その15
にゃん先生指定の山のふもとまで進んだ。
「この辺りでやってみるにゃ。」
山が崩れたときに出来たと思われる、大きな岩や、その破片らしき岩が散在している。
これが鉄鉱石・・・?
素人目にはその辺で見かける岩にしか見えないんですけど。
付近にあった岩の破片を魔高炉に入れて動かした。
入れた岩の破片が鉄と不純物に分離されて出てくる。
「もっと入れるのにゃ。」
「それを冷ませば完成にゃ。」
「おお。」
「低品質な鉄にゃ。この辺りは鉄の含有量もそこそこあるみたいにゃ。」
そうか、なるほど。
ゲーム内では魔高炉に鉱石を入れて金属を取り出して武具を作る。これが一般的な流れだ。
強力な武具を作成する為には、オリハルコンやミスリルなどの貴重金属を素材にするが武具に仕上げるまでの工程が厄介であった。
例えば、ミスリル原石からミスリルを作成しようとする。
低性能な魔高炉でミスリルを作成すると、低品質なミスリルが出来上がる。そして低品質なミスリルでは強力な武具は作成できない。対して高性能な魔高炉を使えば、良質なミスリルを作る事ができ強力な武具が作成可能だ。
しかし、ここでは低品質な鉱石を素材にして低品質な鉄を取り出す。これで完結しているのだ。低品質な鉄を売ればいいのだから。元々、鉱脈を探す必要は無かったのである。
「族長さん、これ売り物になりますかね?」
「そこら辺の石から鉄を取り出す技術など・・・。これはとんでもない事ですぞ!」
売れそうですね。
「さすがは、にゃん先生です。」
「うふふ、今回は特別に撫でさせてあげるのにゃ。」
そういってゴロゴロとすり寄ってきた。
鉄の販売でなんとか冬を越せそうで一安心ある。魔物の脅威は無くなったけれど、餓死者がでちゃっただなんて後味が悪いからね。
これから鉄の生産から販売先を探したり輸送方法などやる事はあって大変だろうけど。
その辺りは、族長さんとにゃん先生に任せて、アルトライトの冒険者ギルドにクエスト達成の報告に向かった。
往復の移動に時間がかかるし、しばらく滞在する予定である。
滞在するに当たって一番の問題点は宿泊費だ。
だが、この問題も解決済みである。
路上で寝ればいい。
町から出れば野宿生活なんだからもう慣れました。
そして、現在は野宿の進化系になっている。それはハンモック。
釣床と呼ばれる寝具の1つで、布を木に取り付けて、その布の上で寝る。中々に快適である上に、大きな木の上ならば襲われる心配も少ないのだ。
町に大きな木があれば積極的に使っていきたいものである。
クエスト達成の報告完了っと。
「取りあえず買い物かな。」
市場では肉や野菜などはもちろんの事、日本では目にする事のなかった珍しい食材を手に入れる事ができる。当たりはずれもあるが。
「おじちゃん、これ何?」
「いらっしゃい。これはな、希少な鹿肉を焼いて特製タレで味付けしたものだ。1本で銅貨1枚だ。」
「1本、下さい。」
「お、おいしい。」
「だろ?」
「20本下さい。」
「え?そんなに気に入ったのか?ちょっと待ってろ。すぐに作るから。」
作っている合間に、1本食べてしまった。
お金を渡して商品を受け取ると、それをストレージに入れる。こうすれば何時でも焼き立てを味わえるのだ。
そんなこんなでぶらぶら食べ歩きして気に入った物をストレージに入れる。