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ギザキの戦い 〜27〜 2

 光と闇の狭間で戦うギザキの物語

 崖下に伸ばすギザキの手に柄が握られたのは……ギザキの術に呼応して飛び込んで来た剣の柄が握られたのは……魔獣の息がギザキの首に吹き掛けられ、瞬後に噛み砕かれんとする瞬間であった。


 刹那!


 即座に身をその場で回転させ、柄を横殴りに払い打つ。柄に刀身が在ったのならば……魔獣の首を跳ねたであろう時宜で。だが柄に刀身は無い。

 ……無かった筈だった。

 しかし……ギザキが柄を握った瞬間に刀身が顕れていた。

 光り耀く刀身。聖なる力を刀身として顕し魔を祓うと言われた刀。その光り耀く刀身が柄から顕れていた。

 しなやかな、細い鞭のような光の刀身が魔獣へと放たれる。魔獣は身を翻し躱そうとする。が、動きについて行けない部位……首の一つが魔獣の動きから違った動きをし、無数の鬣の蛇とともに光の刀身に捕らえられた。

 光の鎖剣が魔獣の首……仇敵の顔となった頭を打払う。蛇のような触手、鬣をも……

 途端に吐かれる炎の息。氷結の息。石化の息。雷の息。抗うことの出来ぬ魔獣の、無数の息がギザキを襲う。

(ぅおっぉぉぉ……何ぃ!)

 最初にギザキに到達したのは炎の息。火焔がギザキを襲い、焼き尽くさんと包み込む。が、炎はギザキを焼く事は無かった。炎がギザキの身体に届く瞬間、楯の呪符が効力を発した。楯に貼られたノィエの呪符が炎を包み消して行く。

(ノィエの……呪符の力か!)

 だが、無数の触手の幾多の息は呪符の力を超え、炎がギザキを包みに纏わりつく。だが……その炎は楯の一つに吸い込まれた。

(! この楯は!)

 それはギザキが亡き父から渡された楯。『炎を弾く』と言われ渡された楯が、今、炎を吸い込み虹色に耀く法力へと変え、ギザキを包み、次の炎を弾き跳ばす。言葉どおりに……

(……もしや、これが?)

 裏切者の言葉が脳裏に浮かぶ。


『聖鏡の楯は紛い物だった』


(つまり……姫が投げつけ、壊れ落ちていったあの聖鏡の楯は偽物だった。ならば本物は? もしや……この四つの楯が?)

 炎を吸い放たれた法力が、虹色の光となり他の楯に吸い込まれ、光り耀いていく。そして……魔獣の……断末魔の触手の蛇が放った総ての息、石化の息、雷の息、氷結の息が其々の四力を顕す四つの楯に吸い込まれ……自らの法力へと変えてギザキを光に包んでいく。護っていく。

(……これが聖宝の力か!)

 ギザキが盾の法力に驚いている間に魔獣は……打ち落された首を喰らい……再生した。

 再び仇敵の顔となって。

 それは融合した魔獣の一つ、ヴィードラの能力。打ち払われた蛇達も鬣の蛇に喰われて、見る間に再生していく。

「……ぐっぐっぐ。無駄だ。既に魔獣と完全に融合した。不死に近い。それが聖宝の剣であろうと斬るだけなのだろう? ならばっ! 儂は幾らでも再生する。負けることはないっ! つまり……オマエの負けだ。あのときと同じようになぁっ!」

 仇敵の声には虚勢が混じる。二つの聖宝の法力、剣と盾が相乗している今、ギザキの力を、聖宝の剣の威力を量りかねていた。

「オレは負けてはいないっ! ……今も。これからも。あの時もだっ!」

「死ねぇっ!」

 虚勢で叫びながら魔獣が再び襲い来る。

「破ぁっ!」

 ギザキは慌てず、確信を持って光の……聖鎖剣を振るう。光の刀身は楯からの法力をも相乗させて……虹色に光り耀く無数の刀身となり……敵に、魔獣に襲いかかった。


 一瞬の間に総てが終った。


 敵の魔力を受け、その全てを光の法力へと変えて身を護る聖鏡の楯。楯が放つ法力を無数の光の鎖、無尽の如き光の刀身へと顕し、魔を砕く光鎖剣。二つの聖宝を持つギザキに敵う相手なぞ魔王以外には有り得ない。

 魔獣は……魔獣と残っていた死人人形の兵達は一瞬にして打ち砕かれ、光の塵へと姿を変え、千々に飛散した。

 後に残ったのは……地に突き刺された黒き剣と、隧道の呪文を黒き光で覆う黒き水晶。

 ……それだけだった。

「破っ!」

 柄を握り直し、横殴りに光の剣を振るう。黒き刀身が砕け散り、黒き水晶も砕け、飛散した。剣の呪力がもたらしていた震動が止まる。隧道は黒く耀くのを止め、別の空間との接続を断切り……何事も無かったかのように、静寂な姿に戻った。

「……終った。これで、もう……敵は来ない……え?」



 読んで下さりありがとうございます。


 この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。


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