恋(お菓子)は盲目。
なんだかお気に入り件数とアクセスPVがものすごい勢いで増えています@@
嬉しい気持ちが大きいですが、なんだか頭の中が迷子になりそうなくらいあわあわしました。
頑張ってまいりますっ。
【サディ視点】
僕が亜空間から転移魔法で取り出した箱をるうと呼ばれたルナー様の膝へ転移させると、ルナー様は突然膝の上に現れた箱に目を見開いていた。
大きなはちみつ色の瞳が零れ落ちそうだなと思った。
「わぁ・・・。」
箱を開けたルナー様は、王都でも貴族の『お花』たちが好む菓子を見て感慨の声をあげた。
小さな手のひらでほっぺを挟んでピンク色に染まったほっぺはそのままに瞳を輝かせる。
何この可愛い生き物。
龍族は肉を好むし、味付けなんて塩オンリーなこの屋敷にいるんだ。
たぶん、この世界にも甘いものは果物以外に存在したのかという嬉しさが込み上げたんだろうね。
ぱっと僕の顔を見て、ふにゃりと華が咲いたような笑顔を向けたルナー様は、さっきより警戒心を解いてくれたみたい。
「ありがと、ございます。」
「・・・え、あ、うん。そか。気に入ったならいい。うん。」
何これ可愛い。
僕らしくない返答をしてしまったけど、僕以上にカイとアルが何か悪い物でも食べたのかという怪訝そうな視線を向けてきた。失礼だな。
前のルナー様は翼があって更に全身は艶やかな毛に覆われてて、鳥族の森で飛び回っているのを見学に行ったら、問答無用でこの僕に攻撃を仕掛けてきた。
僕的にはあれは無しだろうと思っていたから、今回ルナー様が生まれたと(裏ルートで仕入れたから早い段階で知っていた)聞いても、ふーんとしか思わなかった。
けど、正式な通達が来た時、耳や尻尾はないけど僕たちと見た目はあまり変わらない女の子だと聞いたんだよね。
女の子と聞いたらもう僕が動くしかないよね?
だって僕は世界中の『お花たち』を愛する使命があるんだから。
そう思って無理やり1週間の休暇をもぎ取って意気揚々と神殿があるこの地に来たわけなんだけど・・・。
うん、ルナー様は僕が知る限りでは一番可愛いルナー様だと思う。
それにちゃんと可愛い『お花』だった・・・幼子というところ以外は。
ルナー様は成体で生まれてくるはずなんだけど、何故か僕の目の前にいるルナー様はどう見ても幼子。
しかもこの世界のどの種族の幼子よりも小さく、あの白い滑らかな肌も柔らかそうで、扱いを間違えればすぐに殺めてしまいそうだった。
あの怪力で戦闘種族の竜族のリクとカイでさえ、小さな綿毛を潰さないように細心の注意を払って接している。
ふーん・・・面白いね。
小さな可愛い菓子に気を取られているうちに、僕は一歩ルナー様へと足を踏み出した・・・はずだったんだけど。
突然ぐいっとローブのフードを引っ張られて、踏み出した足は宙に浮いたまま、一歩を踏み出すことは叶わなかった。
「はいは~い。サディくん。君はまだお許しが出ていないからるうに近づくのは禁止です。」
ニコニコと人の良さそうな笑顔で僕のフードに手をかけて、兎族の癖に有り得ない馬鹿力で阻止したのはアルだ。
「あのねぇ・・・。誰のお許しがいるっていうの?」
「もちろん。るうに決まっているだろう。るうが嫌がらなければの話だがな。」
「ええ。その通りです。聞けば、君に驚いたせいでるうは額に怪我をしたというではありませんか。ですから、却下です。」
なんなんだ、この人たちは・・・揃いも揃って親馬鹿の保護者になっちゃって。
僕は未だに菓子にキラキラとしたはちみつ色の蕩けそうな瞳を向けている幼子に視線を送ったのだけど、はぁ・・・この分じゃもう一押しもふた押しもしなければいけなさそうだね・・・。