エーリス砂漠の異変調査 1
大変長くおまたせしました。特に語ることも無いので本編どうぞ。
ネーナ達は、砂港に並ぶ乾海船に乗っていた。
この乾海船の進む仕組みは、いたって簡単で砂流布と呼ばれる布で作られたマストに風を受けて進む。しかし、時には風に逆らうため、両サイドと船の後方に砂防布で作られた外輪で進む。
乾海船の艦首には、吸気口がありそこから、風を受けて内部の機関を稼働させて進む。常に烈風が吹き荒ぶエーリス砂漠では、風に逆らって進む事が難しいので逆に風を動力としている。
「しっかし、これだけの船を良くかき集められた物だな壮観だぜ。」
イーザムの砂港は、エーリス砂漠に面する砂止場の中では最大であり、今回その港に総勢24隻もの乾海船がズラリと並んでいた。
突然ラインハルトの後ろからしゃがれ声が聞こえてきた、「お前さん方か?特令ってのは?ワシは、この船の船長のクワバラってんだ!」
クワバラと名乗った大男は、船長帽を被り歩いていった。
「他の砂港からも、応援が来るらしいから大所帯になるぞや。出港準備ももう時期終わるからはよ乗んな。」
ネーナ達が乗り込み、30分ぐらい経過した時、船出の合図である銅鑼が辺りに鳴り響くと船は帆を広げて風を受けて、進み始めた。
このエーリス砂漠自体デカく、隣接してるメフィート暗国の地域の分を合わせると、大海と大差無くまさに砂の海に加え砂が絶えず対流している為かそのまま入ると、砂の中に引きずり込まれてしまう。そのため、馬車ではなく船が選ばれたのだ。
ネーナ達は船内に入るとそこは、正規兵や傭兵なんかで溢れていた。
「船と言うか客船だろこれ、そのサイズを浮かべても沈まない、構造が不思議だが?」
ラインハルトが疑問を口にすると、アレノアが説明を始めた。
「この乾海船は、このエーリス砂漠に育つエリオブの木から出来てるのよ。この木は、かなり特殊でね水上を漕ぐより砂漠地帯を漕ぐ方が遥かに早いのよ。」
さらに、話を続けようとするとネーナが「でも、吸気口が気になりますわ?いくら風が強いとは言え、砂嵐を巻き込むのですからそれなりの砂防はしてるのですか?」
「これから、話すのだけど......」
「ごめん」
ザンツワーグのある東スフィア地域から、離れてもうじき4ヶ月経過するがネーナのお嬢様口調がなくなり始めて来てはいた。
アレノアは、話を続けようとすると歩み寄ってきた巨漢の大男、クワバラが話を続けた。
「この船は、砂防もしっかりしてるんだこの、乾海船の吸気口の中にはサンドトラッシュのマジックルームがあるから、そこに砂を貯め動力機関には風だけが送られるようになってる。」
さらに、ルームに貯められた砂はガラス細工に利用する為、ある程度貯蔵する仕組みになっているらしい。
「まぁまぁ目的地に着くまで、暇だろうしこの船の酒場で飲もうやネーナ」
ネーナの肩を掴むとラインハルトは、ズルズルとネーナを船の酒場まで引っ張ていき、それの後をアレノア、ニア、メアが追っていった。
かなりの規模を誇るこの、特注サイズの乾海船は設備も充実しており、訓練所や娯楽施設施設も完備してある。
「ラインハルトさん?私まだ酒飲めないのですが.......」
「んなこたぁ知るか!傭兵何だから年齢なんざ関係ぇねぇ!」
ネーナ達は酒場に入り丸卓に座り飲み始めた。ネーナは貴族の嗜みとしてワイン等の高級酒の飲み方は知ってはいたが、ビールやウィスキー等の酒の飲み方を知らなかった。
ネーナは、(どうやって飲もう、お酒って一気に飲むと体に悪いし、さてどうしましょう)と内心焦っていたがメニュー表を、見て思い出した事があった。
「ネーナ、異世界では酒割りってのがあるんだが、ジュースと酒を混ぜるって物がほとんどだね。」
その言葉を思い出したネーナは、ピーチリキュールとオレンジジュースを頼みグラスを注文した。
周りは何事かと、ネーナ達に注目し始めたと言うのも、このスフィア世界にはカクテルと言う物が存在しないのだ。
「おっ?嬢ちゃん何する気だい?」
「私はお酒苦手なので飲みやすくするだけです。」
「どれだけ飲みやすくなったか俺が試してやろうかぁ?」
「そちらの女性の方!お願い致します!」
「おっ?あたいかい?良いだろう!」
そうこうしてると、マスターが注文したものを持ってきてくれた。
オレンジジュースとピーチリキュールをグラスに混ぜてストローで混ぜて、先程指名した女性の傭兵の前に出すと、「進まなかったら嬢ちゃん責任取れな?」
すると「ん?飲みやすいなコレ!」とどんどん飲み始めた。酒場のマスターにファジーネーブルと名と作り方を書いた紙を渡した。
しかし、割始めると他の組み合わせも試し始めた、いつの間にか27種類のカクテルを作り出していた。
その頃には、ネーナも傭兵達のどんちゃん騒ぎに混ざり盛り上がっていた。
その後酔いつぶれたネーナとラインハルトを介抱しながら部屋に戻ったのは容易に想像出来ることだ。
さらに、次の日ラインハルトはぐったり部屋から起き上がれずにいた、俗に言う二日酔いって奴だがラインハルト同様動けなくなっている傭兵や派遣兵はたまた聖騎士までもがこの有様だった。
