傭兵としての最初の仕事
ビールマに戻り、携帯食料と回復薬の調達を済ませて、ギルドへと向かった。
なぜ、ギルドに戻ってきたかと言うと、依頼をこなして報酬金を得ることだ。
ネーナの目標は、祖国再興とイストル帝国への復讐ではあるが、元貴族と言うこともあり、まだ世間知らずでもあるために、世界を見て回り祖国に足りなかった物や一般常識を身につけるための、社会勉強である。
しかし、金が無ければ帝国への反攻処か生活も出来ないので、手っ取り早く稼げる傭兵を選んだのだ。
報酬金は、傭兵ランクと依頼主が提示している報酬金に加えて、依頼主の満足度によってギルド側から、ボーナス金が支給される仕組みになっている。
例として、Eランクの傭兵が討伐依頼でゴブリン二匹の討伐で報酬金300ネブルだったが、群れを撃退した事で、依頼主から好感を得た場合、ギルド側から600ネブルつまり、報酬金の二倍を支給されランク金として、100ネブル支払われる。
このEランク傭兵は、1000ネブルを手に入れ金貨に換算すると2枚になる。
勿論得られなければ、ランク金と報酬金のみとなってしまうため、このスフィア大陸の傭兵達は、依頼以上の事を成そうと努力している。
ネーナ達二人は、ビールマを出て北に50kmにあるイシナの森で近年激増している、グリガーの討伐と調査の依頼を受けた。
グリガーとは、熊と虎を足して割った様な特徴しているが、全長5mとその獰猛な性格でCランク魔物に分類されている。
特出すべき点は、その俊敏さと嗅覚である。オーガ並みの巨体を誇りながら、騎馬兵の突撃を回避してしまう程だ。
嗅覚は、4km先の獲物の匂いを嗅ぎ付け、馬の4倍のスピードで襲いに行く。
幸い大槌や大斧を軽々と振り回す戦士や、Bランク以上の傭兵よりパワーが劣るため撃退出きるケースもある。
その、グリガー討伐と森の調査を受けた二人は準備を整え、傭兵ギルド所有の馬に乗って、イシナの森へと向かった。
「ネーナ様、なぜ馬を二頭も連れていくのですか?一頭で十分だと思いますが......」
アレノアは、ネーナに馬を乗馬する他にもう一頭連れて行くことを聞いた。
当然の疑問だし、馬を余計に連れて行くのは維持費がかかる。
ネーナ達の所持金20万ネブルも、クエスト準備費で1万7千ネブル、ギルド所有最速の馬パカッド四頭の購入で15万ネブルを使った。
それだけの対価に見合った報酬を得られるとも思えないと思ったため聞いた。
「アレノアさん、この世界には異界人と呼ばれる人々が度々現れることは、知っていますわよね?」
「それは、はい存じ上げております。実際祖国では、異界人の知識を借りて発展しておりました。」
そう、このスフィア大陸が存在する世界にも異世界人が存在する。
しかし、その多くは迫害等の差別的扱いを受ける事が多い。
しかし、ネーナ達の祖国ザンツワーグやプロヴィデンス王国のように、職人気質の強い王国や国では重宝され、スフィア国際規定により、急速な発展を行った場合カンブリアよる進撃を行うと言う物がある。
また、魔王がその力を全世界に行使する場合は、各国が勇者を募り討伐すると言う形をとり、大陸のバランスを保っている。
イストル帝国は、明らかにその国際条約を破っている。
証拠に、帝国の使用する兵装は見馴れな物であり、戦闘方法も従来と異なる上に速すぎるのだ。
大陸最強のカンブリアの長である魔王プレウラですら、スフィア大陸の王族達に「異界人の知識を使ってでも、イストル帝国の快進撃を止めろ!」と直々に厳命が下される程だ。
差別を強めている国が進展した場合のみ異界人の知識を使い発展させることにしているが、建築等には抵触していないため、協力を求める国もある。
ザンツワーグ王国の最大の防御力を誇っていたハイデンベルク城の増築にも彼等の知識を用いていた。
「私の教育担当をしていた先生が、異界人でしてね。その方が、とある国の進軍方法に、一人で何頭も馬を率いて大軍を驚異的な速度で動かしていたって、聞いた事があったから、それを実行しただけですわ。」
「それって!イストル帝国の!」
