塩味三昧。
アルに診察してもらった後のるうは、安心して過ごすことが出来ると思っていたのですが、元気ならということで、洋服のサイズの採寸や、お茶を飲む時のカップや、食事の時に手に持つフォークやナイフ、スプーンなど、るうが触れる物すべての採寸がされました。
目の回りそうな忙しさでしたが、確かに服や生活用品は出来るだけ早く作ってもらえた方が助かると思い、なんとかすべて乗り切る頃にはお昼時になっていました。
「かいさん。ぽんぽん、くぅくう、です。」
「ふふ。るう語は可愛らしいですね。るうはこの時間も食事をとるのでしたね。アルから聞きました。」
るうは自分の言葉がちゃんと通じているのか心配なようで、すべての言葉にジャスチャーをつけているのですが、おなかが減った=ぽんぽんくぅくぅ、というジャスチャーが両手で自分のお腹をさすって見上げてくるという可愛らしい行為に頬が緩むカイなのでした。
ちなみにここにはリクはおらず、アルが最初に言っていた『理由説明』に連れて行かれた後でした。
カイとるうがお話している時に、ノックの音と共にナミがワゴンを押して入ってきます。
「さあ、るう様。お食事が出来ましたよ。コック長に言って少なめに作ってもらったのですが、この量でもやっぱり多いでしょうか?」
「なみさん。ありがと、ございます。」
「るうが食べられる量がまだ把握できていませんから、少しずつ様子を見ながら調整していきましょう。」
カイの言葉に頷いた後、るうは大きなフォークを片手にまたもや朝と同じようなお肉の種類に目を白黒させましたが、確かにナミの言っていた通り、朝よりは少ない量でした。
薄い塩味のお肉をちびちびもきゅもきゅと口に入れて食べていたるうですが、1度フォークをテーブルに置くと、カイに質問します。
「あの、かいさん、たちの、ごはん。いつも、おしお?ですか?」
「え?あー。ええ、そうですね。この屋敷にいるのがほとんど竜族で、私たちは肉そのものの味が美味しいと感じるので大体は塩のみで味付けられていますが・・・。」
カイの言葉にるうがしゅんとしてしまったように感じて、カイは慌ててるうに問いかけました。
「あ。るうは竜族ではないのですから、他に味の好みがあって当たり前なのです。るうの好みはどういったものですか?コック長に頼んで作ってもらいましょう。」
「で、でも。せっかく、つくってくれた、です。それに、おしおのあじ、きらいじゃ、ないです。」
「ああ・・・。るう様。なんてお優しい・・・っ。ですが、るう様。新しい味や料理に挑戦するのはコック長の料理意欲を掻き立てるのですよ。ですから遠慮なさらないでください。」
本当にるうはいい子ですねと頭を撫でられながら、るうはナミが熱く語るのをコクコクと頷いて聞いていたのですが、どんな味が好みかと問われると口で説明は難しいのです。
うんうん悩んでいるるうに助け舟を出したのは、隣りの席で微笑ましそうにその姿を見ていたカイでした。
「では、いろんな種族の郷土料理などを食してみたらいかがですか?るうが好む味付けが見つかるかもしれませんよ?」
「まあっ。カイ。あなたにしては良い案ね。るう様。その案、わたくしもいいと思います。」
カイとナミはるうにニコニコと問いかけてくれたので、るうもそうかもしれないとコクコクと頷いて了承しましたが、今のコック長が竜族の人なのだとしたら、そのコック長に迷惑がかかってしまうのではないかと心配になりました。
「こっく、さん。めいわく、ちがうですか?」
「もう、なんてお優しいのっ。私こんなにお優しいルナー様に仕えることが出来て幸せものです。」
「ふふ。ずるいですね。私もるうをこの腕に閉じ込めてしまいたいというのに。」
ナミは悶えそうになるのを耐え切れず、るうをきゅうっと抱きしめながらも、実の弟であるカイを牽制するという器用な技をお披露目したのでした。
(もうわたくし一生るう様に仕えさせていただきますっ。)
(それは反対しませんが、るうが目を回していますよ。)
(きゅう・・・。)
たまにはシンプルに薄い塩味の食べ物って素朴でほっとしますよね。
でも毎食毎日は嫌かも・・・ガクブル