その20
「簡単に教えられないスキルなのは分かるが、どうしても教えてもらいたいのだ。この通りだ。頼む。」
そんなに懇願されても・・・。
「いえいえ、お顔を上げてください。」
「それでは!」
いえいえいえ!
押し負けた訳じゃなくて。
魔法の詠唱の仕組みについてどうしても諦められないらしい。
これ、絶対に教えれるものじゃないよね。
「やっぱり、教えれなさそうです・・・。」
「そ、そうか・・・。」
「今日はとても助かった。レインは冒険者をしているんだったか?」
「はい。」
「そうか、私も昔は冒険者をしてた事があってな・・・。」
「なんでこんなところに一人で?」
「わたしの生まれたエルフの里は平和であったが鎖国的でな。出入りが禁止されていたのだ。わたしは他の者とは考えが違って里の外の事を学びたいと思ったのだ。」
「うんうん。」
「一生、里から出ずに暮らさなければならない。その掟がどうしてもイヤで、とうとう里から飛び出してしまったのだ。あれから色々な事があったが・・・今はここでのんびり暮らしている。」
「では、そろそろ行きますので、ありがとう御座いました。」
って、何でついてくるんだろう・・・。
移動スピードを上げる。
うん。このスピードでついてくるという事は目的地が同じとかじゃないね。
「何であとつけてくるの?」
「うむ、魔法の詠唱の秘密を学ぼうと思ってな。」
「教える事できないです。」
「分かっている。だから見て学ぶ事にしたのだ。拒否しても無駄だぞ。あくまで勝手に付いて行く。それに長い事、家に籠りきりでな。そろそろ外へ出ようと思っていたのだ。」
困ったな・・・。
わざわざ危険な場所へ向かうと思うよ。
ついて来られて怪我されても困るし、ソロの方が何かとやり易い。
「こちらはソロがいいの。パーティーはちょっと・・・。」
「こう言っては何だが結構役に立つと思うぞ。」
「・・・。」
これはあれだね。ついてくる気満々。
そう思い移動スキルを使った。
「あ、こら待て。」
かれこれ4時間程だろうか。全力ではないが、木々の中を結構な速さで進んでいる。
なんでついて来れるの。もしかして、あの人、レベル高い?
立ち止まる。
「急にスピードを上げるからびっくりしたぞ。」
「あはは・・・。」
セフィとの出会いは100%偶然だ。
さすがに山奥のあの家を訪れると分かって待ち受けていた何てことはありえないだろう。何らかの目的があって計画的に近づいてきた可能性は極めて低い。それに危険人物ではなさそうだ。
これはもう仕方ないかな・・・。
「わかりました。」
「おお!」
「はい。ただし、こちらも色々あるので目にした事、聞いた事は内密にお願いしますね。」
「任せろ。これでも口の堅さに自信があってな。」
「あと、危険な事も多いので無理はしないで下さい。むしろ進んで危険な場所に行く感じなので・・・。」
「うむ。それは望むところだ。いいなこの感じ。ワクワクするぞ。」
「・・・。」
では、さっそくパーティー登録しちゃおう。
以前、パーティーの説明をしたと思う。パーティー内では補助スキルや魔法の恩恵を受けてられ強化される等・・・。その他は経験値の分割もあるのだろう。パーティーを組むといきなりの敵対行動は取れなくなる。
ゲームでは、フリーエリア(町などが該当)と呼ばれるエリアに移動して敵対しなければならなかった。よって一緒に魔物と戦ってる最中にPK等が不可。このシステムがこの世界でどの様な形になっているかは不明だが何らかの効力があると予想される。
「ん?それは何なのだ?」
「あ、これ、スキルです。主に、地図と探知の一体化したようなスキルと、アイテムの収納スキルです。」
いちいち隠して、こそこそスキルを使うとなると、それは制限されてしまうのと一緒だ。もう隠さずに使用する。
「ほうほう、それは便利だな。このマジックバックと同じだな。」
「そんな感じ。」
ドヤ顔がかわいいし・・・。
あまりにも関心なく答えてしまった。空気読める子なので言い直しますよ。
「マジックバックいいな~。」
「で、あろう。実はこれかなりの性能でな。結構、価値のある物なのだ。」
「いつか手に入れたいな。」
「むふふ。これはやらんぞ。」
ニンマリしてる。作戦成功・・・?
