アルさん遊び過ぎです。
【バル視点】
私はバル。
普段は『俺』、仕事モードの時には『私』と言っているが、これは私が不器用なため、切り替えがうまくできないからだ。
るう様はお優しく、聡明でとても気遣いが出来るお方でした。
私はルナー様にお会いするのはるう様が初めてですが、意思疎通が出来たルナー様がおられたということにとても驚きました。
先代のルナー様は私の故郷である土地で生きられたが、何分ご自由なルナー様だったようで唯の一度もお会い出来ませんでした。
忌み嫌われた私の瞳の色にも驚きはすれど、気味悪がるという仕草さえされなかった、とてもとてもお優しいお方。
そして今も、下級の貧民地区の子供を食事に招待し、楽しそうにお話しておられる。
お生まれになってまだ1ヶ月少しだとお聞きしているのに・・・・・・。
「レンったら!それはるうのお肉だよっ。返しなさいー!」
「だってるう、皿に入れても食わないじゃんっ。いいんだよー!」
「あ、あの。い、いいん、です。たべて、ください。」
あのクソチビガキ。
るう様のお食事を取り上げるなど、俺が問答無用でつまみ出して地獄送りにしてくれようか。
・・・・はっ。
しまった、俺ではなく私私私・・・・・。
そんな事を考えていると、私の隣りで食事を取っていたアル様が苦笑いしながら顔を覗き込んできました。
「ふふ。バルくん。何黒い物背負ってるんです?子供相手に珍しい。」
「え?そ、そうですか?わ、私は別に何も。いつも通りです。」
嘘だ。
いつもの私なら警護に徹して個人の感情など持つはずもない。
アル様はそんな私の嘘などお見通しのようで、クスクスと笑いながら『そうですか?』と言い、私の視線の先にいるるう様へ視線を向けると柔らかく笑いました。
「っ!」
この人も、るう様をとても大切に想っていらっしゃる。
ただルナー様だから大切に想われているのではなく、るう様個人に対してのとても大きな好意。
「アル様・・・。ルナー様というのは、みんなるう様のようなのでしょうか?」
「んー?るうのように?どのことを言っているのか僕には分かりかねますが、うーん、そうですねぇ。」
アル様は人差し指を顎に置くと、考え込むように空を見つめて、数拍置くとにっこり微笑みました。
「僕が知る限りの今までのルナー様たちの中で、るうは・・・・・。」
「はい。るう様は・・・・?」
言葉を止めて真剣な眼差しで私を見つめる瞳の強さに圧倒されて思わず喉がゴクリと鳴りました。
「飛びぬけて可愛いということは確かです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
にっこり笑顔で人差し指を立てるアル様に、一瞬殺意が芽生えたのは私が悪いわけではないでしょう。
「あれぇ?バルくん。どうしたんです?肩が震えていますよ?あ、それともバルくんはるうの事、ちーーーーっとも可愛くないとか思ってます?やだなぁ。」
「ち、ちがっ・・・・!」
慌てて言い訳しようとしましたが、このまま話に乗ってしまったらアル様の思う壺だと気づいて言葉を飲み込むと、アル様は一瞬きょとんとした後、大きく何度も頷いていますが、何ですかその『えー?』って顔は・・・・。
するとアル様は今度は少し大きめの声で私に問いかけました。
「ふーん。そうですか。バルくんはるうのこと、全然可愛くないと感じてるんですね。るうが聞いたらきっと泣いちゃいますねぇ。可哀想に。」
「っっ!!そんなわけないでしょうっっ!るう様は俺が今まで出会って来た誰よりも可愛らしい方ですよ!・・・・は。」
し――――――ん・・・・・・・。
ザワザワとしていた食堂が一瞬で静まり返り、一番奥の椅子に座っていたるう様が小さな特注フォークを口に咥えたまま、真っ赤なお顔で目を見開いて固まっていました。
アル様の策に・・・・や・・・・やられたっっっっ!!!!
ウサギと亀のお話で、亀をからかっている悪戯ウサギを思い出しました(土下座)