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ちびっこは神様の愛し子。  作者: 瑠璃夢
【第3章】ルナーという存在。
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うぞく?なんぞや?



あっという間に部屋に連れ戻されたるうは、寝起き1時間ほどだというのにベッドに寝かされてしまいました。




「りく、さん。わたし、どこもわるくない、です。」


「本人がそう思っているだけかもしれないぞ。」


「で、でも、ほんとに、げんき、です。」


「いや、1度は診断してもらった方がいい。」


「だ、だけど・・・。」




こんな言葉のやりとりが20分ほど続いた頃、るうの部屋の扉からコンコンというノック音が聞こえてきました。


ビクリと体を震わせたるうは、ガバリと頭までシーツを被ってしまいます。




リクは浅くため息を吐くと、シーツの上からるうの頭をぽんぽんと撫でてから扉に向かい、静かにドアノブを回して扉を開けるとナミが入ってきてリクに問いかけました。




「リク。るう様はいかがですか?」


「ああ。どこも悪くないの一点張りだが・・・。念のため診てもらった方がいいだろうな。アル。るうをよろしく頼む。」


「はい。分かりました。でもリクくん?ルナーが生まれたこと、報告しなかった理由は後でちゃんと説明してもらいますからね?」


「・・・ちっ。分かったよ。」




聞き覚えのない声にぴくりとシーツの山が跳ねると、そぉーっと頭だけ出してリクたちの方を窺ったるうでしたが、アルと呼ばれた医者と目が合うと、またガバリとシーツを被ってしまいました。




アルの見た目はリクやカイたちより少し小柄ですが、それでも2m50cmくらいはあり、白髪に白い耳を持った獣人でした。


細い銀縁のフレームの眼鏡は草食系の獣人のような柔らかな笑顔のアルにはとても似合っていました。




アルはまたもやシーツの中に潜り込んでしまった小さな幼子〔だと思ってる〕のるうに、くすりと柔らかな笑みを向けてベッドの脇まで進むと、両膝をついた状態でベッドに頬杖をついて、頭だと思われる部分を片方を伸ばし人差し指でつんと突きます。




ぴくりと震えたシーツから、またまたソロリと鼻から上を出してベッドサイドのアルに目を向けたるうは、大きなはちみつ色の瞳を見開いて固まりました。


アルもこっそりと顔を出して見せてくれたるうを見て、『おや』と驚いた顔をしていますが、1番混乱しているのはやはりるうでした。




るうが驚いたように膝をついていてもまだまだ高いアルを見上げているのですが、るうが見ているのはアルの頭の上でぴくぴくと動く耳だったのです。


優しい雰囲気の青年の白くさらさらとした髪より更にもう少し上、そこにあったのはるうの知っている紛れもないウサギの耳でした。




「う・・・さぎ、さん?」




鈴が鳴ったような可愛らしい声のるうに、意思疎通が出来るのだと驚いたアルでしたが、ふわりと優しげに微笑みます。




「ええ、そうですよ。僕はうさぎさんです。兎族のアルといいます。よろしくお願いしますね?ルナー様。」


「うぞく・・・ですか?うさぎさんの、ある、さん?」


「アル。自己紹介は後にしろ。」


「っっ!」




ガバっ!!




リクが自己紹介をストップしたことで、るうは自分が今、どういう状況なのかを思い出して、慌ててシーツをガバリと被ります。


無言で何てことをしてくれたのだとアルの絶対零度(ぜったいれいど)の視線を受けてしまったリクは、しまったという苦い顔をして、邪魔するなら出て行けというように親指を扉に向けたアルに渋々追い出されてしまい、ナミは元々早くるうを診てもらいたかったのでリクと共に退室ました。




「ルナー様は、るうと呼ばれていましたね。守人のリクかカイに名をもらったのですか?」


「・・・・。」




180度変わってしまった話題に、びくびくと警戒しながらも、こっそりとまた顔を出してみたるうは、にこにこと笑顔で『うん?』と首を傾けてくれるアルに安心して、フルフルと首を振ります。




「るう、わたしの、なまえ。もっと、まえから、です。」


「可愛らしいお声ですね。そうですか。るう・・・様とお呼びした方がいいでしょうか?」


「ううん。るう、るうがいい、です。」


「はい。ではるう?僕にもその姿を見せていただけませんか?僕はまだあなたの髪の色と瞳の色しか分かりません。」




るうは、暫く考えた後、コクリと頷くと、もそもそとシーツから出てきました。


アルはるうの細く小さな体と、幼子のように大きな垂れ目がちな瞳、そして腰まで流れるふわりとしたミルクティー色の髪におどおどとした自分よりもうさぎらしいるうの姿に息を飲んだのでした。





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