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1991バビロンの砂嵐  作者: F.Y
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タワカルナ師団突破戦 その5

前半ちょっとだけ脱線します。

 1991年 2月27日 0156時 サウジアラビア プリンス・スルタン基地


「今まではお偉い方の命令が邪魔をしていたが、今度は燃料と弾薬か」

 ピーター・シメオン大佐は部隊配置図を見て言った。すでにクウェートの辺りに多国籍軍の示す青い駒が多く置かれ、イラク軍を示す赤い駒は北方の国境近くに少数が追いやられ、イラク国内南部にも青い駒が増えてきている。

 シメオンは殆ど寝ておらず、目の下に大きな隈を作り、コーヒーと食事だけでなんとか気力を保って司令部の椅子に座っているような状態だ。

「早急に手配しましたが、遅れ気味でした。この分だと、前線の海兵隊の歩兵大隊や我々の機甲師団はバグダッドに突入するくらいの勢いにはならないでしょうね」

 ハロルド・ディズレーリ中佐が答える。

「バグダッド突入か。その前にイラクが降伏するかどうかが問題だな。お偉い方の一部には、降伏してくれないほうが好都合な人間もいるだろうが・・・・」

「でしょうね。このまま首都へ突っ込んで、フセインを倒す、という目論見をしている政治家連中がいるのもいるのは確かなようですね。突然、我々に反旗を翻した訳ですから、カンカンになっている議員がいるのも確かなようです」

「だが、クウェート解放を大義名分にしている以上、それは無理だろう。イラクが降伏すれば、それまでだ」

「先行している海兵隊は停止命令が出ていないので、どんどん進軍しているようです。後ろから付いてきている師団も、前線のイラク軍の生き残りを撃破しながら前進しています」

「空軍の方は?」

「大規模な空爆作戦は停止している状態です。地上部隊からの要請に応じて出撃しているようですが、空からの攻撃に関しては、大部分が我々のアパッチや海兵隊のコブラで十分な状態でして、戦闘機は空中哨戒(CAP)だけをしています。しかし、例外が一つだけ。A-10です」

「A-10か。まさに、我々にとって必要なものだな」

「これで去年から湧き始めていたA-10退役は先延ばしになりそうですね」

「恐らく・・・はな。議会の連中が何と言うかはわからんが」

「そうですか。では、書類仕事が残っているのでこれで失礼します」

「あまり頑張り過ぎるなよ。疲れているようだったら、休むように」

 シメオンは立ち去るディズレーリの背中にそう呼びかけた。


 1991年 2月27日 0202時 イラク 砂漠


 イラク軍の抵抗はまだ続いていた。予定では日が昇る前にはタワカルナ師団の支配地域を通り抜ける、という計画であったが、そうもいかなかった。"チーム・コブラ"の前方になんと、T-55とT-62のスクラムが見えてきたのだ。

「12時方向!敵戦車!」

 クロードが叫ぶ。

「セイボー!装填完了!」

 バーキンは4秒で弾薬の装填を完了させた。

「各車両、射撃自由!」

 クロードが命令を出した。120mm砲が唸り、爆炎を巻き上げる。


 容赦の無い砲弾の嵐がイラク軍を襲った。徹甲弾が戦車の砲塔を吹き飛ばし、榴弾が装甲車やジープを爆破する。イラク軍が押し下げられた最前線に作った防壁はいとも簡単に崩されてしまった。だが、イラク兵は逃げることも、降伏することもせず、討ち死にを選んだ。彼らはエリートだった。エリートのはずだった。だから、多国籍軍に敗れるということは微塵も思っていなかった。その思い込みが命取りとなった。イラク軍部隊は、兵士一人が攻撃のために機関銃を短く一連射しただけで猛反撃され、殲滅された。目の前で爆煙が立ち上り、金属片が飛び散る。イラク軍部隊は交代で休憩を取っていたところだったため対応が出来なかった。運良く生き残ったイラク兵は破壊された戦車を見て呆然となっていた。


 クロードは先程のイラク軍部隊を撃滅させた後、進軍を途中で止めて交代で休憩を取らせた。そして、少しづつ進軍させ、本来の目標であるメディナ師団の支配地域へと進んでいった。

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