アレノアがハッとした顔で話そうとしたが、ネーナは「そう更に、鉄の筒も連れ回して乱発していたし、隊列を組んだドラゴンライダー隊間違いなく異界人の知識を使っているわね。」
ハイデンベルク落城時に、ドラゴンライダー大編隊が空から火薬壺と爆発魔法を組み合わせた物を落とされ続けたために、二週間で攻略されてしまったのだ。
「ドラゴンライダーの大編隊のあの攻撃方法は、この世界では早すぎるのよ、イストル帝国はいずれ、魔王領カンブリアと衝突するし、西方の最大の国ガラーパ合衆国とも一戦やるでしょう。その時がチャンスです。その時までに力を蓄えます。」
長々と話しているとあっという間に、イシナの森に着いた。通常の馬であれば半日かかるのだが、流石は、スフィア最速の馬3時間ちょっとで到着した。
「替えの馬は必要なかったわね、良いわ、帰りに必要になると思いますから。」
イシナの森、異世界にあるスフィア大陸の南方にある大規模な森林地帯。
カルーゴ協商国と北の隣国である、ヒット教国の国境となっており、そのヒット教国は現在ルードル海の派遣をイストル帝国と争っている。
ヒット教国は、その名前のとおり三神を強く信仰する国家であり、ベル=カーディフ二重王国に続く海軍強国だ。
以前は、ジベーラ海峡近海で二重王国海軍と交戦を繰り返していたが、イストル帝国台頭とガラーパ合衆国の仲裁により、帝国の南方進出を阻むため、ルードル海に軍を派遣しているが、圧されているらしい。
噂では、イストル海軍の船は非常に硬く堅牢で黒い煙を上げ、二門しかない大砲はヒット海軍の軍船を一撃で四隻も粉砕するらしい。
ヒット教国は、異界人の力を借りている国の一つだったことが功をそうした。
教国もドラゴンライダー隊を有していたのだ。
イストル帝国の翼竜より、飛行距離が長く柔軟な飛行を得意とする翼竜ファラオと魔法使いの組み合わせで、ルードル海の空を支配している。
その為、海上で圧されていても空からの攻撃で拮抗状態を保ち続けている。
イシナ森を二人は、奥へと進んでいくが、依頼にあったとおりグリガーばかり襲いかかってくる。
「以前は、こうではなくグリガーは、むしろひっそりしていたらしいわ。この森では、中間層の獣の様ね。」
そうなのだ、以前はグリガーはここまで獰猛ではなく、威嚇ばかりして逃げていく物が多かったが、ここ二~三年で急速に増えて凶暴化していったらしい。
「まさか!ヒット教国がファラオ翼竜を!?」
アレノアは、思ったことを口にしたがネーナは、真っ向から否定した。
「いいえ、あの国のドラゴンライダー隊は十五年前に発足しているし、国内にいくつもの飼育施設を作って一から育てているの、だからそんな事をする筈は、無いのよ。上級魔法の光弾も避ける俊敏性よ、ファラオの装備する竜の鎧は、翼が刃になってるから、乗手を倒すことに特化してしましたしかなり堅牢でしたわ。」
「そう言えば、異界人の何人かはアーマードファラオを、オスカーやハヤブサと呼んでいましたわね。」
そんな事を話していると前方から話し声が聞こえてきたので、声の正体を確かめるべく二人は、気配を消して近づいていった。
「おいっ!ここにもいないのか!?」
「もう狩り尽くしたんじゃね?」
「ふふっ......此れで、奴らが負ければ我が国は安泰だ....」
数人の兵隊達が居たが、一際目立つ鎧をまとう青年にネーナは見覚えがあった。
「あの方は、ヒット教国の南西部にあるカメーン王国の王子ですわ。何故こんなところに....」
ネーナは、ハンドシグナルでアレノアに木上からの監視を指示し、静観し続けた。すると、一人の兵士が「王子!居ました!ボージャです!」と報告すると「よし!全隊続け!ボージャを殲滅し、イストル帝国とともにヒットを滅ぼす!行くぞ!」
ボージャとは、ここイシナの森の頂点に立つ魔物で、賢狼と名高いフェンリルと同格の強さを誇る。
その見た目は、少し大きい猫と変わりないが、俊敏性と鋭い牙と爪から繰り出される一撃は、重装戦車を軽くあしらう。
過去に、カルーゴ協商国の重装戦車30騎で構成された軍を派遣し、ルードル海沿岸に向かっている最中、ボージャ二匹に襲撃され壊滅させられた。