「私って、酒に強かったのねアレだけ飲んだのに平気ですよ。」
しかし、アレノアやニアとメアはぐったりしており後から聞くとかなりの酒乱だったらしく、しばらくはお酒は自重しようとネーナは心に決めたのだった。
その日の昼は快晴で、砂嵐も無く穏やかだった為甲板に出ることが出来た。
「一面黄土色ね.....これが硝子になるなんて信じられないわ。それに今日は、人もいなくてガラガラね......ん?」
ネーナが甲板を歩きながら呟き、後方の第二マストの近くまで歩いた時不自然な気配を察知した。気配のする方へ行くと、少女と言うには幼い女の子が隠れていた。
「あなたお名前は?」
「チェト......このお船は何処に行くの?」
「このお船はこれから、危ない所に行くからお姉ちゃんの部屋においで?」
少し甲板を2人で歩いた後、部屋に戻った。元々ネーナは作業用の部屋も借りて居たので、2人でそっちに居ることにした。
「ここは?」
「お姉ちゃんがお仕事するお部屋だよ。」
「お仕事は何してるの?」
「魔法石の生成と加工よ。見る?」
「うん!見る!」
ネーナは、小袋から10cm程の魔法石を取り出すと懐からペンの様なものを取り出し机に向かった。
ペン先が青白く円形に光るとネーナは、魔法石に先を当て動かし始めた。
玉士と呼ばれる資格を持つネーナは、スフィア世界でも数少ないフルオーダーメイドを受けるプロなのだ。
ネーナと歳の近い子で玉士の資格を持つ子は他にもいるが、フルオーダーメイドを受けるには少なくとも20年は必要なのだ。
「お姉ちゃんすごい!」とキラキラと目を輝かせて好奇心の眼差しでコチラを見てくる。さらに近くにあった椅子を持ってくると見学し始めた。
「お母さんに叩き込まれたからね。魔法石の作り方から合成まで全部。」
そう淡々と話すと左手の指先に魔力を集中させ、魔法石の加工を始めた。
「魔法石の特徴はね、強力な魔力を流すと形状が変わる所なのよ。だからこうして圧力を、加えると変形するのよね。」
指先を押し付けて動かすと、なぞった所がへこんだ。
そしてそのまま作業を続ける事、2時間ネーナは休憩に持参した水を飲もうとすると、椅子にもたれかかって寝息を立てているチェトを見たので、部屋に備え付けられていたベッドに寝かせた。
「やっぱり、ずっと机に向かってると首筋が痛むわね。」
ネーナは、外に出ようと思い窓を見ると砂塵がガラス越しに見える景色をおおってしまっていたので、ネーナは諦めてトレーニングを始めた。
日も傾いてきた頃船内は、慌ただしくなり始めた。船員達は動ける人らの力を借りて、船内のあちこちにあるレバーを、上げたり下げたりバタバタし始めた。
ネーナも手伝っていたが何故パイプに付いたレバーを上げ下げしているか聞いた。
「エーリス砂漠の夜は極寒のごとく冷えるんだよ、だからこうしてパイプのバルブを開閉して、船内の温度が下がり過ぎないようにしてるのさ。」
と丁寧に教えてくれた。
エーリス砂漠の夜が寒いとは聞いていたがここまでの備えをする程なのか?とネーナは疑問を持ったので外に出る事にした。
昼間の一面黄土色の風景とは打って変わって、一面が凍てついた白銀の世界が広がっていたが、不思議と船は進んでいた。
「ここまで凍てついたら、船は進まないはずだけど......」
独り言を呟き船首に進むと、凍った砂の大地を切り裂いて進む船の先端は尖っていた。さらに両サイドの外輪は、鋭利になっていてこちらも凍った大地を掘り起こして、進んでいた。
「なんて、パワーを持つ船なの......」
凍った大地は、鶴嘴すらはじき返す程なのにも関わらず、ガリガリと音を立てて突き進んでいた。
「確かに寒いわね、防寒はしっかりしていたはずだけど、それでも冷えるわ。」
ネーナは、寒くなってきたので足早に船内に戻り自室へと帰った。
船内は暖かく先程までの冷え込みが嘘のように無くなった。そのままシャワーを浴びて、ベッドに入り寝た。
〜別の乾海船〜
「エーリス砂漠の夜は冷えるわねそうは思わないかしら?ノフ=ケー?」
ノフ=ケーと呼ばれた雪と獣の仮面の男は、無視して話を続けた。
「エーリス砂漠の周辺は、能力を使えんむしろそっちに注意しておいた方がいいだろう。」
蟹手の触手の仮面をつけた女の話を無視しノフ=ケーは話を続けた。
「それに、多少なりとも警戒をしていた方がいい奴らも居そうだな。」
「原神教会の奴らね......それに、敵対してるクトゥグアも気になるわね?」
仮面の女の話を無視して、ノフ=ケーは考え事をしていた。
(この異様に抑えられている魔力はなんだ?ハイエルフにも匹敵する量だ、原神教会やアザトース派では無いな一体何だこの魔力は......)
そんな、考え事をよそに夜が開けて行った。日が差す頃2人の姿は無く砂粒が甲板を吹き抜けて行くだけだった。
今回も、色々調べながら執筆をしておりました。
次回の投稿日につきましても、未定ですが完成し次第投稿しますので、それまでゆっくりお待ち下さい。
読んでいただきありがとうございます。