魚人族のシリーさん。
なの様。シリーさんという素敵なお名前を考えてくださりありがとうございました!
大切に使わせて頂きます(嬉)
先程までの騒ぎが嘘だったように私は今、リクさんのお膝の上で状況を把握中です。
なんでもリクさんは突然私がサディさんと一緒に消えてしまったことで、この大きな王城内を探し回ってくれていたとか。本当に心配させてごめんなさい。
その後カイさんの予想でサディさんのお仕事場へ来たところ、耳の良いリクさんは扉を開ける前に私の泣き声が聞こえた事で頭に血がのぼってしまったらしいです。
思わず魔力制御も忘れて扉を吹き飛ばしてしまったみたいですけれど・・・またご機嫌がよろしくないようです。
さっきまでの事を考えていたら、なんとか片付けを終えたサディさんが目の前の一人用のソファーでどかりと座ってため息をつきました。
「まったくもうっ。なんで僕が片付けるのさ!扉吹き飛ばしたのはリクじゃない。あー。もう疲れちゃった。」
「当然です。竜騎士であり、ルナー様の守人であるリク様にそのようなことさせられません。ましてやルナー様を連れ去るなどもっての他です。とんでもないことしてくれやがりましたね。」
「あー。はいはい。僕が悪かったよ。シリーもさ。ところどころ毒舌になるのやめてくれない?」
ぽかんとそのやり取りを見ていた私は、シリーさんと目が合って慌ててリクさんに視線を戻しました。
このとても綺麗な男の人は、サラリと腰まで伸びたサラサラの水色の髪に翆色の瞳、そして特徴的な耳は予想した通り、魚人族の方でした。
魔法省の長であるサディさんの右腕と言われているそうですが、実のところサディさんのやらかした?事の後始末と暴走阻止、言わばストッパー役と認識した方がいいみたいです。
「ルナー様。本当に後先考えないうちの長がご迷惑おかけしてしまい申し訳ありませんでした。普段はここまで突っ走ったりしない長なのですが・・・。」
「ちょっとシリー。なんか、うちの子が迷惑かけてすみません。本当はうちの子とってもいい子なんですけどー、とかいう感じに聞こえるのは気のせい?」
サディさんのツッコミにも何のその、シリーさんはスルー状態でこちらに頭を深く下げておられました。
「い、いえ。あの。へいき、でした。だから、あやまりゃ、ら、ないで、ください。」
「るう。お前の中でサディがまだ『友達』の括りに入るなら、もう絶交してしまえ。」
リクさんは黒い笑みを浮かべていますが、一番申し分けなさそうにしておられるシリーさんの前では、こちらがなんだかごめんなさいな気分になってきてしまいます。
どうすればこの場が丸くおさまるのかと考えていた時、ノックの音が聞こえてナミさんが慌てた様子で入ってきて、そのすぐ後から護衛のバルさんが足早に歩いてきました。
「ああっ。るう様っ!良かったです。本当に、心配したんですよ?」
「ふぇっ!?」
「こらっ。ナミ。だから俺ごと抱きつくのはやめろ!るうが潰れる!!バルっ。るうを保護しろ!」
「は、はいっ。るう様。こちらへ。」
バルさんが慌ててリクさんの腕の中から私を救い出してくれましたっ。
ナミさんにぎゅうーってされるのは嬉しいのですけど、ナミさんは心配してくれる時、力加減がどうもうまく出来ないみたいです。
バルさんの私より少しだけ低い体温はなんだか心地いいです。
前世・・・になるのでしょうか、以前の私ならきっと男の人にだっこされるのも恥ずかしいと思うのでしょうけど、やっぱり生まれたてのこちらの世界、こうして誰かの体温を感じている間はとても安心します。
目の前のリクさんとナミさんが言い争っている向こうでは、サディさんはまた始まったという呆れたお顔をされていて、そのすぐ斜め後ろに立っているシリーさんは微笑ましそうに見ておられました。
なんだかくすぐったい気持ちになってバルさんの胸元をきゅっと握って見上げると、バルさんの優しい片目と目が合って、バルさんは優しく目を細めて微笑んでくれました。