No.46 交わる狭間
出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第四十六弾!
今回のお題は「子供」「病気」「ポテトチップス」
7/6 お題出される
7/11 何のかんのでプロットが真っ白
7/12 四苦八苦の末にプロットを考えるも二転三転
7/13 なんとか書いてみる
難産すぎたので、もはや何度目かの脳内垂れ流しですハイ
ぶくぶくに膨れた少年が、サラミのような指で、ボンレスハムのような腕を使ってそれでもなお菓子を口に運ぶ。既に少年は立ち上がれず、首周りには自身の肉というマフラーを纏い、そこに溢したスナック菓子が入り込む。肌は一部うっ血し、血流の悪さは誰の目にも明らかだった。だが少年はそのスナック菓子を食べるのを止めない。そう、ポテトチップスだ……
……
「いや、これじゃないな」
ワタクシは思わずぼやいた。
まず、少年がそんなになるまでポテチを喰うだろうか? いや、これがマジックアイテムならあり得る。たとえば悪の組織が作ったポテチで……それを止めるために……よーしよし、案が浮かんできたぞ。
***
夜の闇に浮かぶ煌びやかな宝石のごとき非常灯に囲まれた機械群は、空の星々より明るく輝くだけでなく、濛々と黒い煙を吐いて空を漆黒に染め上げていた。
ここで、かの有名な有害ポテトチップスが作られているという。食べれば病みつき、文字通り病んでしまう恐ろしきスナック菓子……それを止める為、彼は漁船を一隻港より奪い取り、工場を一望できる場所沖合まで来たのだ。
「ここが、……ここが……あー、なんだっけ?」
が、主人公たる男は悪の組織名を度忘れしていた。
しまった。このヒーローの名前はおろか、悪の組織の名前すら決めてなかった。……なんにしよう? トランス脂肪酸から取って、悪の組織トランスとかにしとく? 何か降霊術を行いそうな組織だな。
「ここが、デス・トランスのアジトという訳か……」
いや、アジトじゃない。工場。出先。はい、Take.3
「ここが、デス・トランスの出先、工場という訳か……」
……なんだろう、このコレジャナイ感。
『もっとこう、緊迫した雰囲気が欲しいんだよな。と考えるとやはりポテチで世界征服とか訳が分からんな。この日曜午前6時にやりそうな戦隊ものの悪役のごとき悪行? なんか、現代だとメディアとかネットにすっぱ抜かれて、デス・トランスの配下の会社の社長が謝罪会見するんじゃないかな?』
「おい……」
『いや、そもそも、日本のポテチってトランス脂肪酸使ってるのかな? あれって、マーガリンを常温で溶けないようにするための物で、そう考えるとポテチに使わなくても、何だよな。あーでも、バターでポテトチップスとか贅沢だなぁ~ か○びーらへん作ってないかな? 調べてみよう』
「おーい……」
まだ名前すら付けられてない男の呼びかけなど他所に、ワタクシはネットサーフィンを決め込み、すっかり本題を忘れていた……
***
――1時間後
なんと! 海外のポテチでは、のり塩が無いのか……海外でポテチ買えねぇなぁ。やっぱ海苔と醤油、特に焼き海苔のあの風味たるや美味しいんだよなぁ……と思えばこそだよな。
ふむ、のり塩味は1962年に発売されたのか……この年に有ったことは……ふむふむ。
……あ、なんかちと浮かんだ。
※※※
1962年、10月28日。沖縄。
その日……あー、待った、この日の天気が知りたいぞ……えーと? あれ? 当時の天気が分からない? あれ? あれれ?
