早々の帰宅。
るうは今、自分よりも大きな背の高い、そして自分の歳の半分の歳の2人の子供を前に困惑していました。
見た目はとても可愛いこの子たちのどこに、あの巨大な怪物魚を放り投げる力があるのだろうと・・・。
るうの護衛を命じられたバルも困惑しています。
果たしてこの奔放ほんぽうな子供たちから、無事か弱いるうを髪の毛一本傷つけずに護り通すことが出来るのだろうかと・・・。
「こ、子供たちよ。すまないがるう様はお生まれになったばかり。お身体も丈夫ではない。もう少し静かな遊戯をしては如何だろうか。」
「えー・・・?面白いのに。」
「んー。仕方ないよ。レン。でも私たち、こういう遊びしか知らないの。だから、うーん。」
レンはバルの言葉に頬を膨らませましたが、ランは納得しながらも困ったように考え込みました。
るうは申し訳ない気持ちになりながらも、自分にはあんな遊びは頑張っても出来ないと思ったので、うまく言い訳してくれた未だにるうをだっこしたままのバルを見上げてふにゃりと笑いました。
するとうんうんと唸っていたランが『そうだっ』と嬉しそうに高い位置にいるるうを見上げて顔を上げます。
「一緒に遊ぶのは難しくても、一緒にごはん食べる事はできるよね!夜ごはん、一緒に食べようよ!」
「おーっ。それいい!いい考え!流石ランだな。なあ、一緒に食おう!」
良い事を考えたと言わんばかりにキラキラと期待に満ちた瞳を向けた可愛い双子狼の子供たちに、るうは嬉しそうに頷きかけて、考えてからバルを見上げました。
「りくさんと、かいさんに、きいたほうが、いい、ですか?」
「・・・ええ。そうですね。君たちの家はどこですか?るう様の予定を確認してからお返事に参りますので教えてくださると助かります。」
「いいよぉ。3区の赤レンガのお家だよ!」
「いいよ!裏通りの4番目!」
レンとランは嬉しそうに頷いて答えると、お家で待ってないとだねと言い走って行ってしまい、バルは取りあえず戻りましょうと、来た時と同じように翼を広げ、るうを抱えて戻る事にしたのでした。
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宿屋に帰ってきたバルにリクとカイが気づくと、るうの頭の先から足の先まで観察されバルはひやりとしましたが、1つ頷かれるとほっと息を吐きました。
「ただいま、です。りくさん、かいさん。」
「はい、おかえりなさい。怪我をしていないようで安心しました。それで、バル。るうの様子はどうでしたか?町の子供と仲良くなれました?」
「え、ええ。仲良くはなれました・・・が、相手は狼族の双子で、その、るう様と遊ぶのは難しいようでした。るう様と夕食を共にしたいと希望されましたので、返事は待って頂いております。第3区の裏通りの子供でした。」
「おかえり、るう。第3区か。るう、どうだった?そいつらと仲良くなれそうか?」
リクの問いかけに、るうはふわりと笑顔を浮かべてコクコクと頷きました。
そんなるうを愛おしげに見て、カイはバルにだっこされていたるうを抱き上げるとリクに提案します。
「夕食ですか。リク、その子供たちはこちら側で招待するというのはどうです?あちらへお邪魔するのでないなら安心でしょう。」
「ああ、そうだな。バル、その子供たちの顔は分かるんだろう?子供の親に話してきてくれ。騎士団の紋章持って行ってこい。」
「はい。行って参ります。それではるう様。失礼します。」
「ばる。ありがと、でした。たのしかった、です。」
るうの言葉にバルは薄く笑うと、もう一度頭を下げて出て行きました。