本来の優先度。
少し更新曜日がずれましたが、なんとか更新です。
いつもいつも読んでくださって、嬉しい感想もたくさんありがとうございます!
メンタルが最弱で、持ち上げられると原動力としてフル回転できる面倒な私ですが、今後ともよろしくお願いいたしますヾ(*´∀`*)
【リク視点2】
るうの部屋の扉の両側に立っていた護衛騎士が驚いた顔をしていたのを、まるっと無視して扉を勢いよく開くと、カイの腕の中で顔を真っ赤にして泣いているるうが見えた。
涙で濡れたその真っ赤な目を見た瞬間、猛烈な怒りが込み上げてくるのが分かった。
カイ、お前がついていながらどうしてこうなる?どうしてるうは泣いているのだ。
あぁ、5日も会えなかったるうにやっと会えたのに、久しぶりに見た表情が泣き顔とは・・・。
俺はカイに怒りをぶつけようと口を開いたが、それより先にるうがくしゃりと顔を歪めて俺に両手を伸ばしてきた。
小さな手を伸ばしたるうを抱き上げると、るうは必死に俺の首に腕をまわして泣きじゃくるが、その小さな腕では俺の首を一周できなかったようだ。
ずり落ちそうになる手で必死に首にしがみ付くるうに、俺は一瞬怒りを忘れそうになった。
これは・・・相当、くる・・・。
暫く無言になっていた俺は、盛大なため息が聞こえたことでハッと我に返ったが、視線をカイに向けると、呆れたように無表情で冷めた目でこちらを見ていたカイと目が合った。
「おいっ。るうがこんなに泣いてるんだぞっ!涼しい顔して紅茶飲むな!!」
「・・・はぁ。やっと来たかと思えばそれですか?どちらかと言えば感謝してくれてもいいくらいです。」
カイがワザとらしいほどの態度で肩を竦ませて、大きなため息をつくが、俺はワケが分からないといった表情で眉を寄せてカイを見つめるしかない。
クソっ。何もかも悟ったという目をしてんじゃねぇっ!!
説明も無しにこの状況で無言だと俺はどうすればいいというんだっ!?
クスンクスンと泣き続けて離れたがらず、首にしがみついたままのるうの背中を支えつつ、無言で口を閉ざしたままのカイの態度に焦れた俺は、とりあえずるうを抱きこんだままカイの向かいのソファーに腰を下ろした。
まだ窓の外は雨が降ってはいるが、先程まで響いていた雷鳴は遠ざかり、ゴロゴロと低く小さく唸るだけだ。
カイが静かに立ち上がると、クスリと意味深な微笑みを口元に浮かべて扉に足を向けようとして、俺は慌てて声をかける。
「っ。おいっ。どこへ行く気だ。」
「リク。あなたがここにいるということは、まだ扉の前の護衛しか知りません。いつ如何なる時もルナーはこの世界の誰よりも優先されます。その事をここにいる者たちも、今一度理解し直す必要があると思いませんか?与えられることが当たり前だと、意思疎通の出来るルナーが生まれたことで、何か勘違いをしている者が多いようです。ふふ。私はあなたの代理として会議に出ます。それでは。」
息つく暇もないまま扉が閉じると、しんと静まり返った部屋にるうの鼻をすする音だけが小さく響いた。
カイの言うとおりだ。
俺が会議に出ている間も、あの連中はこぞってるうをルナーとして持ち上げ、るうが望んだわけでもないのに『見返り』を求めていた。
こんなにも崇めているのだから『平穏』と『恩恵』を与えろと。
ギリリと奥歯を噛み締めると、るうは落ち着いたのか、恐る恐る俺の顔を見上げてくる。
うるうると潤んでキラキラと反射する大きな瞳はハチミツ色で今にも蕩けてしまいそうだ。
「ごめ、なさい。なくの、だめ。おそら、ないて、こわく、なるです。」
「るうは我慢しなくていい。泣きたい時は泣け。ただし・・・。理由はちゃんと言ってくれ。でないと、俺は心配する・・・ぞ。」
すべてを言い終わる前に、またるうの大きな瞳からは涙の膜が盛り上がっていく。
「あい、たかっ・・・ですっ。」
「うん?」
小さくしゃくりあげながら、顔を赤くして眉を下げてくしゃりと表情を崩したるうの頬を両手で挟んで、親指で次々零れ落ちる涙を拭ってやりながらも、聞き取れなかった言葉を聞き返すと、るうはエグエグと詰まりながらも必死に言葉を搾り出す。
その言葉に俺は堪らない気持ちになったんだ。