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ちびっこは神様の愛し子。  作者: 瑠璃夢
【第10章】本来のルナー様。
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大きな一歩。




【リク視点】




ルナーの式典、生誕祭の話を本当はしたくなかった。




「わかり、ました。せーたん、さい?しないと、ですね。」




ほらな。


るうはどこまでも優しい。




俺がこの話をしてしまえば、戸惑いこそするものの必ず了承の言葉が返ってくるのだろうとは予想していたのだ。


前もって断ってもいいんだぞと伝えていたにも関わらず……。




ルナーが意思疎通出来るとなると、俺たち守人はルナーの意思を確認する必要があるが、ルナーが意思疎通出来ない場合は生誕祭はルナーの意思など関係なく行われる。


大昔、俺たちこの世界の人間と言葉を交わせたルナーは一体どういう会話をし、どんな気持ちでこの世界と関わってきたのだろうか。




考え込んでしまった俺の膝の上で、るうは居心地が悪そうにもぞもぞと動いて、俺はるうを見下ろすと不安そうに大きな琥珀のようなとろりと蕩けそうな瞳が俺を見上げていた。




生まれたての幼子よりも小さく、か細く、繊細で、純粋。


こんな小さなるうをアリエスを、世界を救う神の娘として本当に担ぎ上げていいのだろうか。




今までは、俺やカイとアルで守りきれると自信を持って確信出来ていたというのに、このアリエスという世界にはない知識で甘味を作り出したるうに俺は危機感を覚えていた。




るうは唯の存在であるルナー。


幸せでいてくれれば場所はどこでもよく、唯このアリエスに存在してくれているだけで、それだけでいいの存在だったのだ。


それは周知の事実だが、るうはただのルナーではない。




可愛らしく、庇護欲をそそり、この世界には有り得ない知識を持っている。


誰もが手に入れたくなるだろうし、不幸にはしないだろうが、ああだこうだと気を引いて手に入れようとする(やから)も出てくるだろう。


何より小さいため攫い易い。これは余計か。




本当なら、このままずっと騎士団や俺たち守人が護って、甘やかして、このままこの屋敷に閉じ込めてしまいたい。




……だが、伝える義務がある。


どうかるうの口から『ここにいたい』と、『生誕祭など出たくない』と、言って欲しかった。


一度、表舞台に出てしまえば、途中で降りることは許されないのだから……。




「りく、さん?」


「るう。本当にいいのか?生誕祭は一ヶ月も続くし、その間王都に滞在することになる。ナミはるうの世話係として同行するが、屋敷を離れることにもなるぞ?」




まだ俺はるうに『ここにいたい』という言葉を言って欲しくて食い下がってみるが、るうはきっとそこまで大事(おおごと)だとは感じていないのかもしれない。




「りくさんと、かいさんは、いてくれる、ですか?」


「守人だからな。俺たちはるうから離れたりはしない。アルもるうの主治医として同行する。護衛は俺たちでも十分だが、念のため騎士団から数名抜擢(すうめいばってき)して連れて行く。遠くからの警護は王都の騎士たちが担うことになるだろうがな。」




静かに話す俺に不安を感じたのか、俺とカイはどうするのかという言葉が出てきたが、俺たちはるうから離れたりする予定はない。




それにホッとしたのか、可愛らしくるうは華が咲いたように笑顔になる。


くそっ。


人の気も知らないでこのやろう……可愛いな!




「こあ、こわく、ないです。りくさんと、かいさん、みんなも、いてくれる、から。へいき、です。」




そう言って本当に嬉しそうに笑ったるうの周りに祝福の気配が強まって、心からるうは俺たちを信頼していることを感じた。




「っ!あ、ああ。るうが幸福であるならば、俺は、俺たちはるうから決して離れたりはしない。」




俺たちにとっては動いてもいない距離でも、るうにとっては、とてつもなく大きな一歩。


その大きな一歩は、俺たちを信頼し、るうは俺たちの手を取り、誰も欠けていないことを確認してから慎重に踏み出す。


そんな大きな歩みなのだろう。





リクさん視点だと気持ちよくお話が進みますね……。

るうが上手くお話出来ないせいでもあるのですが、私的にも○○視点は楽しいです^^


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