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状況と考察

多輪島の声で、我に返った。


「……とにかく、強要されて自殺の線は薄いと思う、たとえ無理矢理に首をくくられたとしても、何にか痕跡が残るはずだよ、警察がそれを見落とすとも思えないし、警察が見落としたものを僕らが一年以上後に見つけられるとも思えないな」


「――そうね


多輪島が首をうなだれる。


「それより、多輪島が知っていることはないか? 僕は、ほかの事件の部外者が知っている程度のことしか知らないからな」


「ちなみに――九島君はどんなことを知ってるの?」


「知ってる――と言うほどのことじゃないけど、全校集会で、警察と校長が話したこと、それと、ニュースと新聞の内容程度のことなら」


本当は、自分でほんの少し調べたりもしたが、それは伏せておこう。


その内容は、先ほども話したとおり「思春期特有の敏感な時期に、人間関係の不和や受験に対しての将来の不安が重なり、精神的に不安定になっていた、自殺に対しても、遺書が見つからないことや、自身の部屋の整理された形跡が見られないことから、突発的なものだろう」、という自殺の動機の推測と、簡単な自殺の状況である。


多輪島秋菜は図書室で自殺した。


放課後の――否放課後というには遅すぎるのかもしれないが夜八時から十時頃のことらしい。


大方の生徒が帰り、用務員が戸締まりをした後のことだったようなので、九時以降というのが有力な情報だった。


どうやって校舎に入ったのかは不明だが、この学校の校舎は、生徒であればどこでも抜け道を見つけられるほど開放的な造りとなっているので、忍び込むことは容易であろう。


とにかく、そこで、多輪島は首吊り自殺をした。


その状況には、いくつか奇妙な点があったらしい。


まず――多輪島の周辺に円描くように作られた八つの大きな燭台。発見当時は蝋燭は消えていたが、自殺時は灯はともっていたらしい。


そして、これも彼女が自殺だったという判断の原因でもあるようだが、図書室には鍵が閉められ、肝心の鍵は彼女のスカートのポケットの中に入っていた。


つまり外からは誰も入れなかったことになる。


次に――これは幾分オカルトチックなことになるのだが――彼女が自殺する以前から、「図書室で自殺する霊の話」は学校中で噂になっていたらしい。真夜中に、図書室で首吊りする霊が現れ、実際に図書室にゆくと誰も居ない――、そんな話が何年か前からささやかれていたそうだ。


まぁ、こんな話は、よくある学校の怪談話であるし、警察も取り合わなかったが、生徒の間ではまことしやかに図書室の霊のしわざ、という噂が流されたほどだった。


「と、僕の知っているのはくらいかな、多輪島は?」


「うん、私もそんな感じかな――そもそも私も、その時はまだ引っ越しの準備が出来てなかったからまだ、実家の方から通ってたの、だからあんまり、その時のお姉ちゃんのことはしらないから」


多輪島が、顔をうつむかせたまま、そう言う。


「でも――私が入学する前に、お姉ちゃんからちょっと変わった電話があったの」


「変わった、電話?」

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