……えぇー……ないわー……
そもそも、なろうでは戦後の事は上げれなかったじゃないか! というわけで、約2000字、1時間の苦労をデリートキー一つで霞と消していく……
冷戦の中で起きたトラブルの影でのり塩ポテチの功罪により、最悪の事態を避けるとか言う阿呆なのを考えてました。正直世に出さなくて良かった。
というか、のり塩で、というのは無いだろう……むしろ、同年発売のアーモンドチョコレートのがまだ可能性が……無いな。
しかし、かくも先が浮かばないものである。そもそも、三題を組むために無理やりすぎるし、歴史ものにジャンル分けされるであろう物事で、オリジナルの架空の人物はグレーだよなぁ……いや、居た可能性がゼロではないが……
もう少し練ってみよう。よし、そのためにもまずはネットサーフィンをして……
※※※
――またまた1時間後
そうかー、そもそも、ポテチの発祥が1953年。つまり戦後だ……くぅ……題材には使えん……せっかくポテチの発祥とか起源とされているサラトガ・チップスなるものに関して軽く調べたのに……。いやそれより新しいアニメがですね(この後めちゃくちゃ話題がずれた)いやぁ、衝撃的でしたな……
……どーしようか? ネタに詰まってしまったぞ。
ここはお得意のファンタジー路線で行こう。そうしよう。
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目が覚めると、そこはどこまでも続く星空だった。いや、正しくは、タイル張りの石材で出来た床の上にあおむけに大の字で、僕は寝ていた。
少しぼうっとして、自分の状態を確かめる。たしか、学校に行く前に二度寝したのだ。という事は、これは夢か。それじゃあ、今一度寝よう。
と左に向かって大きく寝返りを打った時、視界にこぎれいな革靴と白いタイツの足が視界に入り込んできた。そして、上の方から声がした。
「寝ないで、起きて」
声変わり前の子供の声だと感じた。少年だろうか?
僕は寝っ転がったまま声にこたえる。
「良いじゃない。寝てたって」
「そうはいかない。君は皇太子の前で寝ているつもりか?」
そう言う少年を、僕は眠い目をこすりながらその顔を見た。
少年は整った顔立ちにブロンズの美しい髪をして、その服装は中世ヨーロッパの人間の物に見えた。ただ、思ったより簡素な物を着ている。そして特徴的なのは、胴の部分を覆う大きな布と、少年のぎこちない歩き方……腰が悪いのだろうか?
なんかああいう服装は某有名な少女漫画で見た気がするな、とか思いながら、僕は寝心地の悪い石材の床から上体を起こした。
「それはそれは……失礼しました」
僕は立ち上がって埃を払いながら、口だけでも少年に詫びた。少年はふふっと笑って、近くにあるこれまたゴシック調な椅子に腰を下ろした。
見れば、この場所は奇妙な空間だった。壁が存在しないだだっ広い空間に様々な家具や機材が所せましに積まれている。そして、壁の代わりに広がる無限の星空……この奇怪な空間が、より現実味をどこかへ飛ばしている気がする。
そこにあるものもどれも奇怪だ。世界の端にデカデカとインドが描かれた地球儀や何も見えないように煤で真っ黒に塗りつぶされた鼻眼鏡。鼻眼鏡は使用された形跡がある。ゆがんだ兜に水銀の入った小瓶、有名な絵画などなど……
少年が腰を下ろした椅子の周囲も不思議な物ばかりだった。
ロボット映画に出て来そうなロボットの首に、柔らかそうだが不愛想そうなクマのぬいぐるみ、ペストマスクにプラスチック製のケーキの標本。
「お前は見た事の無い人種だな。黒い髪に黒い目、何より……目と眉が離れている」
少年はそう言いながら笑う。
それに対して、機械的な声が少年に告げる。丁寧に喋る男性の声だが、どこか機械的だと感じた。
「彼は日本人。遥か東洋の島国にすむ人種で、真面目で礼儀正しく、自らを律する武士道なるものを重んじた民族と聞きます」
その声は、少年の傍に置かれた髑髏のようなロボットの首から発せられているように聞こえた。だが、すぐにその声の主が現れた。それは、少年の足元に駆け寄り、尻尾を振りながら顔をこちらに向けた。
「ロボット犬なのか? 会話ができるってのは高性能だけど、日本に関する情報が間違ってんな」
「左様でしたか? 失礼、日本が国家として存在したのは、私の存在した時代からは遥かかこの事でしたので……」
「はぁ……」
なんとも奇妙な夢だ。
ロボット犬が可愛らしい機械音声で吼え、その後質問してくる。
「説明をお求めで?」
「あー、うん。簡単に」
「では失礼して……」
と、ここで丁寧な説明が入り、色々と面倒で退屈な時間を過ごしたが、要するに
「ここは各時代の物体が流れ着く、次元の狭間です」
この一言で事態の全てが説明できてる気がする。ファンタジー慣れした現代人の頭の利点である。いや、このロボット犬からすると過去の人類なのか?
