表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/47

電話と交友関係

「うん――、私もよくお姉ちゃんと電話するんだけど、――その日のお姉ちゃんは少し元気が無くてね」



ごめんね、春。約束、守れないかもしんない



「――それだけいって、電話が切れたの」


「約束?」


「ええ」


「約束、ってなんだ?」


「……心当たりがない――わけじゃないけど、お姉ちゃんとの約束っていったら、――私がお姉ちゃんと一緒な学校に入って、一緒な部活にはいって、一緒にお昼ご飯食べて……、つまり、家から出て、一緒な学校に入って学校生活を楽しもう……ってこと?になるのかな……」


つまり、とらえ方によっては、



『いっしょに学校生活を楽しめない

 ――その時に自分は死んで、居なくなってるから――』



と、そういう意味にも聞こえる。


「じゃあ、そのときから、お前の姉さんは自殺することを決めてた、って言うのか?」


「それは、わかんない――次の日にその理由を聞いても「あれは、忘れて、ちょっと弱気になっただけだけら」……って言って、私もそれ以上詳しく聞けなかったから……」


ふむ――たしかに、おかしな電話だ。


僕は鞄から、愛用のメモ帳にお気に入りの万年筆を取り出し、


・多輪島の入学前に姉の身に「何か」があって自殺せざるおえなくなった

・多輪島春が言うには自殺する理由もなかった。

・他人に強要されて自殺という可能性は薄い


そう、書き加え、多輪島の方へ向き直った


「それじゃあ、まず、多輪島の入学前に、多輪島の姉の身に何があったのか? それを調べる必要があるな」


「うん、それが一番いいと思う」


しかし――調べると言ってもかなり骨である。姉の交友関係や、部員、担任なんかに話を聞けば早いのだが……


「――多輪島、分かるか?その、姉の交友関係とか……?」


「うん、分かると思う。 これ――」


そう言って、多輪島は鞄の仲から、折りたたみ式の携帯電話を取りだした。


どうでもいいが、よく見ると多輪島の鞄は某りんご三つ分の猫のキャラクターの描かれた、えらくかわいいものだった。……本当にどうでもいいけど。


「お姉ちゃんの携帯。 友達のアドレスが入ってる」


「なるほど、見てもいいか?」


「ええ、どうぞ」


かち、という懐かしい音とともに携帯電話を開く、なんとかアドレス帳の項目を探し出し(なれない携帯は使いづらい、ただでさえ自分の携帯も使いこなしていないのに……)


アドレスの数を見ると


445件……


…………。


は? 


えっと……あの……


え、多くない?


交友関係の多い人ってこんなもんなの……?


これが、普通なの?


仕事をしているのならまだしも、学生でこの数は、多くないですか?


いや、僕の交友関係が少なすぎるのかもしれないが、たぶんこれの四分の一……下手すると五分の一も無いんじゃないか?


「多輪島――」


「なに?」


「多いよな、この数……」


「……多いね」


「……おまえ、多輪島、何件?」


「………聞かないでくれる……?」


本気でへこむ多輪島。


「……すまん」


ほんと、すまん……いや、僕も人のこと言えないけど……


「……」


「……」


気まずい沈黙。


「あ、ああそうだ、多輪島、アドレス交換しとくか、何かと便利だし!」


「そ、そうね、うん、それがいいね!」



とりあえず、僕らはアドレスを交換した。

やりきれない気持ちを胸にかかえて……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