力技。
みんなを驚かせることに成功したサディは楽しそうにケラケラと笑いながらローブのフードをおろすと、『悪気はないんだよー?』とぺロリと舌を出して形だけの謝罪をしました。
「あはは。ごめんねー。だってルナー一行の旅行程を聞いて、なんだかまどろっこしく感じちゃってねー。そんなに長くかかっちゃうと逆に疲れちゃったりするでしょ?るうは僕の大事なおともだち?だからね?籠ごと王都に転移でもしちゃおっかなーなんて♪まあ、僕がるうに早く会いたかっただけってわけじゃないからね?」
「「・・・・は?」」
みんながサディの言葉をポカーンと口を開けて聞いていましたが、リクがピクリと眉を震わせながらサディのローブを鷲掴みにしました。
ですが、そういえば籠の中にしても揺れが少な過ぎるなと感じて外を見ると、既に景色は王都の門どころか広い王城の中庭のど真ん中です。
「・・・やってくれましたね。」
「規格外にも程があります・・・。」
アルとカイも諦めたようにガクリと肩を落としますが、言われた本人のサディにとっては褒め言葉以外の何ものでもないのでした。
移動している籠へサディの本体がうまく転移してきたのかと思えば、動いている籠自体をひっ捕まえて王都へ転移させるなんて力技もいいところです。
しかも転移させたのがるうたちの乗っていた籠だけで、周りで警護しながら走っていた籠は置いてきたというではありませんか。
護衛対象である大型の籠が瞬時に消えたことで、護衛騎士たちは翻弄されているのだろうと想像すると、なんとも言えない気持ちになるルナー一行。
もう一度転移魔法で他の騎士たちの籠も連れてこれないのかと確認したところ、サディは面倒そうに手を振りながら『えー。もう無理無理。だってすごく魔力使うんだもんー。』とのたまったのです。
「はあ・・・。仕方ない。早馬を出してるうが無事だと伝えてくれ。すまないがログ、頼めるか?」
「警備にあたっていた騎士たちは王都での護衛は任されていない。帰還させてよろしいか?」
「ああ。ログはるうの警護を頼みたい。すぐに戻ってきてくれるか?」
「は。仰せのままに。あの距離なんで早馬で走っても往復2日はかかる。その間のるう様の警護はルイ、バル、頼んだぞ。」
ログは、最初はリクに。後半はルイとバルに確認を取り、2人が頷いたことで小さく頷くと馬に跨り走っていってしまいました。
るうは少しだけ次の港町のリクが教えてくれた露店などを楽しみにしていたためガッカリしましたが、それ以上に目の前に聳え立つ白を基調とした煌びやかで大きな王城を見上げてドキドキと高揚する胸を押さえます。
すると突然ふわりと視界が上がり、頭の上から楽しそうな声が降ってきました。
「るーう♪うわぁ~やばいなぁ。超可愛いーっ。そんなツヤツヤの大きな目で期待した顔されると色々案内してあげたくなっちゃうじゃない。」
「ふぇっ!?さでぃ、さんっ!?あっ。」
るうが焦ってサディの顔を見上げると、サディは無詠唱で魔法を発動させ、サディとるうの周りに渦を巻くようにふわりると白い光の粒と風が舞い上がります。
慌てたるうが声を上げたことに周りの者が気づいた時には既に遅く、サディはるうを抱えたまま姿を消してしまったのです。
「るうっ!くそっ。サディの奴、るうを連れたまま転移しやがった!」
「はあ・・・。まったくいい加減にしてほしいですね。まあ、どこに転移したのか大体見当はつきます。」
リクとカイは苛立った様子でため息をつくと、ナミにるうの部屋の用意を、アルには到着したことの報告を任せてルイとバルを連れて歩き出したのでした。
(仮)様からの頂き物を挿絵に使わせて頂きました♪
お料理中のるうが可愛くてエプロンドレス風にしてみましたとメッセージ頂きましたっ。
嬉しいお言葉&素敵イラストありがとうございました!