しかし、かくもロボット犬が長々と説明する中、流石に僕も目が覚めて来た。そして石材の冷たさや、そこら一体に転がる家具たちの埃の独特の匂い、喉の渇きと腹の減り……もしかしなくても、僕はファンタジーな事柄に巻き込まれたのだろうか?
「と、斯様なわけでして、ここでは時間の流れはほぼないと言っていいでしょう」
「ふーん」
話半分に聞きながらも、疑問を口にする。
「でも、腹は減るんだね」
「空腹を認識するのは脳です。故に、脳が時間の経過を認知する限り、時間は過ぎるでしょう」
「また小難しい……」
「では細かく説明を」
「いや、次の質問を」
思わず、ロボット犬の申告を遮った。ロボット犬はただ「かしこまりました」と、次の質問を待つように少年の足元でお座りをしている。
「ここから出る方法は?」
「分かりません。何分にも、ここがどういう場所なのかは私のデータベースには存在しません。時に、生き物が、人間がこの空間にたどり着くのは稀でございます。霊魂のみならばあり得るやもしれませんが……」
僕は少年を見た。少年は暇そうに自分の爪を眺めている。
「じゃ、次の質問。ここにある物って勝手に使って良いの?」
「構いませんが、身の安全は保障しかねます。ともあれ、ここでは時間を浪費しきっても余るほどございます」
「つまり、自己責任、と……ネットサーフィンと変わんないね」
ともかく、僕はこの空間に転がってる物を遠巻きに見て回り、明らかに大丈夫だろうと踏んだ物だけ触ってみた。
実に様々な物が転がっていた。傷と血が染みついた柱……いや、天井の梁だろうか、そんなものから見事な拵えの日本刀、何も書かれていないが猛獣の爪痕のような物が付いた屏風、針の先に血が付いた糸車……なんだかファンタジーな物も有るようだ。
と、ここで明らかに安全……そうだ、と感じる物が有った。
「ん? ポテチだ」
ポテトチップスの袋だ。現代で見かける、のり塩味だ。思わず拾って、少年の元へ持っていく。
「これ、食べる? あー、寝てるね。って、賞味期限大丈夫かな?」
少年は椅子にもたれ掛り、柔らかそうな唇を突き出して寝息を立てている。
どうしようか困ってる僕を、ロボット犬がまじまじと見つめてくる。
「私に授けられましたらば、食せるか判断いたします」
「お? マジ?」
さっそく、ポテチの袋を空けて、中身の一枚をロボット犬の口に運ぶ。ロボット犬はそれを含み、数秒の沈黙の末に湿気がどうだ塩分がどうだカロリーがどうだと言い、最後に
「食べれます」
「んじゃ食べよう」
とここで少年が目を覚ました。
「なに? それ」
「ポテトチップス。ジャガイモをスライスしてあげた物。フライドポテトだよ」
「ふらいど……?」
疑問符を浮かべる少年にロボット犬が言う。
「pommes de terre frites.すなわち、ポムフリットでございます。あなたの時代ではまだ存在しない料理でございます」
それを聞いて少年の眼は輝いた。
「食べたい! わたしも是非それを食べたい!」
「ん、いいよ」
とのり塩の袋をさし出す。戸惑う少年に、こうするのだと、袋に手を突っ込んで一つ摘まみ、自分の口に運んで見せる。少年は椅子からぎこちなく降り、差し出された袋に恐る恐る手を入れ、青のりのついた小さなポテトチップスを摘み出した。そして、これまた恐る恐る口に運びいれた。パリパリと軽い音がし、直後に少年は口を閉じたまま叫んだ。
「おお、良い反応だな」
「彼は、ジャガイモというとワインで煮込んだ物しか浮かばない食生活を送っておられましたから。ジャガイモをフライする、という考えのまだ至らない時代、ジャガイモはその白い花を観賞するための植物として見られておりました。彼はその時代に病没した皇太子で在らせられます」
ふーん、と感嘆の音を漏らしながら、少年を見た。口の周りに青のりを付けて爛々とした目でのり塩味のポテチを口に運んでいく。とても幸せそうだ。
「ムードンに返ったら、シェフに作ってもらおう!」
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と、ここまで書いた時点でワタクシ、夜行が御飯休憩を入れたのだが……
『あ、やべ。この先どうすんだっけ?』
プロットを度忘れした。だからあれほどプロットは書き起こせと日ごろから……!
