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南東への旅路その一

 ビールマに戻った二人は、新たに加えたラインハルトと共に、南東へと向かった。

 

 カルーゴ協商国南東部には、広大なエーリス砂漠が広がっておりその規模は、カレリア共和国、ヨイサイ社会主義連邦共和国、ブルバン連邦国の四ヶ国に広がっておりその中心には、光神ルーを祀っている神殿がある。

 

 エーリス砂漠は、聖なる砂漠として知られており周辺国は、ここに死者を埋葬する。なぜか、ここに埋葬された死体は、最高位の禁術を用いた魔法や呪文を受け付けない。なので、アンデットになる心配をしなくていいのだ。

 

 三人は、聖なる砂漠を目指してカルーゴ協商国の中央都市である、ビールマを出発した。

 

 聖なる砂漠の周辺で一番大きく、砂漠を渡るための乾海船(かんかいせん)の港町イーザムだ。

 

 乾海船(かんかいせん)とは、エーリス砂漠をはじめとする、大砂漠を安全に渡るために建造された大型船だ。

 カルーゴ協商国は、造船技術も世界で一番であり、異界の造船技術を組み込んだ物となっている。

 砂漠鮫(サンド・シャーク)砂竜(サンド・ドラゴン)等の、大砂漠すむ魔物達を狩る乾海漁師がいる。

 

 カルーゴ産の砂漠鮫(サンド・シャーク)は、獰猛で乾海船(かんかいせん)に乗り上がってくるが、そのぶん油のノリがよくそれでいて身が絞まっている上に、安価で手に入るためスフィア大陸の東側では、宴会料理などで振る舞われている。

 

 イザームへの道中はだだっ広い原っぱが広がるだけ草原だ。

 

 この大草原は、イザーム大草原と呼ばれ小さい村が点在する草原だ。

 

 このイザーム大草原は、安全地帯と知られており、スライムやゴブリンといった下級魔物(かきゅうモンスター)がほとんどでありイーザム大草原周辺諸国出身の冒険者や傭兵達は、ここで基礎を身に付けてからイーザムから東へと向かうのだ。

 

 ネーナは、元傭兵だった母親(ははおや)に旅をする時の心得や戦闘技術などを教え込まれているので、そこいらの見習い傭兵よりも遥かに強かったのだ。

 

 「アレノア、フードを被って!ラインハルトさんはそのままでお願いします。」


 二人は、ネーナの指示の意図を理解できていなかったが徐々に鈴の音が、響いてきたのでわかった。

 

 鈴の音の正体は、大手奴隷商工会の一つチウィホン労奴(ろうど)商会の一団だ。

 

 労奴商会の一団の牢車(ろうしゃ)を見つめていると、奴隷にしては血色(けっしょく)のいい二人が目に止まった。

 

 「ラインハルトさん、あの二人を買いますがよろしいですね?」

 

 「おいおい!冗談じゃねぇぞ!お前奴隷をやとうのか!?」

 

 「えぇ......すいませーん!」

 

 ネーナが声をかけると、一団は鈴を二回鳴らして止まり、先頭にいた大男がネーナ達の元にやって来た。

 

 「おん!こちら奴隷商会ハメルズの団長とだけ名乗らせていただきやす。お客さん誰をお買い上げで?」

 

 「そこの、二人を買いますが15万ネブルでよろしいですか?」

 

 旅人にしては、大金を出したので団長さんは腰を抜かし周囲に居た護衛兵も驚きざわついた。

 

 「まいどでし!おい!そこの二人をここに棄て置け!」

 

 血色のいい二人がネーナ達の前に投げ出されると、一団は再び鈴を鳴らして霧の中を進んだ。

 

 投げ出された二人は、怯えた表情でラインハルトを見たが、フードをとったアレノアを見てハッとした。

 

 「アレノア様!それに、姫様!」

 「ネーナ様ご無事で......」

 

 二人とも涙ながらに、抱きついた。どうやら二人ともネーナ達に雇われていたみたいだ。

 

 「ニアにメア無事でよかった....メイド見習いのあなた方が心配だったの。」

 

