出発の朝。
ルナーの雫が私の体に刻み込まれてから、ナミさんに抱きしめられ、リクさんはパパのように慈愛に満ちた笑顔で嬉しそうに抱き上げてくれて、カイさんは意外にも泣き虫さんで、うるりと瞳を潤ませて何度も頷いていました。
この印がそんなにいいものなのか、私にはまだ分かりませんが、なんだかんだで朝食を終えると来訪のチャイムが鳴りました。
ナミさんが出迎えに行って戻ってくると、その後ろについて入ってきたのは兎族の騎士団医師のアルさんと、騎士団の2番隊の隊長の狼族のジルさんと、背中に大きな茶色に少し白の混じった大きな翼を持つ騎士さん。
そして、まん丸の黒い耳があるリクさんたちよりも大きい騎士さんと、最後に入ってきたのは小さな三角の耳と大きなふさふさのしっぽを生やした小柄な(といっても普通に大きいですが)少年という感じの男の子です。
こ……これはっっ!!
アルさんがウサギさんで、ジルさんが狼さん、その後ろにいるのはきっと鷹さんか鷲さんといった大きな猛禽類的な鳥さんかと……?
そして丸い黒耳のこの方は、想像でしかありませんが…きっと熊さんです。
それからこの男の子、オドオドしている感じといい、小さく三角でピクピクしている耳といい、このくるりと内巻きで立ち上がったしっぽといい……間違い無くリスさんだと思います!
うわぁい……森の仲間たち大集合って感じですね!!
リクさんのお膝の上でチョコンと座っている私を見た騎士さんたちは、目を見開いていますが、何をそんなに驚いているのでしょうか?
すると、リスさんだと思われるお耳をピクリと動かした騎士さんが、オドオドしながら問いかけてきました。
「あ、あの。そのお人形みたいな小さな子供は……?」
「ん?お前は任務の内容も聞かずにここにくる位、能無しの騎士だったのか?優秀で信頼のおける騎士しかこの任務に当たらせるなと言っておいたんだが。」
リクさんが不機嫌そうに眉を寄せると、慌てたようにブンブンと首を振るリス騎士さん。
「い、いえっ。生まれたてのルナー様をお守りするということは聞いていますっ。ただ、その……。小柄な僕たちリス族の生まれたての赤子よりも、その、お小さい幼子なので、驚いてしまって……。」
ええええ……っ!?
小さいとは思っていましたけど、私、生まれたての赤ちゃんよりも小さかったのですか……。
ああ、それであの『世界の番人』さんは、子供らしくしていないとと注意してくださったのですね。
確かにおぎゃあと生まれた赤ちゃんより更に未熟児的な私がしっかり大人発言なんて、少しホラーだし気味悪いですよね。
この舌ったらずな口調も仕方ない補正だったわけですか。
ええ、そうですよね。納得しました。
じゃあ、舌が回らずに言い直すのもやめた方がいいでしょうけど、うぅっ。なんだか屈辱ですっ。
羞恥心なんて捨ててしまいなさいと、私の中の何かが弾けていますが、うん、捨ててしまえば開き直れるかもしれません。
「よ、よろしく、おねがい、しましゅ……。」
ぎゃあっ!?
いきなり噛んでしまいましたが、周りの微笑ましいものでも見る視線が一番羞恥心に油を注いでくださいましたっ。
私は子供っ。私は子供!