悩んだあげく、約数時間前のボツ案が浮かぶ……
***
「ここが、デス・トランス……悪の組織が秘密裏に作るポテトチップスの工場だな……」
男は、拝借した漁船を工場のある埠頭へと向かわせるため舵を切った。その時だ!
「な、なんだ!? なにが起きた!!」
男の乗る船はまるで便所に流した枯葉のごとき動きで、海に突如現れた渦潮に飲まれていった。その男の頭上で声がする。
「ふははは! かかったな!」
「その声は……! リエキ総統!! この渦潮は貴様のせいか!?」
いかにも取ってつけたような悪の総統の巨大シルエットが夜空に映し出された。そのシルエットから声がする。
「貴様はこれより、次元の狭間に流れてもらおう。そこから我らが世界を、世界中の子供のお腹をたよんたよんにする様を、指を咥えて見ているのだなぁ! ふははははは!!」
リエキ総統の高笑いの聞こえる中、哀れ男は大海の小舟、諸行無情に渦に呑まれていった。
*※#
方や、次元の狭間。
少年は空っぽになったポテチの袋を幾度となく、その白いマシュマロのようなほっぺに青のりを付け乍ら覗き込み続けた。
「いくら覗いても増えないよ。無いものは無いの」
「そうはいっても……とても美味しかったから……」
「いや、君、そのほとんどを自分で食べちゃったじゃない」
少年はふてくされた様に袋を投げ出し、またひょこひょこと椅子に向かって歩きだす。
「作れたらいいんだけどねぇ……」
「作れるのか!?」
ものすごい速度で少年が振り向く。そこに気まずそうに僕は答えた。
「あ、ごめん。僕は無理。知らないんだ」
「そうかぁ……」
「でも、レシピがあれば」
「うぉわああああああああああああああああああああああああ!!」
すさまじい絶叫が僕の背後でした。思わず振り返ると、そこには横たわった漁船に乗り込んだ黒服の男が一人。尚もなにやら騒いでいる。
「よ、よせ! リエキ総統! 子供たちには手を出すなぁ!」
「あ、あの……」
「くっ、どうしたらいいんだ……どうしたら帰れるんだぁぁ!」
「あのー……」
「子供たちよぉぉぉおおおおおおお!! 必ず助けに行くぞぉぉぉおおおおお!!」
「おいちょっと!」
と、ここでやっと、この男が僕らの存在に気付いたようだ。
「な、なんだ君たちは?」
「あーんーと?」
困っているところにロボット犬が助け舟を出す。
「彼は正義のヒーローのようです。あなた方とはまた別の時空間から飛ばされてきたようです」
「へぇ……」
もう何でもありだな。いやまぁ、童話の中のアイテムとか有ったし、そんなもんなのかもしれない。
「ん? 君! その子の坊や! 何を食べているんだ?」
「え? いえ、あの……これもう空っぽで……」
少年の傍まで詰め寄り、少年が詰まらなさそうに放り出していたポテチの袋を摘み上げる。そして、まじまじと見つめながら言う。
「ポテトチップスじゃないか……! だが……デス・トランスのポテトチップスじゃないだと!? これは何処産の……!?」
この男の人、いちいち声がデカい。臭いを嗅ぎながら顔芸を披露しつつ、男は言った。
「坊や、良いポテトチップスだ。だが、私が作る程ではないな」
この一言に、少年は飛び上がった。
「作れるの!?」
「ああ、君が望むならな。正義の味方は子供の頼みを断らない」
男は少年の手を取り、固い握手を交わした。そして、首をひねり、僕らに聞いた。
「ところで、キッチンは何処だ? 次元の狭間なんて初めて来たものだからな」
かくて、まずはキッチン用品を探すことに始まり、次にジャガイモを探し、次に男の指示で大鍋と鶏肉、玉ねぎ、牛肉、生卵、甑に大量の水を探し出した。
とその最中に……
「Where is this? Who are you?」
軍服に身を包んだ白人の男性に出会った。
