その9
「煙が上がっている。あそこが村かな。」
予想より早く着いた。
「あの、ここがオスカラ村?」
「そうだが、何か用か?」
「魔物退治に来た冒険者です。」
「ふむ。そうでしたか。族長はあちらです。どうぞ。」
村に入り辺りを見渡す。おおう、獣人率高いな。獣人の方の村でしたか。
「奴らが現れ始めたのは3ヶ月ほど前で、最初は家畜や農作物が荒らされるようになりました・・・。」
族長さんが語り始めた。
家畜や農作物の被害がでたので、このままでは・・・ということで、村の若い連中を引き連れてゴブリン討伐へ向かった。
討伐は成功で多くを倒すことができた。例年通りならば、これで収まるはずだった。しかし、今回は違ったらしい。
どうやら魔物の数が多いようで、倒したのはごく一部だった。ならばたくさん倒せばいいと意気込んだ。ゴブリンなど幾ら出てこようが物の数ではない。
それは最初だけだった。なぜならば魔物の群れには上位種が混じっていたからだ。
遠距離攻撃のゴブリンアーチャー、魔法を使うゴブリンメイジ、大きな個体のジャイアントゴブリンなど。
これらを相手にする事は容易でなく、すでに人的被害が出てしまっていた。
このままでは、村を捨てるしか手はないと。
「そ、それで、他の冒険者の方はいつ到着になるので?」
「ここにいますけど?」
「へ?他には?」
「いえ、他の冒険者は居ないですけど。」
「え?お1人で?」
「そうだけど・・・。」
そうだよね。もっと多勢で歴戦の猛者が来てくれると期待してたところに、小娘が1人だもんね。
他の人達もがっかりしている。
「今から援軍を呼ぶとなると往復で10日程かかってしまいますが・・・。」
「そんな悠長な・・・。いつ魔物共の総攻撃が来るかわかりませんのですぞ。」
「あちらの数は?」
「少なく見積もって30以上。」
「ちなみにこちらの数は?」
「動員できるのは十数名。その他は女子供になります・・・。」
「どっちかとえば、俺も女子供の部類なんだけど。」
「って、ちょっと、行かないで下さい・・・。」
魔物20くらいって聞いてたんですが。上位種が居るだなんて聞いてないし。
ともあれ、依頼は依頼。受けてしまった以上、しっかりとこなすのだ。
村の周りの地形や防護柵の状況を見て回る。防護柵は所々傷んではいるが補修されてるようだ。
村の周りは開墾が進んでおり障害物の少なく平地が開けている。しかし戦いのためか踏み荒らされた状態で作物は育っていない。ふむ。その先の森から魔物が来るのだろう。
すぐそばに小川も流れていてる。村の水源だ。
なるほどね・・・。
うん。地形を調べて何かいいアイデアがあると思った?
残念ながらこの地形を目にしても何も浮かばないのだ。
これは才能が無いから・・・?
夕食は族長さん宅に呼ばれた。
族長と息子さんとその奥さんそれに娘さんが1人。
「大したものは出せませんが、ささ、召し上がって下され。」
「えーん、今日も野菜のスープなの。お肉が食べたいよー。」
「すまんな。魔物のせいで・・・。」
そんなこんなの会話の中、自分だけ客人扱いのためかご飯大盛りであった。この状況でそんな話をされると、めっちゃ食べ辛いんだけど・・・。
「良かったら食べる?こんなにたくさん食べきれないから。」
「いいの?おねえちゃんありがとう。」
うんうん。子供は食べて大きくならないとね。
チラリ。髪の毛の毛並みと耳が特徴的なので獣人なのはわかる。失礼かと思って種族は尋ねていないが女性の胸が大きな種族だ。草食動物系・・・?
別に・・・。たくさん食べて大きくなろうと思ってないから。