 ニアとメアは、元々は流浪の双子でプロヴィス王国のスラム街に住む二人だったが、どぶ川に落ちてきたネーナと出会いそのまま雇われたのだ。

 

 「イストル帝国に売られたの?」

 

 「新貴族と呼ばれる人達に売られました。」

 

 「イストル帝国軍は危険です。魔王軍でも止められるかわかりません....」

 

 鬼人姉妹の姉ニアは、不安な表情を浮かべて答えた。

 

 三人はそれ程か?と思ったが龍騎兵(ドラゴンライダー)の質の高さや陸戦における実力を考えるとあり得ない話ではない。

 

 「俺が言うのもあれだが、東南のヨ連も今ブルバン連邦と戦争をしている。あの国が、ブルバンを破れば魔王と言えども勝てるものも勝てんぞ。」

 

 不安を煽る話をしていたが、ネーナは気にする余裕などなかった。

 

 「それよりも、反乱を起こすにも今の力ではねじ伏せられておしまいよ。何がなんでも祖国再興!それだけよ。」

 

 ブルバン連邦は、ヨ連と同じ機械工学が発展している国で、魔法の西と機械の東と別れていて貿易も全くしていないのだ。

 しかし、スフィア世界の中では国土では、(あま)りまあるほどの国力を有しており、隣国(りんごく)と比べても段違いに格上であり、兵士と兵器の質は極上と言ってもいいレベルだ。

 ここまでブルバン連邦が強いのは、隣接している国が長年の仇敵(きゅうてき)と魔王が納める領地に挟まれているからだ。

 

 ニアとメアを含めた五人は、イーザムへ向かい歩みを進めた。

 日が落ち始めたので、近くの森の中に入りここで野宿する事に決めた。

 

 「ニア、メア、アレノアお願いね?私は、ラインハルトさんと一緒に結界を張るわ。」

 

 「「かしこまりました!」」

 「了解です!」

 「結界魔法とはね、用意周到だな。枕を高くして寝れそうだ。」

 

 三人は各自に別れ、ラインハルトとネーナは結界の刻印を刻むために、周囲を散策し始めた。

 

 「所で、維持するのは誰が担当するんだ?あの鬼人のお嬢さん二人か?」

 

 「私が、魔力を供給します。」

 「お前内包魔力量ないほうまりょくりょうそんなにあるのか?」

 

 当然だ、普通人間(ふつうにんげん)が結界維持に魔力を供給するなどあり得ない。数時間もたたずに、枯渇する事になるためだ。

 

 「心配はごもっともですが、原魔石製の杭を打ち込みますし、私の魔力量は古龍クラスの魔力を宿していますので、ちょっとやそっとでは枯渇(こかつ)しませんわ」

 

 ラインハルトは、驚き目を見張るが話を聞くと、スパイスフィールドとよばる特殊防御(とくしゅぼうぎょ)フィールドを展開し続けていたとの事だ。

 

 「スパイスフィールド?なんだ?その美味しそうな魔法は。」

 

 「私が、自分で編み出した魔法です。行使しつづけますが、特殊な幻術(げんじゅつ)にかかる結界魔法でしてCランク以下の魔物は、このフィールドに阻まれて近づいてこれませんわ。」

 

 (よわい)15(さい)自作魔法(オリジナルマジック)を編み出すとは考えられないが、行使しようとしてる結界魔法が、上位の物だったので納得した。

 

 「いいぜ、その手の結界魔法なら俺も得意だからな、手伝うぜ。」

 

 野営地(やえいち)を中心に、置いた5つの原魔石を頂点にして魔方陣を展開し結界を唱えた。

 

 「水と土の精霊達よ、私達を包み外敵を惑わせ元の場所に返したまえ。」

 

 「なら、俺は召喚魔法だな....『汝、迷いを産み出す物よ、魅せる楼閣(ろうかく)で外敵から我らを護りたまえ』来たれ!蜃気楼の牡蠣ミラージュ・オイスター

 

 ラインハルトは、幻惑を産み出す魔物蜃気楼の牡蠣ミラージュ・オイスターを呼び出した。この魔物は名前の通り幻を見せるのだが、普通の幻と違うのは見た物の欲しい物を見せて歩かせると言う物だ。

