専属世話係?
リクさんとカイさんは言います。
「るう・・・。そんな親の敵のように睨むな。」
「それにしても・・・。リンゴが大きく見えますね。」
リクさん、そんなこと言われても『これ』はさすがに無理があります。
カイさん、これを『リンゴ』と呼ぶにはいろいろと問題すぎます。
私はテーブルの上に鎮座しているバスケットボールくらい大きな、『りんご』と呼ぶには大き過ぎる真っ赤な実とにらめっこ中でした。
リクさんが私のために使用人さんたちにお願いして用意してくれたものなのですが、スイカ以上にどでかいこの『りんご』をどうしたらいいのか悩んでいます。
「あの・・・。これ、りんごですか?」
「え?そうですよ。るうはリンゴを知りませんでしたか。」
いえ、知ってますとも。ですが、この大きさが問題なんです。
これ丸かじりしろと言われてもできませんよね・・・?
「ああ、るうはまだ生まれたてだから齧るには早すぎたか・・・?果実の汁の方がよかったか?」
「え・・・あ、いえ。きってもらえたら、たべるです。できればちいさく・・・。」
「るうの口は小さいですからね。大人になるまではカットした方がよさそうですね。ナミ。いますか?」
カイさんが少し大きな声を出すと、またまた大きな女の人がきました。
明るい藍色の髪を綺麗に結い上げた、ふわりとした大きな深い紺色の瞳の美人さんです。
「ルナー様。お初にお目にかかります。メイドのナミでございます。」
「るう。君の世話係のナミで、私の姉です。よろしくお願いしますね。分からないことがあれば私やリクに聞きにくいことや、言いにくいことはナミに相談するといいですよ。」
「は、はい。よろしく、おねがいします。」
カイさんのお姉さんですか。
そういえば何となく雰囲気や顔つきが似ている気がします。
この世界には男女どちらも美人さんや大きい人が多いのでしょうか?ナミさんでさえも多分、身長は2m20cmくらいあるのではないでしょうか。
確かにこんな世界では、140cmもないくらいの私では幼児だと思われても仕方ないのかもしれません。
取り合えず、ナミさんの嬉しそうな視線をどうしようかと思った私は、日本人の得意技である愛想笑いでふにゃりと笑ってしまいました。
「るうっ。なんだその笑顔は。可愛すぎるぞ。」
「ふぁっっ!?」
リクさんが釣れました・・・くすん。
きゅうーっと子犬でも抱きしめるような勢いですが、力が強すぎますーーっっ!
「りくさん。く、るしです。」
「す、すまないっ。」
「リク。るうは生まれたてなのですよ。そしてルナーは決して傷つけてはいけません。気をつけてくださいね?」
いえ・・・そこまでひ弱ではないのですが、カイさんの表情はただ叱るというよりは、そう、もっと危機感が見え隠れしていました。
「とにかく、ルナー様はこの世界に生を受けたばかりなのですから、お食事にいたしませんか?」
ナミさんがにこやかにリクさんとカイさんの間に入りますが、この2人の大きな体の間に割って入れるなんて、ナミさんも相当凄いです。尊敬です。
「あ、ああ。そうだったな。取り合えず食事の準備が整うまで、りんごを食べるといい。」
「そうですね。ナミ。このリンゴをるうが食べやすい大きさに切り分けて頂けますか?」
「ええ。分かったわ。ルナー様。もうしばらくお待ちください。すぐに用意いたします。」
ナミさんは、にっこりと笑って大きなリンゴを片手にスルスルとワゴンの上でリンゴを捌いていました。
捌くっていう言い方もいかがなものかと思いますが、私から見たら大きなマグロを華麗に捌いていくガッツある板前さんに見えたんですよ・・・。