ギザキの戦い 〜18〜 3
光と闇の狭間で戦うギザキの物語
「何だ? 何故? 何故に城が燃えているのだっ!」
疑問に思う間もなく、黒き兵装の者達が攻め入って来た。広場に……闘技場にいた者達は突然の侵略に何一つ抗うこともできずに逃げ惑うだけ。逃げ惑い、黒き兵達が振り下ろす剣の下に打ち倒されていく民衆。旅の人々。自分の仲間達。近衛兵達は即座に抗戦したが、敵の数は多く……さらには何一つ用意していない戦い。大して情勢に変化はなく……劣勢という言葉が空しいまでに……打ち倒されていく。美しき王宮を血に染めて……
「ギノぉ!」
魔獣の血を拭う間もなく戦いに飛び込んだギザキを誰かが呼止めた。振り返り見たその姿は……剣の師。血だらけの親衛隊長だった。
「城へ行け! 城で王が、王妃が、姫が待っている!」
「しかし、このような……あの者達を打払わねば!」
隊長はギザキの襟首を掴み引き寄せるとありったけの大声をあげた。
「いらん! この場は俺らに任せろ! 御前は城へ行け! 城に向かった敵の軍勢を打払え! 心配するな! 既に魔術師達も態勢を整えている! だから城へ向かえ!」
「判りました!」
師に背中を叩かれ、城への道へと駆け出す。
その姿を懐かしむような顔で見送る師は……直後、敵兵に腹を刳られた。その敵の頭を柄の石突きで一撃の下に叩き砕く。足元に崩れ落ちる敵を見ずに……師はギザキの姿を見送っていた。
「さらばだ……ギザキ。いや……ギノ。御前という弟子を持って俺は幸せだ。魔獣を撃ち倒した弟子を持つなぞ、そうそう在る事では……ぐふっ」
口から血が噴き出る。背を……背から胸を新たな敵兵が貫き通し、肺を満たした血が喉から溢れ出した。
敵を見ずに折れ曲った剣で突き倒す。ゆっくりと身体を回し見ると、既に護るべき民衆は地に倒れ、友も……仲間たちも……辛うじて数人が立っているだけとなっていた。
敵は……既に勝利を確信したのだろう。遠巻きに自分達を見ているだけ。
静かに……何の曇りも無い笑顔を浮かべ、仲間たちと視線を合わせる。仲間たちも視線の意味を悟った。そして、なんとか立ち上り剣を天に翳した。
「天よ……我等の最後の力を。我らの覚悟を御覧あれっ!」
最後の力を振り絞り、親衛隊の精鋭が持つ剣を、予め真紅の象眼に法力が籠められた銀の剣を全員が地に突き刺した。
籠められていた法力が開放され……広場は紅蓮の炎に包まれた。
(ギノ。残念だが……この剣は授ける事ができなくなった。御前は生きろ。我らの分まで。生きろ……姫と共に)
炎は敵の全てを……広場を、城下の町並みを全て呑み込み、数日間に渡って燃え続けた。
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この作はアコライト・ソフィアの外伝という位置づけになります。
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