 

 「幻惑結界!『フラワーブリザード!』」

 

 さらに、ネーナが近づく物を花吹雪で包み元いた場所に戻す、出戻(でもど)り系の結界を張った。

 実は、ネーナが森を選んだのもその為である。

 生い(しげ)る木々を抜ければ、太陽光或いは月光が照らす花畑へと出る。

 そして突風が吹いて元の場所に戻る仕組みだが、余程(よほど)術者(じゅつしゃ)でない限り突破は不可能であり、自然に溶け込ませることでさらに、発見を困難にしているのだ。

 

 「ずいぶん厳重(げんじゅう)にしたもんだな。しかし、この結界魔法は魔力の消費が激しいと聞くが、本当に大丈夫か?」

 

 原魔石を使用して魔力伝達効率まりょくでんたつこうりつをあげているとはいえ、基礎魔力が多い事で知られるエルフですら4人がかりで行使する結界魔法を一人でやってしまったのだ。

 分散しない分、消費も激しくなるのだ。

 

 しかし、ネーナはラインハルトの問いに対して「言ったはずよ私の内包魔力は、上位魔人と同等よハイエルフであるアレノアの5倍は有るわ。」

 

 信じきれてない、ラインハルトはネーナの肩に手を乗せて調べてみると、本当であることが分かった。

 

 「それ、人間が内包していい量じゃねぇぞおい!いつか暴走するかもしれないじゃねぇか!」

 

 声を荒げて言葉を発したが、ネーナ自身に封印魔法(ふういんまほう)(ほど)こされている事に気づいて「いや、定期的に大放出していれば問題ないか。」と自答して自分で納得した。

 

 「それでは、三人の元に戻りましょうか。」

 

 ラインハルトは、戻った先で驚きの光景を目にした。

 

 文字通り一文無しなのだが、五人掛けの円卓と椅子そして、そこに並ぶ料理は高級宿のように美しく並べられていた。

 三人が、ラインハルトとネーナを立って待っていた。

 

 「お待ちしておりました、姫様(ひめさま)

 「ラインハルト様も此方へお座り下さい。」

 

 メアとニアが二人を席へと案内すると、先に座っていたアレノアが「二人がいつもの通りしたいと言ったのです。ごめんなさいネーナ」

 

 アレノアの言葉にネーナは、「二人がそれで楽なら、それでいいですがニア メア私は今身分を隠しています。人前ではネーナと呼んでください。ラインハルトさんいただきましょう、アレノアとニアメアの料理は美味しいのですよ!」

 

 ラインハルトは、アレノアが料理が作ったと知って青ざめた。

 (アレノアは、料理が下手なの知ってて作らせてるのか!?おまけに味覚音痴と来てる!)

 

 「おい......本当に大丈夫か?」

 

 「何がです?ラインハルトさんも早く食べましょう?ほら!二人も席について食べましょう!」

 

 「はっ!」

 

 ニアとメアが席に座り食事を、食べ始めたラインハルトは、食べた料理に対して「アレノアお前料理すんごい上達したなおい!!」と言葉がでてしまった。

 そして、フォークがラインハルトの首筋を掠めて飛んでいった。もちろん投げたのはアレノアだ。

 

 「ラインハルト......あなた私の手料理美味しいって言って食べてたじゃない!この薄情者(はくじょうもの)!」

 

 「だって、お前すぐ(おこ)るじゃんか!」

 

 その軽い言い合いを聞いてネーナら三人は、笑っていた。

 

 「ところでネーナさんよ、なぜそこ二人がお前を姫と呼ぶのか教えてもらえるか?」

 

 「私は、亡国ザンツワーグの筆頭貴族(ひっとうきぞく)の第一王女ですわ。そして、アレノアとニアメアは、その頃の従者ですわ。」

 

 「魔物(モンスター)ハーフの二人を(やと)うとは、ホントに差別が無い国だったんだな。」

 

 魔物ハーフは、このスフィアに置いてもっとも(さげす)まれているのだ。立場も大体奴隷か、良くて下働(したばたら)きがもっとも高い地位と言うこと考えると、凄いことである。

 

 「姫........いえネーナ様との出会いのお話は後程(のちほど)(かた)らせていただきます。」

 

