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1991バビロンの砂嵐  作者: F.Y
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リコネッサンス

 1990年 12月3日 0034時 クウェート アル・ジャハラ街道


 砂漠は寒暖差が激しい場所だとは知られてないことは意外と多い。この中東も昼間は50度近い気温で湿度は全く無いといっていいほどカラカラになる。が、夜は気温が摂氏一桁にまで下がってしまう。その砂漠をT-72とT-64、BMP-2がAK-47を持ったイラク兵が進んでいる。クウェート軍による抵抗はわずかだった。殆どの部隊が壊滅状態で、兵士は戦死または捕虜となってイラク国内へと連行されていった。だが、そんな様子を見ていた人間がいた。アメリカ陸軍特殊部隊"グリーンベレー"の隊員たちだ。彼らはイラクとクウェート北東部からイラクへ伸びているアル・ジャハラ街道で偵察活動をしていた。この道は大きな幹線道路で、延長線上にはサウジアラビアがある。よって、クウェートを完全制圧すれば、ここを通ってサウジアラビアまで侵攻することも可能だ。この道路には国境警備隊の検問所があったのだが、今はイラク軍の攻撃で破壊されていた。


「司令部に連絡。イラク軍部隊が南進中。規模は1個機甲大隊程度。BMP-1にT-64、T-72を確認。奴等、クウェートに更に部隊を送り込むつもりだ」

 グリーンベレーの軍曹がボソリと言った。SAS、SEALs、グリーンベレーといった特殊部隊は5~6人の小規模な偵察チームを組んでイラクに潜入し、攻撃目標やイラク軍部隊の動きを偵察し、司令部にその様子を逐一報告していた。

「くそっ、いつまで待たせるんだ。とっとと攻撃してしまえよ」

 一番若い伍長は手に持ったストーナーM63を撃ちたくてしょうがない様子だった。

「駄目だ。司令部からの命令が無いとな。それに、多勢に無勢だ。撃ったってこっちがやられるだけだ。それより、レーザーはちゃんと持っているよな?」

 隊長の中尉が言う。

「ここに入ってますよ。だいたい、これで爆弾を誘導できるだなんて本当にできるんですかね?」

「ベトナムの時にすでに幾つか使われていたらしいが・・・・理論上はできるはずだ」

「まだ俺は生まれてもいないときですよ、ボス」

「俺もだよ」

「さて、我々はここまでしか入り込んでいないが、あいつらなら、もっと踏み込んだ所まで行っているだろう」

「誰のことです?SASですか?」

「いや。"デルタ"の連中だ。多分、ジャーナリストか何かに化けているだろう。バグダッド市内で色々嗅ぎまわっている頃だな」


 1990年 12月3日 0057時 バグダッド某所


 デルタフォースの隊員数名がホテルの最上階にジャーナリストとして宿泊していた。彼らは民間人として正規のルートでバグダッドに入国し、大使館を通して届いた外交行囊で装備を受け取っている。夜間は外出禁止令があるので、夕方までにある程度の偵察を済ませなければならない。

 1109号室に宿泊中の3名のデルタ隊員は武器を整備しつつ、テレビやカードで無聊をかこっていた。やがて、外出していた軍曹が宿泊している部屋に戻ってきた。

「成果はどうだい?」チームリーダーの大尉が訊ねた。

「対空兵器を幾つか確認しました。場所は・・・・」

 軍曹がバグダッド市内の地図を広げて赤ペンを手にした。

「北のティグリス川沿いのゲライアットにSA-8が2基とZSU-23-4が1門、それからアル・アシード空港にもSA-11があります。おまけに、アル・アシードに民間便の飛行機が見当たりません。そのかわりみたいにMiG-29が4機、MiG-25が2機、ミラージュF-1が2機置いてあります。首都防空のために移動させたのでしょう。外国の民間人はバグダッド国際空港から脱出しているようです。今は各航空会社がチャーター便を出しているようですが、それも日に日に減っています」

「スカッドは?まだ確認できていないのか?」

「情報は無いですね。砂の下かもしれないですし、地下の掩蔽壕の中でしょう。探しているのはSASだそうです」

「ふむ。奴等なら問題なかろう。間違いなく見つけてくれるはずだ」

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