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1991バビロンの砂嵐  作者: F.Y
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メリー・クリスマス タンクソルジャーズ

※だらだら開戦前の状況を書いていてもアレなので日にちが飛びます。(次回はもっと飛ぶかと・・・・)

 1990年 12月25日 1813時 サウジアラビア プリンス・スルタン空軍基地


 サンタクロースの格好をした陸軍兵や海兵隊員がおどけている。しかし、彼らが持っているのはシャンパンの瓶ではなく、コークやミネラルウォーターのボトルだ。さすがにイスラム教の国で酒を飲むわけにはいかない。今日はクリスマスということで、国籍軍司令官がパーティーを企画したのだ。当直以外の兵士はサンタクロースやトナカイの仮装して騒いでいる。


「こんなときにビールが飲めないのはキツイな。これじゃあ楽しみが半減だ」

 コーラの缶を片手に持ち、ターキーを齧っているボブ・マルカム上等兵は不満そうだった。

「仕方ないさ。イスラム教国だから、酒は駄目だ。我慢しな」

 マイク・ローゼンバーグ伍長が即座にツッコミを入れた。

「食後にケーキが出るぞ。楽しみに待ってな」フリオ・クーパー上等兵も続く。

 確かに、酒飲みの兵士にとって中東派遣は苦痛だ。国によっては酒が一切飲めなくなるので、中東勤務が決まった途端、多くの兵士が派遣前に浴びるほど酒を飲んで、中には急性アルコール中毒になって搬送された者がいた程だ。

「ボスはどこです?伍長」

 トナカイの被り物をしたマルカムはコークの缶を手にフラフラしている。

「さっき見た時は食堂でピザを切っていたな。まだそこにいるんじゃないのか?」


 クロードは皿の上に乗ったピザを口に運んでいた。先ほどまでは配る側だったが、さすがに腹が減ってきたので近くにいた歩兵師団の軍曹を捕まえて交代してもらった。今日ばかりはみな戦争のことは忘れているようだ。だが、休暇はあと6時間もしないうちに終わる。

「ボス、ここにいましたか。こっちに来ないのですか?みんな待ってますよ」

 マルカムが駆けて来たが、クロードは手を降っただけで、あとは食べ物に集中し始めた。

「馬鹿騒ぎは苦手でね。陸軍士官学校(ウェストポイント)と一緒に卒業したよ」

「ところで、昨日はサンタは来ましたかね?こんなアラブの僻地じゃ忘れられているんじゃないですかね?」

「かもしれんな。ところで、親御さんにクリスマス・カードは書いたのか?」

「そんなことをしたら、実家に帰った時に『また余計なことをしやがって』と、また文句を言われますよ」

「それは考えものだな」

「ところで、ここじゃクリスマスは祝うんですかね?イスラム教国だからそんのことは・・・・」

「イスラム教でも、イエス・キリストは預言者の一人だからな。多分、何かしらの行事はあるんじゃないかな?」

「あれ?イスラムの預言者はムハンマドじゃありませんでした?」

「正しいが、少し間違っている。ムハンマドは『最高位の預言者』だ。イエスもモーセもイスラム教、ユダヤ教でも預言者の一人だ。で、もう一つ言っておくと、我々キリスト教徒が言う神、ユダヤ教のヤハウェ、イスラム教のアッラーも呼び名が違うだけで同じ1つの神を指している」

「士官学校じゃそんなことも教えるんですか」

「おいおい、常識だぞ。お前、さては学校の歴史の授業をちゃんと聞いていなかったな?」

「学校なんて、殆ど行きませんでしたよ。ナイフ片手に、ギャング仲間とスラム街を毎日ほっつき歩いてましたよ。では、もっと食べ物を持ってきます。何か食べたいものはありますか?大尉」

「そうだな。ターキーとローストビーフを何切れか。それからコーヒーが欲しいな」

「了解です、大尉殿」

マルカムは敬礼をすると、フラフラと歩き去っていった。

「あまり騒ぎ過ぎて、体力を使い果たすなよ。我らが大統領が明日にはイラクを空爆しろと言い出すかもしれないからな」

マルカムは5分ほどでクロードが注文したものをもってきてから、また仲間たちの方へ戻っていった。

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