45・最後の入居者
……まとめ。
というより、時間が経ってある程度僕の中で理解が追いついてきた。
どうやら――浮口市の消滅は防ぐことが出来たらしい。
そしてエネルギーが十分となり、浮口市は再生し今まで消滅していたものが全て元に戻ったのだ。
なので浮口高校も再生し――四月一日。僕は晴れて浮口高校の生徒に返り咲いたのだ。
万歳! やったね! ちゃんちゃん。
……といきたいところなんだけど、
「それにしても、雄斗君。貧血で倒れるなんて、実は体が弱いんだね」
「……色々反論したいけど、返す言葉はございません」
「そんなんじゃ、浮口高校の番長になんかなれないぞ」
「そんなの目指してないよ!」
ていうかそんな時代錯誤、現代学園モノでも存在するのか……?
僕は同じく浮口高校の制服に身を包んだ万葉ちゃんと会話していた。
確か元々、万葉ちゃんは僕と同じ高校に通うことになっていたんだよな。それが浮口市の消滅で変なことになっただけで。
万葉ちゃんは浮口高校に入学するなり、「何だ! あの美少女は!」と同級生、はたまた上級生。さらには先生の間でも有名になって、早速体育の教師から告白されたらしい。何やってんだよ、先生。
そして僕は……万葉ちゃんの幼馴染みとして普通にこうやって話しているだけで「何だ! あの男は!」「むきー! 万葉お嬢様とお話するなんて!」と嫉妬の視線が苦しかった。ラブコメか。
だからといって美少女の近衛万葉ちゃんと喋る僕は、入学式早々貧血で倒れる貧弱野郎であって。
これから先の高校生活の先が思いやられるのであった。
「十香さんも浮口高校に入学したみたいだね」
「そうだよ? ていうか、部屋に入居する時に言ってたよね?」
知らない。何故ならあの時は浮口高校が消滅していたからだ。
ならば浮口高校が消滅していなければ、元々十香さんは僕達と同じ学校に通う女子高生だったのか。
あっ、ちなみに国別府の野郎も浮口高校である。ファッ○ユー。まあ僕達と同じクラスじゃないだけマシだけど。
ちなみに十香さんも隣のクラスらしい。相変わらずワガママ放題、ネコのように振る舞っているのだろうか。
「おーい、席に着け。入学一発目の朝のホームルームをやる」
どうやら僕が保健室で寝ていたのは十分程度……ということになっているらしい。
なので担任の先生らしき人が入ってきて、斑だった生徒達が軍隊のように席に着く。
――多分、これも世界の自己修復能力というヤツだろう。
あの時、守り神の石像をファミーユコノエの敷地に置いて。
浮口市の再生が始まり――そのまま辻褄を合わせるため、僕は貧血野郎の運命を背負うことになった。
つまりそういうこと。世界の自己修復能力というものは便利な設定なのだ(誰視点なんだ)。
教壇に立った先生は出席簿を机でトントンとしてから、こう続ける。
「今日は転校生を紹介する」
「「「「「「はあ?」」」」」」
クラス全員が間抜けな声を出す。
いやいや、どうして入学日一発目なのに転校生なんだ。それって、僕達と同じ新入生と何が変わらない。
教壇の前に座っている万葉ちゃんも、きょとんとしている姿が見えた。
「まあ細かいことは気にするな。何せ三十分前に浮口高校に転校する、って決まって手続きとかも全部済ましてしまったんだからな」
「そんなこと有り得んのかよ!」
どこからともなく、そんなツッコミが聞こえる。
三十分前――僕が貧血で倒れたくらいだろうか。
ざわざわ。胸騒ぎがする。極上の嫌な予感。
「では入ってくれ」
先生がそう言うと――教室の扉がゆっくりと開く。
「あっ!」
嫌な予感は的中してしまったのである。
大和撫子のような黒髪。強気そうな瞳。いつも巫女装束姿でしか見なかったので、制服姿はある意味新鮮だった。
その転校生は教壇に立つなり、腕を組んでこう言った。
「浮口杜乃だ。訳あって浮口市を守っている。よろしく頼む」
――そう。転校生とやらは浮口市の守り神であった。
一度見たら忘れるはずもない――彼女のキレイな姿。
浮口杜乃と名乗った守り神は、ビックリして立ち上がった僕に対してウィンクを投げかけてきた。
僕はそれを返すことも出来ず、ただ呆然と立ち尽くすだけ。
窓の外から浮口山が教室を見守っている。
◆
という感じで――。
あの時。
「一緒に暮らそうじゃないか!」
と叫んだ僕の言葉をどうやら本気にしたらしく。
エネルギーが満ち足りた浮口市の守り神は、この世界に常に出現し僕達と同じ浮口高校に通うことにしたらしい。
そんなこと出来るのか?
疑問を覚えるけど、相手は神様だ。大体はその一言で済ませることが出来る。
さらに浮口市の守り神……じゃなくて、浮口杜乃はファミーユコノエに住むことになった。
庭先では間抜けな狐の石像があり、毎日犬に小便をかけられていたりする。
まあそんなことはどうでもいいのだけど……。
一つ問題が新浮上した。
ファミーユコノエは満室だった。
だけどいつの間にか浮口杜乃の力によって、ファミーユコノエは一部屋分のスペース横に長くなってしまった。
というわけで、なかったはずの角部屋。
二○四号室が出現――つまり僕の隣の部屋だ――そこに浮口杜乃は住んでいる。
そして一部屋分のスペース長くした、ということは二〇四号室の下。
一〇四号室も出現してしまったということで。
というわけで。
まだ僕の住むアパートは満室じゃない。
完結です!
ご拝読ありがとうございました。
現在、次作を執筆中なのでまた活動報告にてお知らせいたします。




