謎の発光体。
『……ねぇ。……ねぇってば。』
誰かの声が聞こえる。
とても遠くから聞こえるようで、耳元で囁かれているような、大きく頭に響くような不思議な声。
私を呼ぶのはだぁれ……?
薄っすらと目を開くと、薄い若葉のような黄緑色の光がもやもやと浮かんでいました。
一瞬、幽霊かと思った私はびくりと身体を強張らせてしまいましたが、なんとこの光のもやもや、慌てたように喋り出しましたよ。
『ちょっとちょっとっ。騒がないで!幽霊でもなんでもないってばっ。』
「ふぇっ!?」
驚いて周りをきょろきょろとしてしまいましたが、まだ夜明け前のようで、お部屋の中は薄暗くて、その声の主だと思われるもやもやだけが光っていました。
なにコレ怖い。
『もう。そんなに驚かないでよ。俺たち何度か出会ってるでしょ?』
「……え?」
不思議に思って首をコテリと傾げると、光のもやもやは心なしか呆れたように蠢きました。
なにコレ怖い。(2回目)
『君が幸せだと感じた時、俺は君の傍にいたのに気づいてくれてたんだよね?』
「…………。…………ぁ。」
もしかして、嬉しい気持ちになった時、視界の隅にキラキラとした光が見えた気がしていましたが、あの光がこのもやもやさんだったのでしょうか?
『さっきから俺のこと、もやもやもやもや言ってるけど……。心の声駄々漏れだからね?』
「ええっ!?」
もやもやさん……ではなくて、この方は私の心の声も聞こえているみたいです……。
なにコレ……(略)
『はぁ……。まぁいいや。君ってば本当に可愛いなぁ。大人のつもりでいるけど、この世界の者たちからすれば赤ん坊同然なんだから、あんまり大人ぶっていると変なおじさんに連れて行かれちゃうよ?っと、本題から大分脱線してしまったね。』
もやもやさんは、ぱぁっと光を取り込むと、15歳前後の少年の姿になりましたっ。
驚きですっっ。
銀色のサラサラのショートヘアに少しだけたれ目がちな金色の瞳、ほわぁ……またもやイケメンさんですっ!将来が楽しみですっっ。
ですが淡い黄緑色の光が彼を包んでいるため、残念ながらちょっとしたホラーです。
なにコレ…(略っ)
『るう。俺たちの可愛い愛しい娘。この世界で生きることを選んでくれてありがとう。君がこの世界で幸せに生きること、それが俺たちの、そして民たちの願い。君が君らしく生きられるよう俺たちは君にルナーの雫を届けに来たんだよ。』
選んだ?
誰が?
私が……?
俺たちの娘って、この少年が神様?
というか私のパパ?え?えっ!?
それにこの方、『俺』ではなくて『俺たち』って……。
神様ってそんなにいっぱいいるの?それにルナーの雫ってなんですか?
頭の中が迷子になりかけていると、神様?はクスクスと楽しそうに笑いました。
『いいよ。説明してあげる。守人やこの世界の人には俺たちの姿は見えないから少し勘違いされてるみたいだね。』
「かん、ちがい、ですか?」
『そう。俺たちはこの世界を満たすために存在するもの。俺たちはどちらかと言えばこの世界の番人なんだ。確かに君をこの世界に連れて来てしまったという意味では彼らにとってはルナーを産み落とした神と認識されているかもしれないね。』
人間がいない世界というだけでもファンタジーなのに、更に世界の番人さんまで登場してしまいました。
っていうかですねっ。
雫って何ですかーっ!?