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3.過去

弟にあってから、すぐにでも実家に帰るべきなんだろうけど・・・。

なかなか、実家の門をくぐれない灯。

実家の近くまで足は向くものの・・・。

玄関先で、足を止め、建物を眺め・・・。

どうしても、一歩が踏み出すことができずに、また来た道を戻るということを何日も繰り返していた。

今日もまた、実家近くの駅を降り、足の赴くまま実家まで歩いて行こうという時、声を掛けられた。


「あれっ?佐山じゃないか?!」


驚いて、声のしたほうに顔を向けるとそこには、樹生(たつき)がいた。

菊池 樹生(きくち たつき)。樹生は、小学生のころ灯が好きだった人物だ。

付き合ってほしいと告白したにも関わらず、灯の何気ない一言に振られてしまった人物。

振られてからも、いろいろと声を掛けたりしていたのだが、付き合うという形までいかずに終わってしまった。

灯も、中学生からは家族と別居という形となったために8年ぶりの再会である。


「もしかして・・・樹生??」


「そうだよ?樹生だよ。覚えていてくれたんだ?感激だなぁ。」


といって、満面の笑みを灯に向ける樹生。


「灯・・・今 どうしているんだよ?時間あるか?お前と話がしたいんだ。」


手首をがっちりと掴まれてしまった灯。

逃げようにも、逃げられない。

・・・樹生の勧めるままに、目の前に会ったイタリアンレストランの店に入る。





席に案内され、注文を頼むとお互いに、向き合う。


「いきなり、ごめんな?」


いきなり、頭を下げる樹生。


「・・・・いや・・・びっくりした。

・・・・8年ぶりだね?樹生。

・・・・・・元気にしてた?面影そのままだね。

8年前より、ちょっとかっこよくなった。」


笑いながら、樹生に笑顔を向けて話す灯。

その灯の姿を見た樹生は、顔を赤く染める。


「ありがとうな?

俺・・・中学校もお前と一緒の学校に行けると思っていたのに・・・。

新学期、登校してみるとお前がいないんだもんな?

ショックだった・・・」


「あはは・・・。

まぁ、いろいろあってさ。」


自分の手元に視線を落とす灯。


「お前って、昔とあまり変わらないのな?

スタイルもそうだけど、服装とか・・・。

短い髪に、パンツスタイル。スカートは履いたことなかったよな?

変わったことといえば、そのメガネか・・・」


「そうだね?変わらないね?」


「中学校では、陸上やってたんだろ?大活躍だったよな?

新聞で取り上げられてたよな?その新聞でお前が行った学校知ったんだぞ?

転校するなら、先に行ってほしかったよ。

俺、仮にもお前が好きで、告白した男だったんだぞ?」


そういって、長めの前髪をそっと後ろへ流す樹生。ちょっと長めの髪だが、サラサラしていて思わず触りたくなってしまう髪だ。

特に、特徴のない顔立ちをしているのにもかかわず、優しさが顔つきに現れている、清潔感のある樹生。


「・・・やっぱりあれって、告白だったんだ!」


それを聞いて、顔に手を当てる樹生。


「気持ちは伝わってなかったことか・・・。

俺は、いまだにお前の事が忘れられず、こうして今もお前に対する思いを引きずっているのにな?

お前は・・・。

まぁ、いい。そういえば、灯はそんな奴だった。」


寂しそうに思いをぶつける樹生。


「今日、お前・・・灯を見つけて驚いたよ。

運命だと思った。

だから、手放したくなかった。」


樹生の思いを聞いたところで、注文したものが運ばれてきて話は中断した。






食事も終わり、店を出ると樹生にもう少し一緒に居てほしいと言われ場所を移動する。

夏の夜風が気持ちいい季節だ。

公園のベンチに座り、話をする。


「灯は、今は何をしてるんだ?」


「大学生してるよ?」


「楽しいか?」


「楽しいよ?友達もいるしね。」


「ふーん。・・・友達って女?男?」


「どっちもだよ?この前、いろいろあって男友達が増えたかな?」


嬉しそうに話す灯を見て、樹生は面白くない。

ぶすっとした顔をしている。

それを見て、灯が首をひねる。


「・・・どうしたの?樹生?」


「男友達って・・・

彼氏か・・・?」


「どうして?

いるわけないじゃない?」


それを聞いて、安心した樹生。笑顔に戻る。


「よかった。手遅れかと思ったよ。」


「・・・そういえばさ、お前が転校した理由聞いてもいいか?」


「・・・・・うーん。聞かないほうがいいかもよ?

信じがたい話だし。

私の事、見る目が変わるよ?」


「・・・・それでもいい。

聞かせてほしい。」


そういって、灯に転校の理由を聞いた樹生。


「信じられない話でしょ?でも、本当。

樹生の周りに、よく悪霊がついていてさ。

なんとなく、悪霊を払ってあげようと思って追い払っているうちに、樹生とはしゃべるようになっていたんだよね?

どうしても、悪霊払いのために近づかなくてはいけなかったからね。

私が、樹生に近づきすぎたせいだね?樹生が勘違いしたんだよ?

樹生は、本当は私を好きになってないと思うの。

・・・そんなことが、毎日あるものだから、家族にも影響が出ちゃってね?

離れて暮らすことを選択したんだよ。」


そういって、話を終えた灯。

寂しそうな、驚いたような表情をする樹生。

しばらく、空をじっと見ていたが、口を開く。


「俺が勘違い?

勘違いだけで、8年の歳月も灯の事だけを思って暮らせないよ?

灯・・・現実を見てほしい。今だって、俺は灯が好きなんだ。

付き合ってほしいと交際を申し込みたいけど・・・。

灯だもんな?そう簡単にはいかないよな?

まずは、たまに俺と話す時間を作ってほしい。そこから、始めよう?」


すると、彩加の声が聞こえる。


『灯・・・。恋に臆病なの?

樹生がそういってくれるんだし、素直に話を聞いてみればいいのに。

灯は、恋って分からなさすぎ。』


『ほんとに分からないんだもの。

頷いてもいいものなの?』


『まずは、時間を作って樹生という人物を知ってからじゃない?

逃げてばかりじゃいられないよ?

樹生を知ってから、いろいろ考えればいいじゃない?』


『そう。分かったわ。』


彩加との心の会話を終えると、樹生に顔を向ける。


「樹生・・・。

樹生の事を好きになるか分からない。

保証はないけど、それでもいいなら。

樹生の事を知ってみることから、始めるよ。」


「ありがとう。・・・・灯。」


そのあと、連絡先を交わしあい別れた二人。




後日、そんなことがあったと事実を告げられた凪。

開いた口がふさがらず、ぽかんとしてしまっている。


「凪?凪!?・・・・凪!!!」


「あっ!ゴメン!灯。

びっくりしちゃってさ。その・・・・樹生っていう子とは、付き合うことになったと?」


「違うよ。まだ、付き合うかわからないんだ。

まずは、お互いを知ることから始めることになった。」


その話を聞いた凪。

やっぱり、前途多難だと蒼人には伝えるべきかどうか悩む凪であった。




登場人物、増えました。

このキャラが、いい仕事をしてくれるといいのですが。


作者も、このキャラがどういう仕事をしてくれるかわかりません。

作者も、前途多難かも!!

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