魔法ってすごいっ!
騎士団へ行ってから3日目の朝、ナミさんが起こしにきてくれて、着替えを済ませて、恥ずかしながらいつも通りナミさんに抱っこされて朝ごはんに向かうとリクさんとカイさんがニコニコしながら待っていました。
「?なにか、あったですか?」
「まあな。とにかくほら、座れ。」
「はい。どうぞ。まずは朝食をしっかり食べてくださいね。」
不思議に思って質問しましたが、カイさんがナミさんから私を受け取ると、私専用の椅子に座らせてくれて、またまた私専用に作られた小さなフォークを渡してくれました。
うう、ただでさえ身長が小さいのに、こんなに甘やかされて歩くこともしていなかったら子ぶたちゃんになっちゃいそうです……。
もそもそと相変わらずの薄塩味のお肉と、私用に届けてもらっているニンジンとレタスを食べて、おなかも満たされると、今度はさっきのリクさんたちの態度が気になりだしました。
じーっと見つめていると、リクさんは苦笑いをして話し出します。
「大分時間がかかってしまったが、るうのキッチンが出来たぞ。」
「っ!!ほんと、ですか?」
「ええ。今日からもう使えますよ。取りあえず、痛みやすいものやバター、卵などはもうるうのキッチン部屋の魔冷庫に入れてあります。」
待望の『るうのキッチン部屋』の完成を聞いて、私はいそいそと足掛けつきの椅子から滑り降りると、キッチンに向かおうとしましたが、走り出す手前でリクさんに抱き上げられてしまいました。
「るう。お前この間、苦労しまくって厨房まで歩いたことをもう忘れたのか?」
「あうっ。」
痛いところを指摘された私は大人しく、リクさんよりは魔法の扱いが上手だというカイさんと3人でキッチンに向かいました。
「う、わぁ……っ!!」
どのお部屋の扉よりも低くついているドアノブに軽い扉を開けると、想像していたキッチンよりもすごくすごく可愛らしいキッチンに仕上がっていました。
私のお部屋を改装してくれた職人さんたちが今回も大活躍してくれたみたいで、以前のようにそわそわと私の様子を覗っています。
「ど、どうですか?お気に召してくださいましたか?」
「もし不備がございましたら、すぐに知らせてくださいっ。すぐに対処いたします。」
「もう少し低めの方がよかったですか?」
不安そうに言ってくださる言葉に、ほんわりと暖かくなる胸をきゅいっと押さえて、嬉しい気持ちを少しでも伝えたくて、精一杯の言葉を紡ぐ。
「とても、すてきで、かわいい、ですっ。みなさん、ありがと、ございます!たいしぇ、たいせつに、つかわせて、もらいます。」
「「「っっ!!」」」
嬉しそうに職人さんたちは何度も何度も頷いてくださり、何かあればいつでも手直ししますと言い残して出て行ってしまいました。
嬉しい気持ち、ぽかぽかする心、伝わっていると嬉しいなぁ。
設備、聞いていたより素晴らしかったです。
魔石を加工して作られた小さな石板のついたオーブンは、私でも指先でその板の表面に設定したい温度の数字を書くだけで一瞬で余熱完了になるものや、魔冷庫という魔石を埋め込んだ冷蔵庫は、なんと冷凍庫まで完備されておりました。
そして以前の世界では、本当にちゃんとしたお店や、専門学校にしかないような自動泡だて器などもあって、その大きさもちゃんと私用のボールの大きさなどに合わせて作られています。
あ、フードプロセッサーやジューサーらしきものや、可愛らしい耐熱食器や洗浄機なども備え付けてくれていました。
洗い終わった食器なども、洗浄機の前に設置されている可愛いタイルの敷き詰められたワゴンの上に置くと、勝手に食器たちが元通りの棚に自分でふわふわ戻ってくれるそうですっ(大興奮)
魔法ってすごいっ。
もう至れり尽くせりですねっっ!
後に、これだけ凄い魔石を使った器具たちは、王城でしか使われていないことを知って涙目になるのは、もう少し先のお話です。