普通の暮らしの人ほど
運送会社の仕事は一般貨物を運ぶだけではなく、引っ越し荷物も運ぶ。遠距離もあるが、一日仕事も多い。小さな運送会社だったので、1軒の家でも二人、多くて3人で仕事をした。
ある家など、朝食を食べ終わったばかり、布団も畳んでいない状態から、ひとつひとつ御茶碗を新聞で包んで、と今なら考えられない状況で作業をしたこともあった。
この話は、私が20代の時だから、もう40年前のこと、現在の引っ越し専門業者が存在していない時代なので割り引いて聞いて頂きたい。
引っ越しと云えば日本通運、そんな時代、私の会社もその下請けとしてトラックを持ちこんでいたので、引っ越し作業も多かった。しかし、全てが下請けの仕事、先ほどのように何から何までやった。
しかし、トラックに荷物を載せ終えたら、先ずは昼食となるが、大概は定食屋で食事となり、荷主から御馳走して頂いた。そして無事作業終了となれば、チップ(寸志)も頂いた。それが楽しみでもあった。
だが、必ず頂けるというものでもない。どちらかというと、普通の暮しをしている家の方が圧倒的に多い。これに比べ、銀行員や如何にも金持ち風の建屋の荷主からはチップを貰うことはあまりなかった。
普通の暮しをしている人ほど人の痛みが分かっているように思う。 その苦しさを知る人々が社会を支えているのだ、と、若い私は引っ越し作業を通して学んだ




