表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/45

42・守り神の居場所

 前のめりに何度も転倒しそうになりながらその場所へと到着する。


「はあはあ……ここにいるはずなんだ!」


 目的の場所の前に立ち、両膝に手をついて息を整える。

 だけど体力の回復を待っている時間は皆無であった。

 僕は扉に手をかけ、一気に引いて内部へと入っていく!


「あった!」


 いや、『いた』!

 浮口市の守り神――直径四十センチくらいの丸い石像をイメージしてもらえればいい。

 狐の耳や顔のパーツが、その小さなスペースに埋め込まれている。

 決して重くはなく、その丸い像を抱え上げ一見、間抜けそうにも見える二個の瞳を見つめる。



 ――そう。守り神は不動不動産の物置の中にいたのだ。



 掃除をしていた時に見つけた変な像。

 これが万葉ちゃんの語る守り神の石像だったのだ。

 浮口山消滅により、どうしてこんな場所に移動してきたのか分からない。


 だけどよく考えてみろ――守り神はここ不動不動産の店内でしか出現してこなかっただろ?

 浮口市の守り神なのに? 街の全景を守る使命があるのに?

 どうして不動不動産の店内でしか活動出来なかったのか。


 解答は――守り神の石像が不動不動産の物置にあるため、ここに魂を縛り付けられていたのだ。

 これはエネルギー不足により起こり得る事態なのかは分からない。


 だけど――守り神はここにいたのだ。

 いや、いなくちゃ困る!


「守り神! おい、答えろよ! お前、どうしてファミーユコノエが消滅しているんだよ!」


 石像を持って揺さぶり、非難するようにして答えを求める。

 だけど守り神はうんともすんとも言わない。


 可笑しいだろ! ファミーユコノエは満室なのだからエネルギーは十分のはずだ。

 もしかして五日前、不動不動産の店内で守り神の声が消滅してしまった時。

 同時に浮口駅が消えてしまった時、守り神はいなくなってしまったのだろうか。


 ……いや、そんなわけはない!


 ならば浮口市も完全消滅していても可笑しくないはずだ。

 そうなっておらず、浮口市がまだ現存しており、叔母さんも普通に存命中なのはまだ守り神は存在しているという証明になって――。


「うわあっ!」


 地震!


 物置が恐怖するように震え出す!

 僕は守り神の石像を持って、転がり回るようにして外へと出る。


「え、ど、どういうことなんだ!」


 とはいえ考えている暇はない。


 何故なら――不動不動産の屋根が建物全体を潰そうとしていたからだ。


 それは建物の崩落であった。ぐしゃりぐしゃり、という不気味な音を立てて不動不動産が地震に耐えきれず崩壊する。


 地面の震動は止まらない。

 僕は未だ頭の中が混乱の嵐覚めやらぬ中、不動不動産の敷地から逃げ出す。

 震える大地に二本の足で立ち、目の前に広がっていた光景は――嘘のように崩壊していた不動不動産の建物であった。

 木材が解体され、看板が地面へと放り出されている。


 大地震なのか……いや違う。

 いくら地震とはいえ、視認出来る程アスファルトが波打つことなんて有り得るだろうか。

 夜空を見ると、七色の絵の具を混ぜたようなぐちゃぐちゃな模様を描いていた。

 夜だというのに、カラスの鳴き声は聞こえ、平衡感覚が狂い近くの塀を掴みながら立ち続けている。


「浮口市の消滅が始まった……ということなのか!」


 正確な時間は分からないけど、おそらく今は十一時三十分前後。

 三月三十一日を超えることによって、浮口市は消滅する。その準備体操を街全体が始めたというのか。

 これだけの惨禍だというのに、近くの建物から飛び出してくる人達はいない。

 まるで不思議の国に迷い込んでしまったかのような、変異な光景で一人石像を抱えている僕。


「守り神……お願いだ。答えてくれ」


 ここまで来たら頼れるものは一人しかいない。

 ぐにゃぐにゃに揺れる地面に、一度膝を付き石像を置いて話しかける。


「どうして浮口市の消滅が始まっているんだ。ファミーユコノエは満室にしたじゃないか。エネルギーの源泉部分にあたるところを……」


 エネルギーの源泉。

 思い出せ。あの時の守り神の言葉を。



 ――エネルギーの源泉が浮口市においてはファミーユコノエのある土地に相当する。

 ――部分は完全に浮口市が消滅しない限りは決して移動しない。



 そう、元はといえばファミーユコノエは浮口市のエネルギーの源泉にあたる場所だから――そこから活きるエネルギーを補充している、と言っていた。

 温泉でいえばお湯の湧き出るところである。

 さらに完全に消滅しない限り、決してその場所は移動しない、とも。


「もしかして……場所が悪いのか?」


 最早、ファミーユコノエは消滅してしまっている。

 最後の賭けだった。これをしても消滅が止められるとは限らない。

 だけど最後の可能性を追い求める、諦めない僕は一つの考えに至る。



 ファミーユコノエがあった場所に、守り神の魂が込められている石像を持っていけば、そこからエネルギーを得て復活するのではないか。



 今まで一つ一つの点であった。

 その点を拠点に線が延びだして、一つの解答を浮かび上がらせる。

 ファミーユコノエはエネルギーの源泉があった場所。

 つまりその場所にこの石像を持っていけば、お湯が出てくるところに頭を持っていくようなものだ。滝行のように、いるだけでジャバジャバとエネルギーを浴びることが出来る。


「ならば……することは一つだ!」


 守り神の石像を背中で背負い、ボロボロの体に鞭を打ってもう一度走り出す。


 場所は――勿論、ファミーユコノエだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