わらずね…」
呆れ果てながら、ユリンは呟いた。
〜ある乾海船の甲板上〜
「さすがネーナね、ユリンと力を合わせて飛行隊を全滅させるなんて。」
プラムは、少し喜びの表情をすると腰に装備した刀の柄に手をかけ振り抜いた。
居合の類だが、その瞬間ゴトッとプラムの目の前に首が落ちた。それは、異形の姿をした大型犬によく似ていた。
「鋭角から出現する時貴様らは臭いでわかる。ザンツワーグの血族は私だけと思い、狙いを定めているのだろう?猟犬達」
プラムが独り言のように話すが、気配は無いむしろ、砂粒が当たる音と戦闘機の爆裂音が響いていた。
「プラム様そろそろ中にお入りになりませんと、お体に触ります。」
「わかっているわ」
側近と思われる女性に声をかけられると、プラムは船内に入っていった。
読んでいただきありがとう御座います。まぁまぁいいペースで筆が進んでおります。
スフィア世界のモデルは、現実世界のヨーロッパとアフリカ大陸と言う広大にし過ぎたせいで、調べる事が多くて大変です。
逆に言えば、世界の文化を調べられるという事でもありますので、一概に悪いとは言えないです。
次回の更新日も不明ですが、気長にお待ちください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。