いたって健康ですっ。
リクとカイが慌ててるうを問いただす中、るうは自身の舌ったらずな言葉を恨めしく感じながらフルフルと首を振って否定し続けていました。
ワゴンを押して朝食という名の昼食を運んで入ってきたナミは、何事かと驚いたようですが、るうがあまりにも必死に首を振っていたので慌てて駆け寄ってきます。
「るう様っ。そのように首を振ってはるう様の柔肌が・・・っ。首がぽろりとなったらどうなさるのですかっ。」
「ふぇっ!?」
がっちりと両手でるうの柔らかな頬を挟み込んで、ナミはるうの首の動きを止めていましたが、その顔は言葉通りの真剣に焦っている表情でした。
もちろんるうはそれくらいのことで首をぽろりと落とすほど弱くはないのですが、竜族に比べれば柔らかすぎるるうの体ですので、ナミは本気で心配していたのです。
未だに困惑して落ち込んでいるようなリクとカイは、ナミの言葉で更に不安を募らせたのでした。
「リク、カイ。あなたたちはどういうつもりでこのようにるう様を困らせておられるのですか。とにかくるう様は生後1日目な上、昨日もまともにお食事されておられないのです。まずはお食事です。」
「あ、ああ。そうだな。すまない。」
「るう。すみません。私としたことが取り乱してしまいました・・・。」
申し訳なさそうに眉を下げたリクとカイに、るうはフルフルと今度はゆっくりと首を振りました。
「へいき、です。ごはん、おなか、へった、です。」
「そうですよね。るう様。お待たせ致しました。るう様のお好みが分かりませんでしたから、コック長に色々用意させてみました。」
ナミはそう言ったが早いか、大きなテーブルの上に所狭しと料理を並べていきますが、るうは見たことのない料理ばかりで視線はキョロキョロと忙しなくなりました。
「るう。食べられそうな料理はあるか?これはうまいぞ。」
「こちらも水竜の里近くに生息する獣の蒸し焼きです。美味しいですよ。」
リクとカイは、るうのお皿に出てきた料理を少しずつ乗せていき、るうはコクコクと頷いて見たことのない料理を恐る恐る口に運びました。
もきゅもきゅと食べているるうを嬉しそうに眺めながらも、2人は食事を始めますが、るうはお皿に入れてもらった料理がすべて何らかの獣の肉だったことにショックを受けています。
決して不味いわけではないのですが、癖のある匂いと、そのすべてが薄い塩味で味付けされたものばかりだったためでした。
基本、日本で東西南北それぞれの味付けがあるように、竜族の住む南の地方は、素材である肉の味を残して蒸す、焼く、煮込むというのはありますが、塩でしか味付けされないようでした。
もちろんそういった文化を持つ地方ですから、甘味といった甘いものも皆無だということなのですが、るうがそれを知るのはまだもう少し先なのでした。
「ぽんぽこりん・・・。ごちそうさま、でした。」
「え・・・。るう様。先程食べ始めたばかりではありませんか。やっぱりどこかお体の具合が悪いのではありませんか?リク、カイ、わたくし医師を呼んで参りますからくれぐれもるう様のこと、よろしくお願いしますね?」
「ええ。分かりました。確かにあまりにも少食過ぎます。1度診てもらったほうがよろしいでしょう。」
「ああ。そうだな。このままでは栄養失調になってしまうだろう。るう、部屋まで送っていこう。」
るうが『あ・・・?え・・・?』と周りの状況にあわあわしていると、あれよあれよという間に、るうはリクに持ち上げられ、片腕にのせられ子供抱きにされた状態になります。
るうは前世では、死ぬかもしれないと思うくらいの時くらいしか病院に行かないほどの医者嫌い、注射嫌い、お薬嫌い、病院大嫌いなのでした。