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ちびっこは神様の愛し子。  作者: 瑠璃夢
【第3章】ルナーという存在。
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不安な初めての夜。



別部屋に移動したリクとカイは、向かい合う形でソファーに体を沈めると、カイは持っていたトレイをカチャリとテーブルに置きました。




「・・・それは?」


「ええ。初めての夜に、るうが不安で眠れないといけないと思って沈静の作用があるお茶を用意したのですが、ふふ。どうやら必要なかったようですね。」




カイは初めて会った時のるうが、とても不安そうにリクの後ろに隠れて恐る恐る自分を見上げてきた時のことを思い出していました。




「ああ。俺も1人にしてしまうのは不安に思うんではないだろうかと思っていたんだが、思ったより落ち着いていて安心した。この分なら、披露目の儀式でも問題ないな。」


「そうですね。ですが、意思疎通のできるルナーは久方ぶりですので、王都や魔導協会への通達は慎重にするべきでしょう?先代の事件のようなことにはならないとは思いますが・・・。」


「ああ・・・。痛ましい事件だったな。今でもあの頃の爪痕(つめあと)は各地に名残があるからな。」


「そうですね・・・。ですがあれは、どちらかを選択しなければならなかったのです。ですがそれでも、我々の判断は神を怒らせてしまったようですね。」




リクとカイは俯きがちにぽつりぽつりと会話を続けますが、その表情はるうの起きていた時とはまったく違うものでした。




「あんな歴史はもう二度と繰り返さないと誓った。もう決して間違えてはいけない。」


「はい。私たちはルナーを、るうを(まも)る義務があります。この命に代えても。そのための竜騎士であり、守人なのですから・・・。」




カイとリクは視線を合わせて静かに頷きあいますが、その時カイより聴覚(ちょうかく)(まさ)っているリクがピクリと反応しました。




***




薄暗くランプを消された部屋で、すやすやと眠っていたはずのるうでしたが、ピクリと睫毛を震わせた後、ゆっくりと目覚めました。




「んぅ・・・。り、く・・さん・・・?」




むくりと体を起こして、くしくしと(まぶた)を擦った後、夜目の利かないるうはキョロキョロと周りを見渡しましたが、人がいる気配はありませんでした。


大きなベッドからもそもそと滑り降りたるうは裸足でぺたぺたと大きな扉に向かうと、重たい扉をなんとか開いて廊下に顔を覗かせます。




「りくさん・・・。かいさん・・・。いないです。」




急に不安に襲われたるうは、暗い部屋でランプを灯すことも出来ずにふるりと震えると、暗い部屋より幾分(いくぶん)か明るい廊下に足を踏み出しました。




リクもカイもるうのいた部屋からそう遠くない3部屋ほど隣りで話していたのですが、この屋敷の部屋を把握できていないるうにとっては、この屋敷にというよりも、この世界に独りきりにされてしまった錯覚さえ起こしていたのです。




「や・・・。こわい。」




思わず両手で耳を塞ぎながらも、廊下をぺたぺたと裸足で歩き出したるうは、人のいそうな場所を求めて視線を彷徨わせました。


ぽたぽたと止められない涙にも気づけないくらい、今のるうは頭の中が迷子状態なのです。




広い屋敷の廊下を十数メートル歩いても、1人も見つけられなかったるうは、廊下の端で(うずくま)ってしまいました。




「りくさん・・・かいさん・・・なみさん・・・っ。ふぇ・・・っ。ぱ、パパ、ママ・・・。どこ、いるの・・・っ?」




耳を塞いで蹲っていたるうには、遠い部屋で扉が開いた音は聞こえていませんでしたが、パタパタと駆けてくる足音が近づいてきます。




「るうっ!どうしたっ!?」


「っ!?るう?何かあったのですか?るう・・・?」




近くで聞こえた声に、るうは弾かれたように顔を上げると近くにあるリクとカイの心配そうに眉間に皺を寄せている顔が飛び込んできました。




「っ!?~~~・・っ!ぅ・・・っ。」




るうは不安から安心感にシフトして、クシャリと顔を歪ませると同じように片膝をついてしゃがみこんでいたリクとカイの首に抱きつきました。


リクはるうの背中に手を回して、ぽんぽんと跳ねるように撫で、カイも一瞬息を詰めたものの、優しくるうの頭を撫でたのでした。





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