少しの間であるが一緒に行動をして分かったことがある。それはセフィの戦闘スタイルだ。
遠距離から魔法や弓を使う。遠距離タイプかと思いきや近距離では剣も使える。同じタイプだね。魔法は風系で弓に風の魔法を纏わせる事で命中精度、射程、威力を上げているそうだ。
「セフィはお料理できるの?」
「できるぞ。」
おお!それは助かります。
「じゃあ、今度お願いしようかな。」
「任せておけ。」
「そろそろ食事にしましょうか。」
「早速、出番というわけだな。」
「いえ・・・。」
串焼きと・・・スープとパンでいいかな。そう思ってストレージから取り出す。
「はい、どうぞ、セフィの分。」
「ありがとう。ん?湯気が立っているのだが・・・?」
「冷めない内に食べてね。まだ、食べたかったら言って。」
「うん、美味い。」
でしょ!何せ町で見かけた美味い食べ物が作り立てホヤホヤの状態なのだから。
「作り立てだから。」
「作り立てとは・・・?」
「作り立てホヤホヤの状態で保存したって意味。」
「ぶっ!」
あらまあ、お行儀悪いですよ。
「まさか、時間を止めたまま保存出来るのか?」
「そうだけど。」
「という事は、調合に使う薬草や魔法薬なども保存できるのか?」
「出来ると思う。」
「!!」
驚いた後、ブツブツと独り言いってると思えば、何やら思案しているような様子だ。
日持ちしない物を預けたいが、まだ出会って間もないし・・・。。そんな事を考えてるんだと思うけど。
食べ物が冷めちゃいますよ。作り立てが美味しいのだから。
何日か行動を共にして問題が出てきた。
1つは睡眠時間の差だ。
普通は1日8時間ほど体を休める必要がある。疲労回復装備のおかげで4時間程の睡眠で残り20時間を活動に使うことができたのだが、セフィに合わせると20時間も使えなくなってしまう。
疲労回復装備を渡すべきか?
これは渡して構わないとしてフィールド効果無効の装備は軽々しく渡せない。ゲーム内で非常に価値の高いアイテムの1つで、作成するとなるとかなり大変。まあ・・・誰もが持ってたけれど。
また、1つ問題が出てくる。怪我してもらいたくない・・・。
別れる時に返してもらおう・・・。
回復の指輪とスタミナリングかな。
この2つの効果を合わせたタフネスリングがあるが、こちらは装備枠1つ済む。
この2つを合わせても価値は数倍。
「おかわり。」
「どうぞ。」
けっこう食べる人なのかな?
「そんなに食べると太りますよ。」
「うむ、大丈夫だ。昔から食べても太らない体質なのでな。」
「そうなんですね。」
ん?
それって、ある意味、タチが悪いんじゃないのか・・・?
裏を返せば幾ら食べても問題ないって事なんじゃ。
こっちは経済的にゆとり無いのだけれど。
「最後にこれを飲んで閉めだな。レインもどうだ?体にいいぞ。」
「い、頂きます。」
薬だと思って一気に飲み干した。
「これ渡しておきます。」
「それは・・・、指輪とブレスレットか?」
「はい。体力回復と疲労回復効果が付与されたマジックアイテムです。」
「!!」
「なぜ、これをわたしに?」
「えーと、睡眠時間が勿体無くて・・・。これを付けると少ない時間で疲れが取れます。」
「そんな便利なアイテムがあるのだな。有りがたく受け取っておくぞ。」
「別行動する事になったら返して下さいね。」
「似合うか?」
似合うかって言われても、指と腕に輪っかはめただけでしょうが。
「と、とても似合ってますよ。」
「♪」