 ニアがそう話すと、メアは空いた食器をさげ準備されていた、大樽(おおだる)に入れた。

 

 「クラッシュ!」

 

 メアが、大樽に手を置きそう呟くと木っ端に弾けとんだ。

 

 メアは、二つの能力を持っていてクラフターとクラッシャーという、創造と破壊する、相反する能力を持っている。

 

 ニアは、千里眼(せんりがん)で見通す能力を所持している。

 さらに、医療等の知識が豊富なため千里眼を生かして薬草の採取をしたりしている。

 

 「ラインハルト様は、男性の方ですので先に御入浴(ごにゅうよく)お願いいたします。」

 

 ラインハルトは、食後のデザートを食べるとニアに言われた。

 

 「野宿で、風呂まで入れるのかよ....まさか!結界を厳重にしたのは、このためか!」

 

 ネーナは、ニヤリと笑みを浮かべ「長旅は体に(こた)えますから、ニアの筋金入りの薬草風呂を御ゆっくり堪能(たんのう)してください。ですが、体は自分でしてください。彼女らに手を出されては、困りますので......」

 

 ラインハルトは、「風呂入れるだけでも助かるよ、そんなソープ(じょう)の用な事を追及するほど、(たま)まっちゃぁいないよ。」と話したが「申し訳ないですが、男性のそれは信用できないのです。」と反論されてしまった。

 

 ラインハルトは、先に薬草風呂に入りそのまま就寝した。朝の寝覚めは、最高で下手な高級旅館(こうきゅうりょかん)よりも疲れが取れた。その理由を聞くと、使用した薬草の種類と効能を教えてもらった。

 

 「お教えいたしますね、カラフトの葉とワカナイの幹そして、マチニールの実をガナ草を使用しました。」

 

 青ざめた、いずれも劇毒(げきどく)と知られている植物を使用しているからだ。

 

 「嘘だろ!お前俺を殺す気か!」

 

 「毒殺(どくさつ)のイメージがおありの要ですが、説明させていただきますが何れも、大量に服用すれば死にます。ですが、適量配合すれば毒素はかなり減少し、熱により毒素はさらに緩和されます。」

 

 聞くと、異世界の医者から大麻(たいま)覚醒剤(かくせいざい)等の副作用や元の植物の効力など、知識を身につけた上で実行しているとの事だ。

 

 「それに、私は制毒と言うスキルを持っていますので、千里眼と合わせて使用すると、強力になります。因みに効能ですが、疲労回復と神経痛緩和と筋肉痛緩和などの、薬効があります。」

 

 「毒には毒をもって制すって奴か、」

 

 ニアは頷き朝食の準備を始めた、そして、メアも遅く来てアレノアも起きてきた。まだ夜更けなのでもう少し寝ると言って、ラインハルトは寝た。

 

 「しかし、昨夜のネーナの行動は、いったいなんだったんだ?」

 

 寝不足なのだ、というのも炎の主座たる彼は燃えない緑色の炎を出して、修練していると結界の外へ向かうネーナを見かけた。

 

 「こんな時間になんだろう......ってか結界は大丈夫なのか?」

 

 中心に行くと、(つえ)が刺さっており魔力関知をすると杖から魔力が供給されていた。

 

 「まさか、杖で吸収された状態でこの結界を維持していたのかよ!?」

 

 ビックリするが、ネーナの後を気配を消して後をつけていった。そして、結界の外へ出ると何かの呪文を行使していた。

 

 「あの術式は、七星(しちせい)の一つメラクリオンの術式か。まさか星の器だったとは。油断、出来ないな」

 

 呟き、急いで戻って寝た。

 

 ネーナと共に起きてきた、ラインハルトは一緒に朝食をとり準備を済ませた後痕跡消しの手伝いをした。

 

 「さてと!出発しましょうか!」

 

 ネーナ達五人は意気揚々(いきようよう)とキャンプ地を後にした。

5話目ですよ!飽き性の私が5話も持つとは思えませんでした。


まったりとスローペースで投稿していきますので今後も、よろしくお願いいたします。

最後にここまで読んでくださりありがとうございます。

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