わらしべ長者
ビール好きな私は酒には何の関心もなかった。しかし、1本の酒がその嗜好を覆した。それは職場の隊長から土産として純米吟醸酒を貰ったことが発端だった。
“天明”と名付けたその酒の豊潤な香りと味に魅せられ、私、妻、長男、四男は次々と銘酒を求めるようになった。
酒好きとなった我が家は各蔵元を訪ねてみたくなり、その皮切りが地元の奥の松酒造だった。
本宮市から国道4号を福島方面へ向かう15キロ程でもう奥の松酒造に到着する。工場内の事務所兼店舗に入ると、大柄な女性ともう一人の女性が談笑していた。
大型の冷凍ショーケースには酒がずらり。試飲を勧められ、長男は運転するので、私、妻、四男が一口用のプラスチック容器で頂く。
次から次へと勧められ、その都度容器を替えて呉れる。10種類程試飲し、これはと思う酒を四合瓶で4本購入した。
試飲のお礼に、用意しておいた折り紙の薔薇13個をこれも折り紙で折った箱毎差しだした。
大柄の女性の方は、笑顔と共にショーケースから300CCの純米吟醸酒を取り出し、薔薇の返礼だと渡して呉れた。そう、折り紙が酒に化けたのだ。
こうしたことがきっかけとなり、毎年11月3日、奥の松酒造の感謝祭を楽しみにしている。
返礼の酒を呉れた大柄の女性は、どうやら社長の奥さんだ。その感謝祭では多くの社員に声を掛けながら忙しく働いていた。




