2.賢者との出会い
俺は気付くと見渡す限り何もない平原に立っていた。何億年ぶりかのテレポートはやはり体に効くようで全身が針で刺されるようなチクチクした痛みに襲われた。
「ダァァークフレイム!」
遠くから女性のような甲高い声が聞こえた。また天使がこちらに向かってきているなんていうことは勘弁して欲しい。そんなことを思っていると毒々しい紫色の炎がこちらに迫ってきた。
これが魔法というものなのか、俺の世界ではありえない状況に興奮すら覚えていた。
「構築開始、半径1メートルにダイヤモンドの壁を」
俺がそう口に出すと俺の周りダイヤの壁が現れた。炎はそれに吸収されるかのようになくなってしまった。続けざまに命令を唱えた。
「構築開始、俺を攻撃したものを捕らえるスライム、付属効果 魔法吸収」
例のごとく、スライムは俺の前に出てきて一目散に走って行った。しばらくすると遠くからはじめに聞いた女性の悲鳴が聞こえた。急いで声のする方向に行くとスライムの触手に絡みつかれた小柄な少女が泣いていた。
「んっ、あっ! なんだこの魔物! なんで魔法が効かないんだよぉ~。誰か助けてぇ~」
俺はスライムに向かって中指を立てた。
これは構築した物体や生命を壊す能力だ。この能力の対象はこの世界にいるものの全てだ。なんせ俺が構築した世界だしな。
「おい、お前いきなりなんで攻撃してきたんだ」
俺はその少女に質問した。
「魔物が喋っただと? なんだこいつはついに世界の【終焉】が始まったというのか。【観測者】よなぜこのような定めを下すのですか」
「命の恩人になんつー態度取ってんだよ。あと俺はどちらかというと観測者の方だぞ」
そういうと彼女は体全体を使って驚くそぶりを見せたかと思うと右手を斜め下に左手を額にあて、カッコイイポーズを取りながら言った。
「私の名前はシャルル、三賢者の一人! 主に闇と炎の複合魔法を得意とします。賢者の私と同等、もしくはそれ以上に戦えるのは他の賢者しかいないと思いましたが、まさかこの世界の【創造主】に出逢えるなんて感服の極み」
彼女は深々とお辞儀をして、俺に尊敬の目を向けた。
それにしても……複合魔法とはなんなんだ。確かに少しめんどくさくなって設定に自動アシストも使ったけど。あと賢者というのはそこまですごいものなのか、よしここはゴットスキルの出番だな。
「スキル発動、マニュアル確認ワード 賢者」
これはスキルの一つで自分の作った世界で設定を忘れてしまったり、突然変異して神にも把握できないときに使うものだ。
(説明を開始致します。賢者とはこの世界で三人しかいない魔法のエキスパートのようなものです。貴方様の設定以上に成長した特殊な個体という判断をしてもらって構いません)
頭の中に直接入ってくるような声で説明された。つまり彼女はこの世界では敗北をしたことのないような強キャラだったということか。それなら俺にやられてすぐに俺の話を信じたことにも納得がいく。
「あの~【創造主】よ、この世の理を貴方は変えることができるのでしょうか? もし可能ならばこの体にまとっているものをもう少し暖かくしていただけないでしょうか」
彼女の服装をよく見ると薄い毛皮を体に巻きつけているだけだった。
今考えると物作りや魔法の繁栄に夢中で衣服とかの設定ほぼ、初期値だった。そしてすごくどうでもいい話だが彼女はオッドアイでとても可愛らしい顔だった。キャラ設定の顔をMaxにしといて正解だったな。
「よしわかった。願いを聞き入れよう。
世界設定改変、対象 衣服」
これもゴットスキルの一つでこの世界で発達しきれていないものを時間をかけずにもともとあったことにする能力だ。
シャルルの服装を見てみると、全身が黒いローブて覆われていて、手には黒曜石でできた杖を握っていた。
「おお~さすがは【観測者】です。私は貴方様の仲間になりたいです。道中の魔物なら大概は私一人で倒せます」
彼女を仲間にして役に立つことは間違いないだろう。仲間にすることを前提で俺は答えた。
「俺の名前はし……いやブライトだ、敬語もなれないからいつも通りに喋って構わない」
そういうとシャルルは目を輝かせて首を大きく縦にふる。名前は自分の名字と名前からとったが超有名ロボットアニメと重なってしまったな。
「了解した、シロよ! これからよろしくな」
「ああ、よろしくな……じゃなくてなんで俺が初めに言いかけた名前になってんだ!」
そう言うと彼女は首を傾げて不思議そうにいった。
「我は実を言うと光の精霊魔法が一番得意なのです。精霊は人の心の中に入り、その情報を引き出すことも可能なのです」
そんなこと可能なのかよ。
「マニュアル確認、ワード 精霊」
(精霊というのは魔法の中の成分のようなもので魔法は精霊の集合体です。精霊には属性があり、彼女は光精霊の使役を得意としているようです。彼女の言うように精霊は人の心に入り、考えていることを探ることも可能です)
なるほどこいつといるときは基本無心でいないといけないわけだ。技の連携とかは簡単になりそうだな。
「さあシロ! とりあえず近くの町で色々な説明を致します。こちらへ来てください」
仲間も加わり楽しくなってきた大冒険、目標は特にない。ハワイに行った神様の気持ちもだんだんわかってきた気がする。
「よしそれじゃ出発だ」
ほぼほぼ初心者なのでご指摘があったらおねがいします。