腕輪を作る
契約内容などの細かい話はあとにすることにして、というよりもイチリが「私、そういうの良い。お金とか興味ないし、ケイの好きにしていい。それよりも早く魔道具造って」と言い放ったことにより、魔道具作成を先にすることになった。
恐らくだが、そのあとに契約の話をすることはなさそうだが……
「まずは、一時的に魔力を蓄えておくことができる魔道具を作るよ。」
「魔力を蓄える?
剣が吸収するのに、魔力を蓄える必要があるの?」
「ある。剣に流れる魔力を一時的に蓄えて、吸収スピードに合わせて放出する。そんなダムみたい魔道具が必要だ。
イチリの剣は、吸収する魔力を全部自分のものに変換しきれていない。変換待ちの魔力を常にロストしてしまってい「はーい。わかった。じゃあ、それを作ってください。」
僕の話をさえぎってイチリは元気よく手を上げた。理解することを諦めてしまったようだ。まぁ、実際に使ってもらえば効果はわかるだろう。魔力の吸収効率が劇的に変わるはずだ。
「じゃあ、作るから。結構時間かかると思うけど、どうする?」
「うーん、見とく。そういえば、魔道具造るの何て初めて見るから。いい?」
「了解。でも作業中は集中するから話しかけないでね。」
「はーい。わかったぁ。」
そんなやり取りの後、僕は設計台の前に座り、工具を準備する。
さて、まずは設計図だが……必要ないか。腕輪サイズだし、循環は僕の得意分野だ。イチリも急いているし、完成後に図示することにしよう。
早速魔道具形成からだ。
魔道具の形は腕輪型にする。
まずは魔力伝導率のいい魔鉄の塊を、形状変化の魔工具を用いながら腕輪型に整える。無骨な鉄の腕輪になったが、魔力量の関係であまり細かい細工はできないから仕方ない。
つぎに、粉末にした魔石を刻印筆へと注ぎ、魔導式を書き連ねていく。
刻印筆とは、魔石の粉末をインク代わりにして、魔導式を刻印する魔道具である。この刻印筆等で対象に魔導式を刻み、魔道具とすることを俗に回路を組むという。
魔道具に刻まれる魔導式は、魔力が循環する道となる。魔力が刻印を道として循環することにより、魔導式に記された効果を発揮する。これが魔道具一般の仕組みであり、魔導装甲も共通する。
魔導式だが、まずは、とにかく魔力ロスがなく腕輪内部を魔力が循環し続けるように式を立てる。一点に、剣から過剰に漏れる魔力が腕輪の内部へと流れ込んでくるようにした。
さらに、別の一点に剣の魔力吸収が止まれば、剣へと魔力が逆流するようにする。
最後に僕の魔力と魔石が続く限り、循環可能な魔力量が多くなるように、ひたすらに式を加筆していった。
結果小さな腕輪一つに魔石を100個近い魔石をつぎ込み、簡単な魔導装甲一台分の魔術式と同等の量の式を書き込んだ『循環の腕輪』が出来上がった。それと同時に魔力過剰消費の影響で僕は、そのまま気を失った。