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健康で文化的な生活と生活保護

 今思えば、何も乞食をする必要はなかった、堂々と生活保護を受ければ良い、しかしこれは法律、憲法を知っているからであって、当時そのような権利意識はなく、新聞とてその最低限度の生活が保障されることなど何も書いてなかった。


 何もかも、戦争で失ったものを取り戻そうと必死の時代だった、働けば何とかなる。働かないから貧乏なのだ、働かないものに与えるものは何もない、それが当時の風潮だった。


 親父は、百姓を嫌ったのは単なる百姓が嫌いだけだったのではない、何か別な事がしたい、もっと本を読んでみたい、それが郷里を飛び出すきっかけだったと思う。


 そう言えるのは、私に本を与えて呉れたからだ。特に、中学3年時日本百科事典を買ってくれたことは本当に嬉しかった。毎月1冊買ってくれたが、その分厚い百科事典を飽きることなく何度も何度も読んだ。


 ちょっと笑える悲しい話で、“矢場とん”のことを書いたが、炭鉱夫だろうが肉体労働者だろうが、人としての矜持を何時も持ち続けていたからこそ、友の仕打ちや、私の家出に心底怒りが湧いたのだろう。

 私は永い間、親父達の生活について深く考えたことはなかった。親孝行のつもりの仕送りで何とかやっているとばかり思っていた、そう、それなりにやっていたのだろう。


 寝る所と、食うものがあれば生きていける。それはそうだろう、だがそれは犬、猫でもしている。犬、猫は人に寄り添うしかないからそうしているが、人間にはプライドがある。


 良いのか、悪いのか、日本人はそのプライド、矜持を江戸時代から持ち続けて来た、否もっと以前からかもしれない。


 1853年黒船騒ぎ以後、多くの外国人が見たものは、身なりは貧しいが分に応じて慎ましやかに暮らしている日本人だった。


 徳川265年太平の世は、この分に応じて、言葉を変えれば他人ひとに迷惑を掛けない、武士は武士、百姓は百姓、乞食は乞食、それぞれ節度を守ることが美徳とする風習が根付いたと思っている。


 節度を守ることは日本人として世界に誇れる気質だ。が、待てよ、辛抱や節度が美徳、貧乏は自己責任だ、と、する、と、その直接的な原因、国として適切な政策をしてこなかったことに国民自身が目を逸らすことにならないだろうか。


 乞食のことを述べたが、私が子供の頃はそのような境遇に近い方は身近にいた。しかし、それは相身互いの心で蔑視するような風潮ではなかった。に、比べ昭和50年代に入りホームレスが社会的現象として表面化した時、社会が取った行動はふたつ。


 受け入れるか、排除か、残念ながら流れは排除に。その根底に、ホームレスは自己責任、社会の責任ではない、と。


 名鉄セブンの警備員時代、午前1時からビルの外周巡回がある。百貨店敷地内に地下通路階段があって、巡回時そこを見廻るが、一段毎にホームレスの人が眠っている。


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