意思疎通。
眩しい光が私の体を包んだかと思ったら急に私を包んでいた柔らかな膜が纏わりついてきました。
思わずぎゅっと目を閉じていると、瞬間、閉じていた瞼に感じていた光がなくなって、恐る恐る目を開けてみます。
纏わりついていた柔らかな感覚は既になく、ひんやりとした硬い感触に変わっていました。
「・・・んうぅ・・・?」
とても長い睡眠から目覚めたように目をくしくしと擦って辺りを見渡してみると、薄暗い大きなテーブルに乗っかっています。
あら・・・お行儀悪い・・・。
すべてが石で出来たような空間を首から上だけ動かしてキョロキョロすると、視界の端に何か動くものが・・・って、あれって人?
私死んじゃったんだよね?
だとしたらもしかして、閻魔様とか神様とかですか!?
「・・・大丈夫か?」
「っっ!?」
思わず泣き出しそうになった時、男の人の声がして飛び上がってしまいました。
ゆっくりと声のした方へ視線を動かすと、ゆったりとした動きで大きな人が近づいてきます。
さっき気づいてたのに、すっかりその存在を忘れていましたよ。
って、うぇえええっ!?
この人大きすぎますっ。
見上げなければ顔も見えないくらい、というか私の2倍以上高いんじゃないでしょうか。
もしかして私、本当に生まれ変わっちゃって、私が小さいとか!?
両手足、今確認できるところはすべて見ましたが、うん、私は私のままみたいです。
ということはこの人がでかすぎるんですね・・・。
「えと・・・あなたはだれですか?」
思わず見上げてしまった遠くにある顔を見て問いかけると、案外若そうなお兄さんがじっと私を見下ろしています。
真っ赤な硬そうな髪に金色の瞳、髪を染めてて尚且つカラーコンタクトでないなら、間違いなくここは異世界だと思います。
びっくり人間・・・万歳です。
「言葉は分かるか?ルナー。」
「・・・?」
言葉は分かります・・・が、ルナー?それがもしかして私の新しい名前ですか?
思わずコテリと首を傾げた私の頭を、大きな手が遠慮がちに撫でました。
おお・・・なんという包まれ感!素敵ですっ!
「・・・・。」
「・・・・。」
無言で大人しく頭を撫でられていましたが、長いです。
とてつもなく長い時間なでなでされています。
ずっと撫で続けられたら私の頭皮がはげちゃう可能性があるのですが・・・もうそろそろ中断してもらっていいでしょうか?
「・・・あの。」
「ん?どうした?」
いえいえ・・・どうした?って爽やかな笑顔で聞き返さないでください。
「えと・・・ことば、つうじます。」
「ああ、そのようだな。」
どうしてか舌ったらずな言葉しか出てこないことに驚きましたが、考えすぎちゃいけない気がしてきました。
それよりも、頭皮がそろそろ限界を迎えてしまいそうです。
思わず大きな指を両手で掴んで下ろしてみたのですが、大きなこの人の人差し指を握った私の両手を見て、どうしてこの人嬉しそうなんでしょう・・・ちょっと怖いです。
「ルナー?わからないです。」
「ん?ああ、ルナーというのは神の愛し子のことだ。」
「いとし・・・ご?」
神様の愛し子、聞き慣れない言葉に頭がぐるぐるです。
「・・・っ。くしゅんっ!」
「っ!?」
ひんやりとした空間にはだかんぼでいたせいか、思わずくしゃみをしてしまいましたが、よく考えたら私、男の人の前ではだかんぼっ!?
うわあぁぁ・・・・非現実的な状況にすっかり忘れていました。
もうお嫁にいけませんっ!
・・・って私、幼児体型すぎて見られるとこがないんですけどねぇ・・・あははは・・・はぁ・・・。
この人も私のこと、幼児だと思ってるみたいだし、変に恥ずかしがったらおかしなことになりそうです。
私は幼児、私は幼児・・・・。
だから恥ずかしさなんて感じないんですよ、くすん。
1人で悲観に暮れていたら、大きな人は羽織っていた真っ赤なマントを脱いで、私をぐるぐる巻きにして私を軽々と抱き上げてしまいました。
「ひゃあ!?あ、あのっ!?」
「寒いのだろう?どうやら孵化したばかりで肌も柔らかく、まだ硬くなっていないようだ。」
いえ、もう立派な大人です。
肌が硬くなるってどういうことですか・・・なるわけないでしょう、人間ですよ?
心の中でつっこみながらも慌ててその人の首にしがみついたら、えええ・・・カチカチですよっ!
弾力はもちろんあるんだけど、どんだけ鍛えたらこれだけ硬くなるの?というくらいカチカチでした。