ひとりでできるもん。
はい。
またしてもるうです。
作戦1はリクさんに捕まって大失敗に終わりました(あの後ナミさんに泣かれて、カイさんにも怖い笑顔頂きました)。
やっぱり私には調理器具は大きすぎて危ないそうです。
ですが諦めませんよっ。
美味しいものを食べるためなのです。
ここで諦めちゃったら甘いお菓子は、一生お砂糖のかたまりだけになってしまいますっ。
こうなったら作戦2移ることにします。
子供(だと思われている)の特権を使ってでも、何かの形で説得して分かってもらうしかないと考えました。
名づけて『ひとりでできるもん』作戦でございますっ(あら懐かしい)。
精神的ダメージが数倍になって私に返ってくるという、なんとも悲し恥ずかしい技だと思いますが、思いますと言うのはそんな作戦、前世?でも今世でも試してみたことがないからです。
では……いざ、出陣ですっ。
狙いは……あなたです!
「かい、さん。」
「おや?るう。もうお腹が減りましたか?食事を用意させますか?」
みんなの集まるお部屋で何かの書類に目を通していたカイさんに声を掛けてみると、カイさんに勘違いされてしまい、ふわりと抱き上げられて高いたかーいとされてしまいました。
「あう…っ。あ、あの。ほち…ほしい、もの、あるです。」
「ええ。厨房で自殺行為する方法以外でしたら言ってみてごらんなさい。」
優しげに細められた瞳の奥が笑っていませんーーーーっ!?
こうなったら、ひたすら交渉あるのみです。
「おりょり、あぶない、わかりました。」
「そうですか。るうはいい子ですね。」
「でも、おりょり、してみたい、です。」
「……。」
カイさんは黙り込んで私の顔をじーっと見てきますが、だっこされて足がブラブラしているので逃げられません。
計算ではなく本気でどうしようと思いすぎて瞳が潤んできてしまいましたが、諦めませんよ。
「でも、こっくさんの、どうぐ、おっきい、から。」
「ええ。そうですね。とてもるうに使いこなせるとは思えません。」
コクコクと一度肯定して頷くと、カイさんはほっとした表情になりました。
「だから、わたし、つかえる、おままごと、セット。ほち…ほしい、です。ちっちゃいの、ほしい、です。」
「るう……。そんなに諦められないほど、ですか……。おままごとセットですか。はぁ……。ですが、ねぇ。」
「どうしたんだ?そんなとこで。」
「随分賑やかね。」
困った顔のカイさんと、意地でも子供の我侭で、調理道具と言いたいところをぐっとこらえて『おままごとセットがほしい』と言う私が見つめ合っていると、扉が開いてリクさんとナミさんが入ってきました。
カイさんは困ったように苦笑いして、私を片腕でだっこし直すと、リクさんとナミさんに向き直ります。
「ええ。それが、るうがですね。小さなるうの体に合ったおままごとセットが欲しいとおねだりされまして……。本当に使える機能があるものをご所望のようですよ。」
「……るう。まだ諦めてなかったのか?」
「ふぇ……っ。」
リクさん睨みつける顔があまりにも怖くて、こんなことで泣くなんて普段の私なら有り得ませんが、この体は一応生まれたてですのでやっぱり幼児と同じだったようです。
ぽたぽたと涙を溢れさせてどんどん顔が高潮していく私に3人はギョッとしました。
そんな時。
「いいじゃありませんの。職人たちの腕の見せ所ですわね。」
「ナミっ。何を言うんつもりだ。」
「……ナミ。ですが……。」
ナミさんは、『ふーん?』と不敵な笑みを顔に貼り付けてリクさんとカイさんも見ます。
「ああ。るう様が小さなおままごとセットで一生懸命遊んでおられる姿は、きっと天使のように可愛らしいのでしょうねぇ。」
「「っっ!?」」
「それに、『てづくりです』って、たどたどしくわたくし達にるう様の小さな手で手作りの手料理なんて差し出されたら……っ。ああ、これ以上想像したら、わたくし、わたくし……っ!」
「「………イイ。」」
許可ゲットですっ。
ナミさんにキラキラした視線を送ったら、綺麗なウィンクを返されました。
ご馳走様です。