仮面の飛行魔女
「カメーン王国王子と新米傭兵の小娘か、よくもまぁ疲労困憊の中アサシン共を退けたものだ。」
ゆっくりと、空中から現れた女は、片手に長い杖を持っている典型的な飛行魔女だ。
「貴様は、何者だ!|仮面の飛行魔女《ペルソナ フライングウィッチ!》」
ミモスは、近くに転がっていたナイフを三本投げて飛び上がった。続いて、ネーナが光の球を複数個展開して下級魔法を連続行使をした。
「試して見よう?星に選ばれた者とそれに差し迫る者よ。」
仮面の女は、ナイフを三本取りマントに仕込んだ無数のナイフを投げた。
魔法を帯びていたのか、ネーナが展開した光球をすべて消滅させた。さらに、地上へ闘気の波動を撃ち込んだ。
「っ!(何て気圧だ!圧だけでこれなのか!)」
「くっ!(杖無くては立てない!)」
ミモスとネーナは、達人とまでは言わないが、闘気の扱いではその辺の将軍格よりも優れている。
しかし、目の前の女はそんな二人よりも、遥か上の練度を誇る事も明らかだ。
「ふぅ~ん今のを耐えるか....」
仮面の女は、ミモスとネーナを回復させると「これで全力出せるかしら?」もっと楽しませなさいな!
仮面の女は、杖を構えて光線を放ちつつ迫るが、それ以上に速い。
「何てスピードだ!ネーナ!俺に強化魔法をかけてくれ!闘気強化をしてあいつのスピードに追いついてやる!」
「任せなさい!」
にしても何者なのあの女、体力回復だけじゃなく私の魔力まで回復させてくれるなんて!
そんな事を考えながら、瞬時に肉体強化魔法を行使したあと、複数の魔方陣を展開し光弾と光線を連続行使して移動範囲を狭めようとした。
「成る程ね、私の行動範囲を狭め一撃離脱をするミモスの援護と言うわけか......でも相手が悪かったわね。」
仮面の女は、ステッキを構えるとネーナの魔法を相殺し始めた。
「太刀筋は悪くないけどもね、まだまだね」
さらに、振り下ろされたミモスの剣を片手で受け止め握り砕き拳を地面に叩きつけて衝撃波を起こして二人を弾き飛ばした。
「くそ!あれから三年間鍛えたってのに!俺の闘気力が全く歯が立たねぇ!」
「化け物め!」
二人がフラフラと立ち上がると、後ろから三人、アレノア、パテーア、アルギスが駆けつけ加わった。
仮面の魔女を見たアレノアは、「邪教徒の者ですね。皆様私が隙を作りますので、おねがいします!」と言ってナイフを構えた。
「私を邪教徒と見抜いたか、でもそれだけじゃ私の足元にも及ばない」
仮面の魔女は、ネーナの倍である36個もの魔方陣を複数展開し、高位魔法であるルーン詠唱を始めた。
「みんな!あいつの詠唱を止めて!死の呪文よ!禁術を使うなんて!」
この世界スフィアには、禁術と呼ばれる魔法や奥義がいくつも存在している。死の呪文もその内の一つで、この呪文によって死した場合魂は冥界に向かわず永遠に肉体に縛られグールの上位グール・ジェラールとなる。
さらに、光神ラーシュの光ですら浄化出来ないほど強力な呪いを掛けるものだ。
「そっちがその気なら私も使うわ禁術を......みんな!少しでも送らせて!あの呪文は時間がかかるはずよ!一度でも詠唱を止めればその分呪文も止まるわ!」
ネーナは、杖を逆さに構え詠唱を始めた。
スフィアに置いて魔法と呪文は異なる定義にある。禁術に用いられるルーンは、外なる神がスフィアに持ち込んだと言われている。
そして、キリル文字とアルファベットを合わせた文字を使う魔法は、スフィア世界共通文字である元々この世界に存在している者と定義している。
つまり、どんなに強力な魔法であれスフィア文字を使う物は魔法になるが、ルーン文字を使う呪文は、強力かつ周囲に影響を及ぼす物が多いため使用を禁じられている。
「再生を嫌い、空へ逝くことを拒め、浄化されることを拒み、他者を受け入れず」
魔力を集中し相手の詠唱が始まったが、ネーナはまだ集中している最中だ。
「ミモス様協力をおねがいします!『雲は歩み止め、水滴は飛び散らない。タイム・ストップ』時は、私を置いて止まる!」
しかし、仮面の女は微動だにせず「地下深くへと輪廻を否定し続ける黒き太陽」なんと、詠唱を続けているのだ、アレノアはナイフを無数に投げた上に大火球の魔法を放った。
「この仮面の人何者!ミモス様!?」
ミモスは、ナイフが弾かれたと同時に駆け出し大上段から振り下ろす、先程ネーナに放ったオーラスラッシュを放つがこれも弾かれた。
これを見た、パテーアとアルギスはそれぞれ攻撃するが、強固な魔法障壁に阻まれ全て弾かれてしまったがすぐにミモスが指示を飛ばした。
「アレノアは、俺に高出力の魔法を射て!二人は、シャイニングスピアとレインアローを先に射て!」
三人は、ミモスの指示に従いそれぞれ技を放った。「上出来だ!いくぞ!ノーザン!スピリッツ!スラッシュ!」アレノアの魔法を剣で受けると、その上から闘気を剣に付与し、大きく振り下ろしながら叫んだ。
