兄弟みたい。
ナミさんたちが大きな荷物とか、いろんな物を籠に運び入れている中、お手伝いしようと足元でうろちょろしていたら、踏んでしまいそうで怖いとか、ゆっくりしていてと言われてしまいました。くすん。
そんな中でリス騎士さんことルイさんと目が合ってしまいました。
ルイさんは周りをキョロキョロと見回した後、私の近くまで歩いてきて、おずおずと尋ねてこられます。
「あ、あの。る、るう様。本当に俺なんかが名を呼んでもよろしいんですか……?」
「はい。そう、よんで、ください。」
コクコクと頷いた私に、ルイさんは頬を染めて嬉しそうに頷いてくださりました。
2人でふにゃりと笑い合っていると、突然大きな影がニョキっと出現したかと思うと、ルイさんの頭をガシリと大きな手が掴みます。
「いっ、痛い痛いっ!」
「おーい。1人だけサボるなんていい度胸しているじゃないか。んー?」
ぴっ!?
び、びっくりしました!!
ルイさんの頭を鷲掴みにしていたのは熊の騎士さんログさんでした。
優しげな目尻をそのままに、手の力は相当篭ってるらしく、ルイさんはバタバタと涙目で暴れていますが、なんだかお父さんに叱られている子供みたいだなぁと思ったり思わなかったり……。
3人しかいないのにこの賑やかさ、うん、すごい才能です。
涙目のルイさんを助けた方がいいのかな?なんて考えていたら、ゆったりとした動作でアルさんが近づいてきました。
「はーいはいはい。あなたもですよ。ログ。力のあるあなたが抜けるとこちらの荷運びに支障が出ます。ルイくん。君にも出来る仕事があるはずです。」
「はははは。すみませんです。どうもこいつを見てると俺の世話焼き根性が疼くんですよ。」
「ア、アルさんっ。すみません!!すぐ戻ります!!」
ルイさんはパタパタと大きな足音を立てて走っていき、その後ろから大きなログさんが歩いていってしまいました。
アルさんは小さく笑って私に向き直ると、大きな手で撫でてくれます。
「すみませんね。うちの騎士たちは人懐こいもので、すぐああなってしまうんですよ。おかげで僕は彼らの保護者扱いです。」
「ふふ。あるさん。うれしそ、です。」
そうですか?と言いながらもアルさんは穏やかな表情でルイさんたちに目を向けていました。
ログさんとルイさんが仲の良い兄弟なら、アルさんはお父さんといったところでしょうね、なんだか素敵だなって思います。
嬉しそうに笑った私と視線が合うと、アルさんは苦笑いしながらだっこしてくれました。
「るうは、そのままでいてくださいね。」
「え?どういう、いみ、ですか?」
近くなったアルさんを見上げると、アルさんは少しだけ視線を空へ向けて、んー…と考えてから私と目を合わせます。
「どんな事があっても、環境が変わっても、どんな状況に置かれたとしても、るうはるうらしくいて欲しい。という意味です。誰に左右される事も無くありのままのあなたで……。それが僕の願いです。」
「う?はい。わたしは、わたし、です。」
アルさんの伝えようとしてくれていることをゆっくり考えてから小さく頷くと、アルさんはおでことおでこを合わせて瞳を閉じて口元に微笑みを浮かべました。
「ええ。るうはるうです。僕は信じています。そのあどけない心のまま、永遠に幸福でいてくれることを。」
「ある、さん……?」
どうしちゃったのかな、アルさん。
なんだか不安そう…というか、何かを恐れている……?のでしょうか。
少なくとも私には、今のアルさんが母親を探している迷子の子供のように見えてしまいました。