「Don't be afraid. I don't harm you」
なにを言ってるかさっぱりわからん。
とここでロボット犬が進み出て、何やら流暢な英語で会話をする。その後、事態を説明してくれた。
その後、彼は近くの箱に腰を下ろして頭を抱え、ただ一言。
「Incredible. ……Oh my god」
「曰く、この方はアメリカ軍の将校で在らせられるそうです。どうしてここに来たのか分からないが、日本人を見てここが日本だと思い込んでいたようでしたので、誤解を解いておきました」
「うん、見るからに落ち込んでるよね……あ、ついでに手伝ってもらったら? この機会に」
「分かりました。協力を要請してみます」
その後、落ち込んでいる様子の将校さんをなんとか引き入れ、さっそくかき集めた調理器具でポテトチップスを作成した。
カセットコンロを使って、大鍋で肉や玉ねぎを煮込み、卵の卵白で灰汁を取り、更にそれを布巾と甑でこしていく。それらの作業を大の男二人に任せ、僕は少年とその脇でジャガイモの皮をむいてスライサーで切って水に晒しておいた。
「よーし、あとはこのコンソメスープを水分が蒸発するまで煮込む! それでコンソメパウダーの出来上がりだ! ふははは!」
「え? それ何時間後?」
「ざっと一日と言ったところだな」
「いや、たぶん、カセットコンロのガスがもたないよ……あとジャガイモがふやける」
「な、なぁにぃぃぃいいいいい!? 何だとぉぉぉおお!?」
ここでどこかへ行っていたロボット犬が戻ってきて、丁寧な機械音声で言う。
「お待たせしました、皆様。文明の利器を使うしかありませんね。ちゃんと見つけて参りました。こちらへ……」
そういって、ロボット犬の先導の元、とある機械の元へ連れて来られる。見た事の無い機会だ。
三角形のロートのような物が二段になった機械で、傍には大鍋から管が伸びたような物がつながっている。
「これは?」
「濃縮装置です。主にポテトチップスのチキンコンソメを造るならこれであると、あなたの時代から引き継がれていた物の改良版です。とはいえ……」
そのマシンは、縦幅2m以上、横幅6mは有ろうかという大きなモノだった。
「もうチキンコンソメ作りはじめちゃったんだけど……どうしようか?」
「なんと! ……では、そちらの大鍋へ。今からでも遅くありません。油分と分解させて能力を行いましょう」
「いや、運ぶのは……」
「ふっ、任せておけぃ! この俺のヒーローとしてのパワーをもってすれば、どうということは無い!」
と、豪語したものの、結局のところ火の番をしてもらっていた将校さんと協力してフラフラとしながら運ぶことになった。ヒーローとしてのパワー、とは……
ともあれ、息切れしている二人を他所に、濃縮装置は順調に稼働した。だが……
「出来たようだけど……これだけ?」
「煮込み分離させた末での3倍の濃縮ですから」
出来上がったのは、ほんのマグカップに半分の量だけだった。だが、これだけあれば、ポテトチップスを造るには十分だろう。
さっそく戻って、油を高温で熱してポテトチップスを造り始めた。少年には危ないので、ここはやはり大の大人二人に任せておいたが……
「あっちぃぃぃいいいいうぉぉおおおおおおお! 油が跳ねたぁぁぁああああ!!」
「Are you OK? Oops! I burned myself!」
とても見てられないので手伝うことにした。キツネ色に色づいたポテトチップスに、少年にコンソメパウダー、塩、胡椒を振りかけてもらう。これで完成だ。
「じゃ、食べようか」
とここで、将校さんが何やら不満を口にしている様だった。
ロボット犬曰く、
