ギザキの戦い 〜26〜 4
光と闇の狭間で戦うギザキの物語
ノィエが石橋の袂まで戻った時、ギザキは見知らぬ魔獣と対峙していた。
(えっ? ……何故、魔獣が?)
だが、悩む間は無い。
最早一刻の猶予も無い事だけは確か。
しかし、石橋の破口からギザキの所までは……遥か遠く、ノィエの力では剣を投げ渡す事は出来そうにも無い。
地の揺らぎは続き……次第に強くなっていく。
それでも……
ノィエは走り出した。
駆けていた。
絶え間ない震動で揺らぐ石橋を。
石で出来ているのが今となっては信じられぬ程に揺らぐ脆き橋を。
足元を揺らがせ、踏み間違えば奈落へと転げ落ちそうな石橋の上を何も恐れる事なく、ただ一つの事を願って。駆け抜けて行く。
(待ってて。必ず……必ず届けるから。渡すから。この……聖宝を。光の鎖剣を!)
駆け抜けた後ろで崩壊していく橋。
鐘楼からの歌声、光の聖歌が縛り、形残そうとしているが脆く崩壊して行く橋。
その上を駆けていく。
手に……白魔導師が持つ事を許されない剣を持って。
もう既に手は焼けているのだろう。
熱く感じる事すら無くなっている。それでも落す事はできない。
両の手で確りと握りながら駆けていく。
そして……破口が見えた時、ノィエは思いっきり疾く駆けていた。
少しでも勢いを付けて剣を渡そうとするが為の力を剣に籠めようと。
破口まで駆け寄り、剣を投げた。
空中に、ギザキに届けと思いっきり投げた。
城の運命、聖宝の運命、そして、ギザキの運命と自らの運命を託して……
自分の身体は転げ……崩れた欄干に身を打ち付けて止まる。
そして叫んだ。
「ギザキぃぃぃぃ! 剣よ! 受け取ってぇぇぇぇぇ!」
読んで下さりありがとうございます。
この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。
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