その11
村人達を役割ごとに幾つかのグループに分かれてもらった。
木材調達、武器生産、防護柵の強化、訓練、炊事。その道に詳しい人にリーダーになってもらう。
炊事グループに村人全員分の食事を作ってもらうよ。
ともあれ、まずは木材調達が最優先だ。材料が無いのである。木材調達グループに加わって出かけた。
うむ。さすがプラントキラーだ・・・。紙を切るようには切れないが数合で木を倒す事ができる。
切ったらストレージへ収納。
「おーい。倒れるぞー。」
「それにしても、そのスキルは便利ですな。」
「そ、そうですね。みんなには、ひ、秘密にお願いしますね。」
何本切り倒したのだろうか、結構、集まって来たので村に戻って切ってきた木を取り出す。
「では、木の加工をお願いしますね。」
さて、各グループのリーダーに集まっていただいた。
「本日の進捗の報告をお願いします。」
「えーと、木材調達の方から。順調で明日には必要数に達するかと。」
「おお!」
「次は武器生産。」
「あの、あの木材では品質の良い武器は作れません。切ったばかりの生木です。強度が無い上に乾いたら割れてしまいます。それに弓に適した弾力のある木で無いと弓は作れません。低品質の木刀、棍棒、木の盾ならば作れます。」
そ、そうなの・・・。棍棒、木の盾・・・。
弓は是非とも欲しい。主婦の方々でも射掛けることは出来るのだ。
「その弓に適した木とやらはどの辺りに生えているのですか?」
「この辺りにはございませぬ。それに良い弓を作るには、色々な植物から抽出した薬を染み込ませて弾力としなりを出すのです。すぐには作れません。硬い木を使う方法もありますが、その分、弾力としなりを出すための加工は困難でしょうな。」
そ、そうだったのね。は、恥ずかしい。こっちは大真面目だから。
なんというか、世間知らずのお嬢様のようだ。今ならこう言えるだろう。
「知ってたわよ。貴方達がきちんとやれてるかどうか試したのよ。まあ、それなりに詳しいようね。」
い、言ってしまった。
「で、では、短時間で作成可能で効果的な武器は何でしょうか?」
「槍なんて如何ですかな?」
「槍?」
「はい。ただし、遠距離から突き刺したら離脱する使い捨てを目的とします。当面の脅威はジャイアントゴブリンです。あれへの対策と思って頂ければ。」
なるほど。
「じゃあ、それでお願いします。」
「次は防護柵の強化。」
「届いた木材加工中です。それと木材の移動を手伝って頂けると助かります。」
「わかった。木材調達が終わったらそちらに加わりますね。」
「訓練の方は?」
「素振りや対戦をしておりますが、やはり年齢や体格的なところもありますが基礎体力が足りませぬ。それと性格面で戦いに向かない者達も見受けられます。若い者が木材調達の方へ回ってますので致し方ないと思っていますが・・・。」
ですかー。
「ちなみに、どれくらい訓練したら戦えるようになりますか?」
「うーん。そうですな・・・。まずは戦う気構えにさせなくてはなりません。そのためには体を極限状態に追い詰めて精神的な甘えを取り除かなければなりません。明日から走り込み3時間、素振り1万回やらせてみますかの?」
おおう。それは良い訓練になりそうだ・・・。
「あまり無理させないで。訓練についてこれる人だけ選別する感じで。」
「じゃあ、最後に炊事。」
「頂いた素材は余すことなく使いました。ええ、それはもう骨も無駄にせず出汁をとって・・・。明日は他の料理も作ってみたいと思います。」
「ありがとうございます。とても美味しかったです。」
「あの、1つお願いが。」
「なんでしょう。」
「保存食を作りたいので、幾らか食材を分けていただけると助かります。」
「わかりました。」
その後も意見等を交わしながら夕食を食べた。
精神的な甘えか・・・。
実のところ自分に向かって言われてるような気がしてドキッとした。
戦える戦力はあるほどいいと浅はかな考えで訓練と言い出したのだ。訓練の行きつく先は武器を持って戦う事である。それは倒すか倒されるかの世界。結果が伴わなくても努力したから良かったねで済む領域ではないのだ。もちろん誰かが亡くなったとしても責任は取れない。
「今なら引き返せるか・・・。このアイテムの効果なのかな・・・。」
そっと装備に目をやる。