「指が汚されることは好かれない。私は善を見つけるけれども、私は食べたくない。それはそうであった。それが物についての問題であったすぐ後に、私はここに来た。私は直ちに戻る必要がある。……だそうです」
「要するに指が汚れるのが嫌、って? じゃあ、これ、使いなよ」
と、僕は自分の為に擁しておいた、ポテチつかみ用のマジックハンドを渡した。
「それは何であり、私はここにいて、これであるか? これ! 信じられない! もしそれがこれであるならば、私は、指が、確かに汚されないとわかる。……だそうです」
「え、あ、うん、喜んでもらえて何より」
「喜んでいるのは、わたしより多く喜ぶ、その少年のようだ。だそうです」
将校さんが指をさすその先に居たのは、これまた幸せそうな顔でポテトチップを頬張る少年だった。口の周りをまた汚して、嬉しそうに食べている。将校さんは少年の傍に腰を下ろして、何事か呟いた。
そして、懐からチョコを渡して、何処へともなく去って行った。
「Thank you very much. Good-bye」
少年はまじまじと渡されたチョコを眺めていたが、眠そうに眼をこすり始め、そのままいつもの椅子までひょこひょこ歩いていき、もたれ掛りながら寝てしまった。
ロボット犬が言う。
「おそらく、ここに居る面々は、何か大きな力によって、彼にポテトチップスを食べさせるためだけに呼ばれたのでしょう」
「そんだけの為に?」
「ええ、けれど大きなことです。間違いなく」
「……そうかもね」
とひと段落ついたかに思った僕の背後で、ヒーローを自称する男が叫ぶ。
「はぁ!! そうだったぁぁあああ! 私もまた行かねばならぬところがあった!」
「え? あ、そう」
「すまない、みんな……すん……名残惜しいが……すん、ぐすん……ここまでのようだ……!!」
「う、うん……」
見ると男は何やら涙ぐんでいる。
「また会おう! だが忘れるな! 私は何時でも君たちの傍にいる! 君たちの食の安全と発育を守る、正義のヒーロー! その名は」
と言いかけたところで男の姿は光となって消えた。
「ナイスタイミングで……」
そう光の散った星空に言った直後、僕は自分の指先が光に包まれるのを見た。
「ああ、そっか、ポテチ食えたもんな。どうやら、今度は僕らしい」
「お寂しゅうございます。次元の狭間は何時でも、何処にでも開いております。またのお越しを」
「あ、うん……次はポテチの作り方、覚えてから来るよ」
椅子にもたれ掛った少年を見ながら、僕はこの奇矯な空間を後にした。
『よーし、書き終わったぁー。さ、一眠りしようそうしよう』
とワタクシは軽く仮眠を取った。その時の事だった。
『はぁ!?』
気が付くと、ワタクシは星空に四方を囲まれた物置のような場所に居た。そして、ロボットの犬が駆け寄って来て言ったのだ。
「ようこそ。ここは次元の狭間です。突然で申し訳ありませんが……アーモンドチョコレートの作り方をご存じありませんか?」
どう考えても難しいじゃないですかやだぁぁぁああ!! 起こしてぇぇぇええ!!
この落ちは有りなのだろうか?
色々調べ乍ら書いたので
出来ればかの少年皇太子には美味しい物を食べさせてあげたかったし
将校さんは良い人に書きたかった
というわけで
メタ的に言って名前が決まってないヒーローに道化を演じてもらいました
いやぁ……
労力に見合わない作品だなぁ……
本当は飯テロをかますぐらいのを書きたかったのですが
如何せん体力の限界が見えてくるレベルに難産だったので
(いや、もっと早くに取り掛かってれば、メシテロかます為に体力を温存もできたんじゃないかな?)
……あーうー、はい、その……すみません
というわけで、ワタクシはカカオからカカオマスを夢の中で抽出する作業に入ります。探してください ←
ここまでお読みいただき ありがとうございました