誤解を解きます。
けふん・・・。
結論から言います。
あの巨大なバスケットボールサイズのリンゴを食べきれるはずもなく、気合いと根性をフル稼働して頑張ってみましたが、結局8分の1食べるのが精一杯でございました。
味はしっかりあまぁい蜜リンゴでしたよ。
「もうよいのですか?こんなに残して・・・体調が悪いのならすぐに伝えてくださいね?」
「そうだぞ。遠慮しているのならそんな気遣いはしなくていいんだ。」
「うぅ~・・・。ほんとに、おなか、ぽんぽこりんです。くるしいです・・・。」
「「ぽんぽこりん・・・。」」
ぽんぽこりんはぽんぽこりんなんです・・・って、何故かリクさんとカイさんは固まってしまいましたが、本当にどう頑張ってももう入らないです。
「ルナー様。少食なのですね・・・。獣人の幼子でも、リンゴくらいなら食べ切れてしまいますのに。」
「えぇぇ・・・?」
ええぇ・・・獣人の赤ちゃんでもって、どれだけ大食いなんですかっ!?
「あ・・・なみさん。あの、わたし、るうっていうです。そうよんで、ください。」
「まあ・・・っ。私もお名前で呼ばせて頂いてよろしいのですか!?なんてお優しい・・・。」
是非名前で呼んで頂きたいです。
だって呼ばれ慣れない呼び名で言われると、私きっと反応出来ずに素通りしてしまいそうです。
「ああ、そうだ。ルナーが生まれたことを本来なら公表しなければいけないんだが・・・。」
「あ、そうですね。ですが・・・。幼子のるうをすぐに連れまわすわけにもいきませんよね。」
なんだか大変なことになってきました。
これからお世話になっていくのに、このまま子供だと思わせ続けるのも無理がありそうです。
「あ・・・あのっ。」
「どうした?」
「何か質問ですか?」
リクさんとカイさんは不思議そうに私の顔をじっと見ていますが・・・ここはやっぱりお話するべきですよね・・・。
「わ、わたし。あの・・・もう・・・。」
「うん?」
「あ、もしかしてまだ寒いですか?ナミ。暖かいものを用意してさしあげてください。」
「ええ。るう様。すぐにご用意いたしますので、もう暫くお待ちくださいね。」
ナミさんがワゴンを押して出て行こうとしますが、ああぁぁぁ・・・・早く誤解を解かないと・・・っ。
「ち、ちがうですっ。あの、わたし、もう・・・。もうおとなですっ。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・はい?」
リクさんとカイさんは、黙ってしまいましたが、ナミさんは何を言っているのか分からないといった表情です。
どう言ったら信じてもらえるんでしょう。
「えと。あの。わたし、ほんとにおとなで、だから、もうおっきくなれなくて。りくさんも、かいさんも、なみさんもおっきいけど、わたしのしゅぞく、もっとちいさい、です。」
「落ち着いて、はい。深呼吸してください。」
パニックになりかけていたら、カイさんが私の隣りに座ってポンポンと私の頭を撫でてくれました。
ハッと我に返ったリクさんも、カイさんの反対の私の隣りに腰を下ろして手を優しく握ってくれます。
「どうやら、嘘ではないようだな。るうの種族はこんなにも赤子のような柔肌で小さい種族なのか?」
「はい・・・。わたしは、とくにちっちゃいです。けど、りくさんたち、みたいな、おっきいひと、いないです。」
リクさんの言葉に私が小さく頷くと、カイさんも不思議そうに私のほっぺをつつきました。
「本当に柔らかな肌ですね。敵に襲われた時、これではすぐに命を落としてしまいますよ。」
「て・・・てき?」
「カイ。おやめなさい。るう様。ルナーであるあなたを傷つけようと思う者は、この世界にはおりません。ご安心ください。」
カイさんの言葉にナミさんは、私を安心させるように綺麗な微笑みを浮かべてくれました。