仮面の女は、使う呪文はもう少しで完成する直前だったが三人の合体技を受けて、障壁を破壊され呪文の詠唱を中断し飛び退いた。
「おのれ!無神論者共めが!死に晒せ!」
「仮面の魔女よあなたの魔力は掴んだ。『絶対的な生への拒絶と追い続ける、絶対死槍『グングニル!』」
「なっ!貴様!」
ネーナは、短い呪文を唱えると飛び上がり槍を、投てきした。
「一撃必殺の槍か......甘いわ!」
巨大な爆発が、仮面の魔女を包むが爆炎から、四つの光線がネーナの肩と脚を貫き「ガキ共、生きていられると思うなよ?」投げ返した杖がネーナを庇ったアレノアを貫いた。
「ぐっ!」
「全員、この場で殺す。」
片手には明らかにあり得ない魔力を内包した光球を作り出したが「大分頭にきてるな、お前らしくないガタノゾア」
もう一人の仮面の魔女が突然現れて、ガタノゾアと呼ばれた魔女は光球を消して、「ウィンディゴか、なにようだ。」
と返した。どうやら仲間のようだ。
「ヨグソトース様からの伝言だ、目的を下げてもいい、その地方から手を引けだとよ。」
「了解した。命拾いしたなガキ共」
捨て台詞を放ち消えた。驚異は去ったと言える。後日傷だらけのボージャ達を治療している事がイストル帝国から明かされた。ネーナ達は、当初2万ネブルだったが、カメーン王国からの恩賞も含めて当初の30倍60万ネブルもの大金を受けとると、仮面の魔女の話をG・Mに尋ねた。
「よく生きていたな、仮面の一団は邪神教徒でな、信仰する神は異界の神と言われている。名を関する奴等は幹部クラスだと言う話だ。」
「ギルドでもそれだけ?」
「奴等に遭遇して生き残る事事態あり得ないこと何だぞ、俺が知る中であんたら二人含めて、15人だ。下っ端だけでも並みの兵士長30人分だ、それも傭兵上がりのな。」
「厄介ね、まぁ簡単に遭遇しない人達でしょうね。ネーナさ....ネーナ私は、先に外へ出ています。」
アレノアは、外に出て近くの路地に入っていった。
「さすがだな、ヨグソトース様いやアレノアさん」
「クトゥグア、何がどうなってるの?教えられる範囲で教えて。」
クトゥグアと呼ばれた、仮面の男性は近くに積み上げられた木箱に座りパイプを吸いながら語り始めた。
「教えられる範囲で....か..オーライ教える。先日のウィンディゴとガタノゾアは、俺達の預かり知らぬ話だ。」
「預かり知らない話?炎の首座の貴方が知らないなんてあり得ないわよ?幹部会はどうしたの?」
仮面の男は、仮面を外してアレノアの質問を無視して話を続けた。
「実はな、新しいヨグソトースは再び外なる神を呼ぶために儀式をしているらしい、アザトース様はそれに反発しているし何なら原神教会と手を組むかもしれない。こっちはゴタゴタさ」
原神教会とは、この世界で昔から信仰されてきた神々であり、世界起源神共呼ばれている。そして、クトゥグア達とは敵対関係にある。
「だから、アザトース様は仮面を自由に外して良し。教祖への報告をしなくても良しとしているから着いていってもいいんやで?」
「あんた、キャラ変わりすぎじゃない?」
「いた!探したんだよ!」
アレノアを探していたネーナがいた、今回の依頼でどうやらCランクからBランクに格上げされたようだ。
「ごめんなさい、昔の知り合いが居ましてね。紹介しますラインハルトです。」
「ラインハルトだ、アレノアとは昔馴染みだよろしく」
ラインハルトと名乗った若者は、手を出してネーナと握手を交わした。
「ネーナと申します....アレノアさんの昔のお知り合いですか....此方こそよろしくお願い致します。」
ラインハルトという仲間が増えさらに賑やかになった。
「申し訳ございません!ヨグソトース様!まさか供物を保護していたとは、思いもよらず!」
仮面の飛行魔女ガタノゾアは、片膝を付いて頭を垂れていた。
「言い訳はそれだけか?私は逃げ帰れとは命じておらん....まぁ良い吸魂の呪文で集めた魂は、既に還元済みだ。なかなか良質な魂を持ってきたな。今回の事は帳消しにしてやる。」
「はっ!ありがとうございます!」
ガタノゾアが去り物静かになった、部屋で一人ヨグソトースと呼ばれた男は、揺り椅子に座り机の上に置いてある、古書を読んでいた。
スフィア創世録
天地冥の三神、21の光を率いて外なる神々と戦い封印せしめん。その後世界を二つに隔て天上の彼方へ追放した。
「解読できている部分だけでも、これだけか一刻も早く異界の考古学者を捉えねば。」
ヨグソトースは、そう呟くとそのまま眠りについた。
大分遅れました。
不定期スタイルでやっていきますが、今回は会社をやめたり鬱病になったりと散々な目にあっておりました。
今回も読んでくださりありがとうございます。