その5
さて夜の見張りの順番が回ってきた。
周囲を警戒しつつ、いつものように管理画面をさわっている。
あれ?パーティー登録ができるぞ。3人をパーティーに登録する。
ん?未読メールがある。
「クエスト「パーティーを組む」が達成されました。ストレージに景品が送られました。」
「!!」
クエストがあるの!?
さらに驚いたことに景品を開けると課金ポイント500だった。
「!!」
ちょっと、課金ポイント貰えるの!?思わず声を上げそうになった。みんな寝てる最中だよ。
色々変わってくるんだけど。何に使うか思案のしどころだ。
経験値アップ、ドロップ率アップ、合成成功率アップ・・・。
まずは定番系からだよね。アクセサリーの装備個数アップ。その名の通り装備個数が増える。期限はなく永続的だ。
うん。装備枠が1つ解放された。これを装備してっと。
おっと、火が消えそう。熱中し過ぎて仕事を忘れていた。
砂時計も落ち切ってるじゃん。
「ロイドさん・・・」
「ん?んあ・・・レインか。」
「交代の時間です。」
「わかった。何か異常は?」
「何もかったです。」
こちらはそれどころじゃ無くて、見張りしてなかったなんて言えない・・・。うん、何事もなければそれでいいのだ。
「あと、よろしくお願いします。」
そう言うと、マップを開いたままにして眠りについた。
「ん・・・。」
「あら、目覚めさせちゃったようね。」
「おはようございます。」
「おはよう。」
朝食を食べ終わると森へ進む。
「前方に何かいるようです。数は2。」
マップの索敵範囲はおよそ30mほど。視認するまで何かまでは分からない。
「止まれ。俺が確認してくる。そこで待機しててくれ。」
「ゴブリンが2だった。このままやり過ごしてもいいが、出来るだけ間引きしておきたい。囲まれる可能性があるからな。やるぞ。」
「わたしとレインちゃんで先制して、その後は近接戦でいいかしら?」
「おう。」
「行くわよ。」
ユーリさんが弓で射掛けると同時にサンダーを放った。
弓は命中したが倒しきれない。魔法が当たった方は動かない。
向かってきたところをロイドさんが剣で倒してくれた。
「レインちゃんの魔法ってすごい威力ね。」
「いえいえ、ロイドさん、ユーリさんの方が凄いです。」
「あの、ゴブリンの素材はどうするんですか?」
「ん?ゴブリンの素材って角や牙か?」
「うん。」
「今回は時間も無いしそのままだ。」
肉は食用にならないそうで、取れる素材も精々角や牙で価値も低いとのこと。
そんなこんなで森の中を進み続けた。本日も野営の時間である。
夕食を終えていつもの様に交代で見張りしながら休んでいたときである。
それは深夜。
「みんな起きて!」
「どうした!?」
「ワイルドベアーよ。」
黒く大きな塊の様な物体が猛スピードで迫ってくる。
「は、はやい!」
とっさに剣で応戦したが大きな腕を振られて吹き飛ばされる。
いってー。
それは衝撃。この世界に来てはじめてまともなダメージを負った感覚。ダメージ軽減装備をしているが軽減量を超えてダメージを与えられたのである。
急いで立ち上がろうとした矢先、
「レインちゃん危ない。」
ユーリさんがこちらに向かってくるのが分かった。そのまま抱き寄せられるのと同時に、2人とも吹き飛ばされた。今度は痛くない。
「大丈夫か!!お前の相手は俺だ。」
「うう・・・。」
2人絡まるような状態で倒れてた。そしてユーリさんが痛そうな声を上げている。
暗くて細部はまでは分からないが、爪で切り裂かれたようで動けない程の傷だ。致命傷であるのはわかる。
「いま回復魔法かけますから。ライトヒール。」
・・・少し傷が小さくなった気がする。
「ライトヒール。」
「ライトヒール!!」
いつもより多くの魔力を込める。効果が高まるのかは不明であるがそれが俺の気持ちだ。
その甲斐あってか、出血も収まり応急処置としては十分だろう。だが、すぐには動けそうにない。
ふと目を向けるとロイドさんが剣で応戦していた。
「アレフさん、ユーリさんの事お願いします。ロイドさんの援護に向かいます。」
「承知した。」
ロイドさんとクマの距離が離れたタイミングでサンダーを放つ。魔法を放つ度、こちらを狙ってくるがロイドさんがうまく牽制してくれている。
かれこれ3発ほど当てているがなかなか倒れてくれない。
ロイドさんも何回かいい攻撃を当てているが、あのクマ、腕で斬撃をガードしてるんだよ。ダメージが通ってなさそうなのである。どんだけ硬いんだ・・・。
「くっ、しまった。」
剣が折れてしまったのだ。
「ロイドさん、これを使って。」
そう言って腰につけていた剣を投げつけた。
クマもチャンスと見てか攻勢を仕掛ける。
剣を受け取ると素早く鞘を抜き上段から切りつける。
クマもその攻撃は効かないと言わんばかりに腕でガード。しかし今回は違った。クマの腕に剣が通る。
怯んだ隙に胴体への攻撃。そこへサンダーを当てる。
クマは倒れ込み動きを止めた。
「倒したのか・・・?」
「かも。一応とどめ。サンダー。」
・・・。
「倒したみたい。」
「ユーリ!大丈夫か!?」
「大丈夫よ。レインちゃんが治してくれたみたい。」
「そうか、よかった・・・。今はゆっくり休め。」
「この分だと大丈夫そうですな。命の心配はいりますまい。」
「ありがとな。」
「レイン・・・。俺にも回復を頼む。」
ありゃ、忘れてた。
「ライトヒール。」
そういえば、回復の指輪なんでのがあったな。ユーリさんに付けておこう。多少なり効果があるんではなかろうか。傷が残ったら大変だし。そう思って装備させた。