「なんて事を、アレノア!奴らを血祭りに上げますわよ!」
「(まただ、普段血祭りナンテ使わないのに。)はっ!」
改めて、ネーナとアレノアの受けた依頼内容を確認して見ようか。
Cランク以上の傭兵のみ受注可
報酬金6000ネブル
依頼内容
ここ近年増え続けている、グリガーの狩猟及び原因調査
追加報酬
原因解明及び解決した場合15000ネブルの上乗せ。
つまりは、眼前のカメーン王国が首謀して、ボージャ狩りをして急速に数を減らしていたことを報告しそれが原因でグリガーが急増している。
「カメーン王国王子ミモスは、この森のボージャを狩り尽くして、イストル帝国と対等に同盟を結ぶつもりなのでしょうけど、あの容赦の無い侵略果たしてどうなるのかしらね。そして、ネーナ貴女は、どう動くのかしら観察させていただ来ますよ。」
イシナの森の遥か上空から、見下ろすプロテクターを纏う黒髪が美しい女性はそう呟き「やれやれ、飛行魔女と侮ると痛い目を見舞わすわよ、龍騎兵の皆様?」
「あぁぁ?今時飛行魔女は、流行らねぇんだよ!ガキ!イストル帝国龍騎兵隊の恐ろしさを......」
「うるさい蝿がうじゃうじゃと。」
イストル帝国の龍騎兵達は、眼前に佇む20代位の女性を囲み、マスケット銃を乱発した。
しかし、眼前の女には届かず、張られたシールドに弾かれてしまっている。普通の魔法障壁では、防ぎきれず貫通し負傷させる威力を持つマスケット銃だが、貫通どころか食い込むことすらしない程目の前の女の張るシールドは、強硬なのだ。
「我が、眼前から失せよ愚か者!」
魔力で衝撃波を放ち銃弾を跳ね返すと、手を掲げ握りこぶしを作った。
「はっ!そんなハッタ......」
女の回りを囲うように飛行していた、ライダー数騎は、シャボン玉が割れる様に破裂して、見るも無惨な姿へと変え急いで長銃身のアタッチメントを取り付けて距離を取りつつ放ち続けるが効かない。
「なら!これでどうだ!」
「へぇ....味な真似をするわね、太陽を背に斬りかかれば、不意を付くことも出来る上目眩ましも出来ます。現状魔法剣の方がこの障壁破りには適しているからね。」
太陽を背にして襲ってきた敵兵を背に、女は呟くとローブの袖からダガーを取り出し「ですが....相手が悪すぎましたね。」呟き闘気で刃を伸ばして大上段から振り下ろされている最中に、手首を切り落とし杖で刀身を弾き飛ばした。
「なっ....なんだと!?俺は元Aランクアサシンなんだぞ!その不意打ちに気づくなんて!」
「あら、優秀ね貴方痛覚遮断も持ち合わせいるなんてね。ひょっとしてこの隊の隊長さん?」
並みの兵士では、Aランクアサシンの不意打ちに対応は出来ない。しかし、眼前の女はカウンターと言う形で反撃して見せた。
「御荷物を抱えて、私の前からとっとと消え失せなさい!愚か者共!」
一瞬で女は、後ろに回り込みかかと落としを繰り出した、更に杖先から魔法光線を飛行魔法を行使しながら乱射し始め、手に終えない事を思い知らされたイストル帝国の龍騎兵隊は、即座に逃走した。
「隊長ぉぉぉ!」
たった一人残った兵士は、落下する隊長をうまくドラゴンに乗せて、イシナの森の少し開けた場所へと降りた。
「はぁ....ああ言うの私ほっとけないのよね。任務は果たしているし、良いかしらね。」
女も龍騎兵を追ってイシナの森に降りた。
上空でそんな戦闘が起こっている事をよそに、ネーナ達は王子達と戦闘開始していた。
「ミモスさん!許しませんわ!」
「貴様!王子をさん付けだと!?無礼者!」
「アレノアさんは、周囲の兵士達をお願いします。私は、一騎討ちを申し込みますわ!ミモスさん!」
「はっ!」
きらびやかな鎧を身につけた、青年ミモス・レイダー・カメーンは、剣を抜き放ち「承ろう、元王族とは言え俺の目標の一人だ。武道大会の借りを変えさせてもらう!」
「では、此度の非道の理由を聴かせていただきましょう!」
二人の一騎討ちが始まろうとしていた時、複数のネーナは感じ取ったがミモス王子の実力は以前より遥かに増していて、それに構う余裕が無くなっていた。
まだまだ、文面や描写が未熟ですがよろしくおねがいします。